国会議員が9割死亡したらしい
――降魔真理教と、神々がゴタゴタを起こした翌日の朝の日本国首相官邸。
「高原復興大臣と、川木官房長官、岩崎法務大臣だけですか」
そう会議室で口にしたのは、川木官房長官であった。
川木は50代と政治家の中では若手の議員であり、本来なら閣僚として任命される者ではなかったが、二世ではないこともあり国民から人気があったため、人気とりのために閣僚に抜擢されたのであった。
高原復興大臣も、女性議員と言う事もあったが、国民には非常に人気であった。
対中国政策や、スパイ防止法に対して分かりやすく国民に説明することも、その秘訣であった。
岩崎法務大臣は、代々、死刑実行書類に関して死刑許可を出さなかった無責任な政治家とは違い数か月以内に死刑を実行するようにと書類にサインをしたことで、遺族や国民からの人気は高かったが、弁護士会や帰化人などからは非常に人気が低かった。
何度か命を狙われることもあったのだった。
そんな3人が、首相官邸に集まっていた。
高原復興大臣は、「それで、降魔真理教が神々に喧嘩を売った結果、7親等内の繋がりがある人達が全員、首が落ちたということですか」と、口にする。
「そのようだ」
と、川木官房長官は溜息をつく。
「それで政治家の9割が死んだと……」
高原は肩を落としながら口にする。
「どうやら、降魔真理教は、神殺しを喧伝していたようで大々的にパーティ主催を行っていたようです。表には、日本ダンジョン冒険者協会で水の女神を貶めた連中の3親等内という事となっていますが、パーティに参加した7親等以内に変更されたようです」
「馬鹿どもが……。パーティになんて参加するから」
官僚の一人が、現状を説明する。
その官僚も、事務次官ではなく参事官ではなく室長が序列的に繰り上がった結果であった。
「その被害範囲は、どれほどなのだ?」
川木官房長官は額に手を当てたまま報告書を手にした事務次官に繰り上がったばかりの男に話かける。
「内閣と衆議院、参議院の被害ですが衆議院、参議院合わせて750人の内、633人が死亡。残った議員の数は117人です。全てが降魔真理教と繋がりのあるパーティに参加していない新興の議員です」
「なるほど……」
川木官房長官は、事務次官に話を進めるようにと目で促す。
「各省庁は、事務次官、参事官は全員が死亡。全ての省庁で繰り上げが行われています。それと一般職員からも3281人の死亡が確認できました。警察官僚にいたっては298人、天下りしていた8222人が死亡しました。全員が降魔真理教と繋がりのある三点方式交換ギャンブルに関わりのある賭博場と繋がりがあることが確認できました。それらのギャンブル企業に天下りしていた為、対象扱いになったようです」
「はぁー、警察組織が一番被害を出すとは酷いものだな……。まぁ、我々与党も私と岩崎と高原以外は、全員死亡したのだから人のことは言えんが……」
「あとは民間企業や、その親族を含めると日本国民には発表できませんが死亡数は3万人弱です」
「高原、俺の聞き間違いでなければ日本の神々は日本人の数が減ると困るのではなかったのか?」
川木官房長官の問いかけに、高原復興大臣は、「保護する対象であったとしても、人を過剰なまでに保護するつもりはないという事ではないでしょうか?」と答える。
「どういうことだ?」
「簡単に言うのなら、神々は政府などの役職で殺す順序を決めているわけではないということでは?」
「それは相当、大変なことだな。総理大臣ですら、無職と同じ見られ方をしているという事だろう?」
「そうなるわね」
「困ったな。政治家になる連中がいなくなるぞ?」
「そんなことはないんじゃないの? 命をかけてでも日本の経済を何とかしようとする気概のある人なら」
「うむ……だが、早急に政治家を増やす必要があるな」
「政治家に立候補にするためには、数百万円は選挙委員会に預ける必要があるわよ? そんなお金――」
「ならイギリスを見習って10万円で出馬できるようにしたらどうだ?」
「それなら人が集まるかも知れないわね」
「では、すぐに総選挙をするとしよう」
「そうね。それにしても神々の天罰で9割近い国会議員が死亡したと知られたら余所の国から馬鹿にされるわね」
「元々、日本の政治家の評価は最低なのだから、これ以上、馬鹿にされることはないだろう」
「それは、それで問題なのよ……」
それから一か月後という異例の速さで内閣総辞職からの解散総選挙が行われる事がメディアを通して大々的に報道された。
あまりにも多くの政治家の死亡があった為に、出馬数を増やす意図からもイギリスを参考に両親が日本人であり日本国籍を有している日本国に住んでいる日本人のみ選挙管理委員会の供託金10万円で出馬できるというニュースが流れた。




