84:聖戦のエピローグ
――その戦いに、誰もが心を揺さぶられた。
“人は、あそこまで強くなれるものなのか……!”
幾度もぶつかる蒼炎と獄炎。王都の夜空に激突音が響くたび、日の光すら上回るほどの爆熱光が夜空を焦がす。
キマイラの群れを撃退し終えた人々は、ただ茫然とその決戦に魅入られていた。
一般市民も冒険者も貴族も平民も男も女も老いも若いも関係なく、固唾を飲んで空を見上げる。
『グハハハハッ! 死に果てるがいい聖女ソフィアよッ! ――七罪滅浄・地獄の炎に焼き尽くされろ、「ジェノサイド・セブンスレーザー」ッッッ!!!』
いかなる手段を以ってか――人を辞め、おぞましき獄炎鳥と化したニーベルング・フォン・セイファート。
突如として人々を絶望と混乱の底に陥れた男は、七つの巨大魔法陣を展開して地獄の熱閃を解き放った。
その光景に民衆たちは悲鳴を上げる。
果たして摂氏何万度か、王都を七回滅ぼしてなお余りあるほどの殲滅術式だ。
しかもそんなモノから大量の火の粉が降り注いできたのだから、人々はたちまち死を意識する。
だがしかし、
「やらせはしないわ、魔王ニーベルングッ! ――光芒一閃・天の輝きに消え果てなさい、『ハイパークリア・バーストストリーム』ッッッ!!!」
七つの熱閃をその火の粉ごと焼き払うほどの超絶熱閃が炸裂した!
いかなる技術を以ってか――人でありながら、人を超えた領域に辿り着いたソフィア・グレイシア。
民衆の危機に呼応して燦然と現れた救世主は、魔王に決して屈しない。
むしろ人外の敵を上回るほどの力を発揮し、彼女の放った閃光はニーベルングの巨大鳥と化した下半身を消し飛ばした。
だが、だがしかし、
『まだだーーーーーーッ! まだまだ俺は滅びはしないッ!
さぁセイファート国民よ、恐怖しろッ! ちっぽけな敵などどうでもいいと思えてしまうほどの、俺という魔王の姿を胸に刻めッ! お前たちの全てを焼き滅ぼしてくれるわーーーーーッ!』
それほどまでに人類を滅ぼしたいのか――まるで見せつけるようにニーベルングは狂い叫び、執念を燃やして復活する。
千切れ飛んだ下腹部から鱗に塗れた下半身を生やし、さらに背中からは十二枚の炎翼を生やしてソフィアへと突撃した。
そして再開される死闘の乱舞。
空を翔け、屋根を跳ね、巨大な時計塔を天に向かって疾走しながら、二人の戦いは白熱していく。
そんな光景を前に、貧民も病人も関係なく誰もが思った。
“ああ……オレたちが考えていた限界とは何だったのか……!”
邪悪の炎と聖なる炎の輝きが、民衆の固定概念を打ち砕いていく。
魔王が振りまく力に恐怖で凍り付きそうになるたび、それを焼き払う聖女の力に希望で胸が熱くなる。
ニーベルングの暴れる姿に“人はここまで恐ろしくなれるのか”と竦むたび、ソフィアが必死で戦う姿に“人はこれほど強くなれるのか”と勇気を与えられていく。
「オレたちもなりたい……あそこまで強く……ッ!」
繰り返される悪と正義のぶつかり合いに、高まっていく人々の心。
かくしてセイファート王国の民衆たちは、その決戦を魂にまでも刻んでいくのだった。
・次回、クライマックスです
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