土属性の魔鉱石の特性
魔鉱石エンジンのニュースが流れてから3日後。
居間でニュースが流れる。
それは、まとめサイトをパクった内容であった。
開発が日本企業の一社で行われたこともあり、日本政府としては魔鉱石エンジンの情報公開については行わないことを決断したとニュースが流れた。
全世界的に化石燃料枯渇からの食糧生産性の低下を始めとした多くの化石燃料に頼っていた産業が壊滅するので日本政府が公開するのは人類的に見れば正しくはあるが、それを行わないのは、日本の国益を損なうと日本政府は判断したのだろう。
国益を損なう行動をとれば神罰によりクビが物理的に飛ぶからな。
必死になるのも当たり前だろう。
つまり、我が身可愛さに他国を切り捨てたのが現政府といったところか。
少し考えれば分かるが、次世代の担う完全クリーンな魔鉱石を用いたエンジンや発電方式のシェアを独占出来ればエネルギー産業という先進的な分野で莫大な利益を得る事が出来る。
逆によく海外からの恫喝に日本政府は屈しなかったのかと思われるところであったが、樺太という使い道のない日本領土をアメリカとEUに貸したと発表があったことから、先進国は魔鉱石を樺太から仕入れるというのは、少し考えれば分かることだ。
ロシア、中国、韓国が口に出さないのは、ロシア東部がモンスターに占領されたことを、ロシア政府が発表したからだろう。
ロシア東部と言っても広さがあり、主にウルフ、マンモス、タイガー、グリズリー関係が群れを成して繁殖を繰り返している事から、魔鉱石の供給には問題ないらしい。
そして北朝鮮はいつの間にかモンスターの襲来により滅んでいた。
「それにしても、俺、公務員じゃなくてマジで良かった……」
弟が、まとめサイトをパクッてニュースを流しているテレビを見て溜息をつく。
「ん? どうした?」
冷蔵庫から、梅酒を取り出し居間に戻るとコーラを飲んでいるミツハとテレビを見ている弟の浩二がいた。
「これ見てくれよ。兄貴」
「氷河期世代の国家公務員を総動員して、太平洋ゴミベルトの掃除か……。奇特なことだな。まぁ、狙いはプラスチックゴミの回収と言ったところか?」
「再生するためのエネルギーだけは魔鉱石であるからなー」
弟の浩二がビールを飲みながら、イカの足を食べつつ呟く。
「まぁ、地下21階層以下を潜っている冒険者から火の魔鉱石なら供給されるか。問題は、エネルギーがあっても石油資源がないと言ったところか」
「兄貴、今回のことで石油関係のゴミはお宝になりそうだよな」
「貧乏な国は諸手を上げているんじゃないのか? 問題は、石油由来のゴミがあっても魔鉱石技術がないと宝の持ち腐れと――」
「だから氷河期世代の公務員を総動員して、日本の領海までゴミを持ってきてもらって買い取っているみたい」
日本政府が氷河期世代の公務員を総動員してアイテムボックス所持者にしたあと、領海ギリギリで石油資源由来のゴミ取引をしているということを海外のサイトがリークしていた。
「これは、また文句言われそうだな」
「まぁ、エコになるからいいのでは?」
「しかし、石油資源がマジで枯渇しているというのはやばいよな……」
魔鉱石を利用したエンジンと大規模発電施設は、日本政府が主導で同盟国アメリカに優先的に回すらしいが、それはエネルギーに限ったことで資源までは解決されない。
アスファルト・LPガス・灯油・ジェットエンジン・ビニール・アスファルト舗装を含めて、どうなるのか。
今、テレビで流れているニュースだけではどう判断していいのか分からない。
「ふむ……。どうやら日本政府は、隠している事が多いようね」
俺の隣に寄り添って、抱き着いてきたミツハが面白おかしくテレビを見ながら呟く。
「隠していること?」
「うむ。魔鉱石には属性があるわよね?」
「あるな……」
「和也が手に入れることが出来る土属性の魔鉱石は、魔力を加えると変質するの」
「変質?」
「そう。ある一定の確率で錫、銅、鉄といったようにね」
「それって、石油にも適用されるってことか?」
「そうね。鉱物関係に変換することが出来るのが土属性の魔鉱石の特徴。でも、日本政府が、それを開示していない理由が謎ね」
「それって土属性の魔鉱石が一番高く売れるのでは……」
「うーん。どうなのかしら? 和也は、今、魔鉱石を持っている?」
「あるが……」
俺はアイテムボックスから土属性の魔鉱石を取り出す。
「土属性の魔鉱石をタッパーの中に入れて……と。和也、魔法を使う応用で魔力を魔鉱石に当ててみて」
「お、おう」
指先を魔鉱石に当てながら魔力を指先から流すイメージを脳裏に描きながら魔力を体外に排出する。
すると魔鉱石の色が代わり、灰色になった。
「はい。普通の石になりました」
「おい……」
「こんな感じで、魔鉱石に魔力を流すと様々な鉱物に変化させることが出来るの」
「つまりルーレットみたいなものか……」
「そうね。レアなモノだと、神格金属とか魔法金属とかアダマンタイトとか賢者の石とかになるわね」
「賢者の石とか、ホムンクルスと戦うやつが浮かんだわ」
弟の浩二がニュースを見ながら呟いてきた。
「ところで浩二」
「何だ? 兄貴」
「どうして浩二は、俺の家に来てるんだ?」
「いやー、俺も冒険者として稼いで、養老渓谷に引っ越そうと思ってるんだよな」




