氷河期世代の福祉カットします!
日本ダンジョン冒険者協会に肥料を持ち込んでから一週間が経過した。
「まったく連絡がこないな……」
今日の朝は養老渓谷ダンジョン地下16階層の川で獲ってきた鮎の塩焼きと、熊肉カレー。
普通は朝から重いと思われるかも知れないが、ダンジョンに行き川魚をスキル【雷魔法】で気絶させて獲ってくるという肉体労働をしたので、とくに問題なく食べられている。
「やっぱ日本人は魚だよな! 兄貴!」
「お前、自宅インフラ通っただろ? どうして、こっちに来ているんだ?」
浩二が、いつもの如く朝食を食べに来ているので思わずツッコミを入れた。
「ほら、姉貴の料理が美味いから! また、姉貴! 料理の腕を上げたんじゃないのか?」
「ふむ。妾もネットとやらを見て料理の腕は磨いておるからの!」
どうしよう、ミツハが最近はチョロイ感じになっている。
まぁ、それで何か問題が起きるわけではないから別にいいか。
「そういえば兄貴」
「どうした?」
「一週間前からバイオエタノールガソリンが流通するようになったじゃん?」
「ああ。でも、一般人は買えないだろ?」
「みたいなんだけど……、それを悪用して一度入れたバイオエタノールガソリンを抜いてから自家用車に入れて使っているNPO法人のトップとか幹部いるらしくて問題になっているらしいぜ」
「ほー。それって、社会福祉関係とか?」
「そうそう。あとは女性の味方とか口にしているうさん臭い連中とか」
「まったく、いつの時代になってもルールの穴をついて儲けようとする連中は出てくるよな」
浩二と会話をしながら、俺はテレビのリモコンをとりテレビをつける。
以前までは、テレビなんてなくても問題なかった。
ネットで見れる情報だけで十分であったが、最近は毎日のように日本国内と世界情勢が変わるので、情報を仕入れる為になるべくテレビをつける時間が増えた。
そしてテレビをつけるとニュースチャンネルに合わせる。
――緊急ニュースです! 日本政府は、今月をもって、氷河期世代に支給していた生活保護を全て打ち切ることを閣議決定したそうです!
関係各所、関係者から非常に強いバッシングがあるようですが、日本政府は障害者を含む氷河期世代には平等に対応するという事で、一人で行動ができない障害者を除き全ての氷河期世代の生活保護を打ち切るそうです。
「兄貴……、これって……」
「ああ……」
どうやら、さらに氷河期世代は大変な事態に追い込まれたらしい。
――日本国政府、高原臨時総理大臣の会見です。
「日本国は、現在、世界的に見てかなり難しい立場に立たされており、輸出が先細りすることは今までの状況から見ても明らかです。そのため、税収が減ることも予想されておりますが、幸いな事に氷河期世代は神々から祝福を受けている状態であります。よって、氷河期世代の全ての方々が現在まで受けていた生活保護は打ち切らせていただきます。氷河期世代の方は、各都道府県に点在しているダンジョンで自活できるだけのお金を稼いでください。今の日本は財政的に苦しいということを何卒理解してもらいたい。それと外国人への生活保護、外国人留学生への税金投入も今月を持って廃止致します。自活できない外国人の方には大変に心苦しいですが、国外退去という事になりますので最寄りの役所までご相談ください」
――以上、高原臨時総理大臣の発言でした。
――野党は、今回の強行採決について非常に遺憾だと、外国人の面倒を見る義務は日本にあると差別は良くないとプラカードを掲げて抗議をしていました。
「何だか、凄い事になってきたな。兄貴」
「まぁ……だな……」
だけど日本政府が言いたいことは分からなくもない。
障害者手帳を有している人への現金給付や生活保護なんてものは、そもそもな話で言うと国力に余裕があるから出来る行動なわけで、余裕が無くなれば真っ先に切られる福祉だ。
そもそも福祉ってのは、国力があるからこそ出来る産業なわけで、ガソリンが尽きかけている欧州、アフリカ、中東、中央アジアでは、すでに国境線沿いで紛争が起きていて、福祉というのは既に機能していない。
「順当と言えば順当なのかもな……」
とくに氷河期世代にはダンジョンがあるし。
だからこそ、日本政府は少しでも支出を減らそうとして氷河期世代に対する福祉を切ったのだろう。
まぁ、氷河期世代の日本人なら誰でもダンジョンに行けば地下10階層までをウロウロして採取しているだけで月収60万円は固いからな。
そのへんを見越して日本政府は決断したというところか。
だけどな~。
相も変わらず氷河期世代を切り捨てるという判断は早いよな。




