プレゼントか、なるほど。
成果と果物を出荷し自宅へ帰宅後の朝。
つまり翌日、朝に電話が掛かってきた。
「はい。佐藤です」
「私よ、私」
「詐欺は受けつけていないので――」
「もう、そういう冗談は言わなくていいから」
「――で、母さん。何の要件だ?」
「聞いて驚きなさいよ!」
「宝くじでもあたったのか?」
「そうじゃないわよ! 宝くじなんて、当たる確率とか飛行機が落ちる確率よりも低いじゃないの!」
「じゃ、何の用だよ……。今日も、俺、仕事なんだけど」
「大切なことよ! 45歳にもなった息子のために!」
この親は何を言っているのか……。
そもそも45歳という年齢とか男にとっては数字に過ぎないというのに。
「プレゼントか何かか? 中学を卒業してから一度もプレゼントくれなかったのに」
「そうね。駄目な息子のためにプレゼントと言えばプレゼントかしら?」
「ほー。それで、どんなプレゼントなんだ?」
「それは秘密よ!」
「秘密って何だよ」
「もう来てるから、すぐに実家に戻りなさい!」
「なんで命令口調なんだよ、別にプレゼントなんていつでもいいだろ。さっきも言ったが、俺は今日も仕事なんだよ」
「何時からなの?」
「午後6時過ぎに待ち合わせだな」
「それなら大丈夫ね!」
「大丈夫じゃねーよ! 少しは息子の予定でも確認しろよ」
「でも、貴方、ニートで無職だったじゃない? 仕事が、決まっても時間的には暇でしょう?」
「……分かったよ。すぐ行くから(自転車で――)」
「タクシーで来なさいよ! そのくらいは、出してあげるから」
「あー、分かったよ」
まったく、たかがプレゼントくらいでタクシーを捕まえて実家に向かうとか。
仕方なく電話を切って、タクシーアプリを起動したあと、タクシーの手配をする。
5分ほどでタクシーが到着するようなので、着替えてアパートを出たあと、手配していたタクシーがアパートの前に到着したのでタクシーに乗り込み実家に向かった。
実家に到着したあとは、料金の立て替えのために金を払ってタクシーから降りる。
正門に向かって歩けば見た事がないピンク色の女性が好んで乗るような乗用車が路肩に停車しているのが見えた。
「どこの車だ?」
うちの私有地ではないが、通り抜けのできない私道に車を停める人間は少ない。
停めているのは基本的に私道に面している家に住んでいる連中だ。
何度かチャイムを鳴らすと、母親が出てきた。
いつもはジャージ姿で家でゴロゴロとしているのに、何故かワンピースを着ておめかししていた。
どんな気持ちの変化なのか。
「おかえり。和也、遅かったわね」
「いや、これでも飛ばしてきたんだが?」
「先方は待っていたのよ?」
「先方?」
母親は何の話をしているのか。
玄関に突っ立っていた俺を母親は背中を押してグイグイと家の中に押し込む。
その際に女性が履くパンプスが玄関に置かれていたが、母さんが履くようなことはないので、
「母さん、誰か来ているのか?」
「それは、見てからのお楽しみよ!」
「なんだよ、お楽しみって……」
意味不明な言動ばかりしてくるな。
そう思い実家の居間まで移動したところで二人の女性が居間の畳の上で正座している姿が目に入った。
「あれ? 菊池さん?」
どうして、菊池さんがここにいるのか。
それだけじゃない。
何故に、菊池 涼音さんまでもが俺の家にいるのか。




