レギュラーガソリンが1リットル300円を超えたらしい。
「えっと涼音さんは、それを教えてくれるためにここまで?」
「それもありますけど……、システムキッチンの話をしていたじゃないですか!」
そういえば、そんな約束をしていた気が……。
ただ打ち合わせは、まだ当分後だったよな?
「そういえば、そんな話をしていたな」
「はい。それで、そちらの方は――」
「旦那様の妻です!」
俺の腕に抱き着いていたミツハをジーッと見ながら、涼音さんが関係性を問いただしてくるとミツハが元気よく答える。
「――え? ええ!? ……つ、妻……です……か? 本当ですか? 佐藤さん!?」
「あー」
ミツハの方をチラッと見ると、とっても良い瞳で俺を期待するような眼差しで見てくる。
しかも、ギュッと俺の腕を掴んでくる。
「ほ、本当だ……」
ここで違うとか言うようなモノなら、どうなるか分からない。
「――ッ。そ、そうですか……。随分と……、 ――その……派手な色な髪色な……」
「妾は、水の女神ですから」
「――え? 水の女神って……」
「罔象女神が正式な神名になる、人間の娘よ」
「神様……、しかも……女神様? 佐藤さん!? 冒険者って神様を妻にするものなのですか?」
「それは、どうだろうか?」
「そ、そうですか……。今日は……、……わ、わわ……、わ、私は帰ります……」
何故か知らないが、涼音さんは元気なくさっさと帰ってしまった。
「ふふっ。旦那様! 私の勝ちですね」
何の勝負をしているんだが……。
それにしても、わざわざ忠告をしに来てくれるとは涼音さんは真面目だな。
最後に、何故かすごく動揺していたようだが……、気のせいか?
「旦那様、さっきの女の事を考えていますか?」
ふと気がつけば上目遣いにミツハが俺に視線を向けてきている。
「そ、そんなことないぞ? 真面目な人だなと思っただけで」
「それはどういう意味でしょうか?」
「多古市から、ここまで俺のSNSを見ただけで忠告に態々来てくれたのだからって意味だ」
「そういうことですか……。旦那様は罪作りな方ですね」
「どういうこと?」
「旦那様が気にすることではありません」
何だか、とても疎外感のある言い回しをされた気がする。
まぁ、肥料に関しては気を付けた方がいいな。
態々、多古市から来て忠告してくれたのだから。
――夕飯時。
「――と、言う事があった」
俺は、菊池娘が訪ねてきたことを弟の浩二に説明したところ、「はぁー、兄貴。それ、絶対に修羅場一歩手前だったぞ」と、ツッコミを入れてきた。
「そうか? 何か、具合が悪そうであったが……」
「まぁ、いいや。それよりも、兄貴のアイテムボックスの仕様である変換を使った肥料に関しては、しばらくは分析・評価待ちってことは、これからどうする?」
「ダンジョン攻略の方か?」
「ああ」
「幸い、今の俺のアイテムボックスは3200トンまで入れられるようになっているから、容量的には問題はないから攻略を進めたいと思っているな」
「なら、さっさとダンジョンに石油があるのか攻略を進めた方がいいよな。さっきガソリンスタンド前を通ったんだけどさ、レギュラーが1リットルで300円を超えてたからさ」
「そいつは、急速に価格が上がっているな」
「そりゃ石油燃料が枯渇している国が出始めているし。発展途上国とか、暴動一歩手前みたいだぜ? 兄貴」
「それは、どこの情報だ?」
「ニュースで流れてた」
「そうか……。そういえばヨーロッパもヤバいよな」
「実際なところ、ヨーロッパって他国が化石燃料で作り出した電気を購入してクリーンとか謳っているからな。実際は日本よりも遥かに化石燃料に依存している事を隠しているからな。EV推進とか言ったところで、その電気は化石燃料に依存しているわけだし」
「だよな……」




