67:子供ができたよ、ソフィアちゃん!
貧民押しかけ事件&ダンジョン発生事件から数日後。『シリウス』の街は落ち着きを取り戻していた。
新たに移住してきた貧民の人たちの扱いについては、亜人種たちがやり方を確立した『霊草の栽培』『野獣の調教』『爆薬作り』のどれかに割り振ることにしていた。
元々、亜人種のように特殊な感覚を持たない一般的なヒト族でも実践できるように仕事のやり方を組み立てるのが目的だったからね。
ジークフリート陛下に報告する際も、『実際にヒトにやらせてみたらこうなりました』ってデータを付けておけば、報酬に色が付くことは間違いなしだろう。
ここしばらくの間やりとりしてよくわかったけど、あの王様、人間的にはアレだけど仕事ができたらできた分だけちゃんと評価してくれるからね。そこだけは上司として認めてあげている。
それと『謎のフードの男』に踊らされ、大金が送られてくるタイミングに合わせて貧民たちが押しかけてきた件も報告しておいた。
これはやはり王城内の人物が企てたことと見て早急に調査してくれるとのことだ。
何でも第一王子・ニーベルング様が滅茶苦茶やる気になっているらしい。王様曰く、私が突然溢れ出したタイタンどもから貧民たちを守ってあげた後まとめて雇用してあげた報告を聞くと、
『ッッッ――素晴らしいッ! ソフィアさん、キミにはそんな連中を守る義理などまったくなかったはずだ! さらには、嘘に踊らされて金をせびりに来た負け犬たちに居場所まで与えてやるだと!?
あぁなんという慈悲深さ……キミはまさしく新たな時代の聖女だ! そんなキミに迷惑をかけるなど、謎のフード男め許さんぞッ!』
などと叫び、王子自ら調査に乗り出したらしい。
ようやく私のところに来れそうだったウェイバーさんとヴィンセントくんを捕まえて、そこらじゅうの貧民街を練り歩いているんだとか。
うーーーーん……正直言って第一王子様からの過大評価が心苦しい。
だって私が貧民の人たちを守ってあげたのは半分打算交じりからの行動だし、それに彼らを雇ってあげた理由は、と~~~っても恐い『この子』に頼まれたからだからねぇ~……。
「――うむ、内臓機能も正常なようだ。ソフィア殿は理想的な健康体だな」
などと呟きながら、上着を脱いだ私の身体をペタペタと触診していく白髪の少年。
そう……私は今、シリウスの街にあった無人診療所にて『ハオ・シンラン』から健康診断を受けていた……ッ!
ってひえええええええええっ!? よく考えたら私、なんで一度殺されかけたテロリストからこんなことされてるわけッ!? いやよく考えなくてもやばい状況なんですけど!
はぁぁ……こうなったのもアホなジークフリート王のせいだ。
明らかにハオ・シンランの面影が残る少年を記憶喪失状態で保護しましたと報告すると、
『はっはっは、それは面白い! 首が折れても再生するよう自分を改造していたと聞いていたが、まさか粉々にされても蘇るほどの不死性を持っていたとは。その医療の才能、もはや神の領域だな。
……よし決めた。ソフィアくん、少し彼を育ててみたまえ。もしも記憶が戻ることなく真っ当な人間に成長したなら、きっと国にとって素晴らしき人材となるはずだ!』
――というクッソふざけた返事が返ってきやがった!!!
んもーーーーーーーふざけんなアホーーーーッ! 何が面白いよバカッ! やっぱりあの人大嫌い!!!
……はい、そんなわけでハオ・シンランことシンくんはテロリストから街のお医者さんに転職することなりました。
はぁ……まぁ確かに罪の記憶もない状態でもう一度殺すのはちょっと罪悪感があったかもだけどね。それに今の彼、十代も前半の容姿をしているし……流石にこんな子供に剣を向けるのは気が引ける。
それに王様の言う通り、この国に対する恨みの記憶を取り戻すことなく成長したら、きっとものすごいお医者さんになるはずだしね。いったん様子見してみますか。
恐怖心を隠し、私は彼に柔らかく微笑みかける。
「ありがとうね、シンくん。でも働いてばかりじゃなくて、たまにはお外で遊んできてもいいのよ?」
「ふっ、気遣いなど無用だぞソフィア殿。……アナタは見ず知らずの小僧である我の願いをこころよく受け入れ、貧民全員に居場所を与えてくれた。その感謝、せめて精いっぱい働くことで返させてくれ」
「シンくん……!」
う、うっわ~~~~~~~この子めっちゃいい子だーーー!
これがあの歪んだ感情ぶつけまくってきたハオ・シンランに進化するなんて信じられないよ!
あ、わかった! やっぱり私の勘違いだったんだ! この子は復活したハオ・シンランなんかじゃなくて、ちょっと顔立ちが似てるだけのまったく関係ない子なんだよ! 間違いないっ!
なーんだ他人かー! 私、怖がっちゃって損しちゃった~!
「さてソフィア殿、次はスリーサイズや身長などを測っていこうか。
我の見立てでは、スリーサイズは上から97の……む、前より成長率が凄まじいな……って、ムムッ? 『前』とは一体なんのことだ……ふむ、気のせいか」
――ってファッ!?
とんでもないことを呟いたあとテキパキと測定を始めるシンくん。
……ってこの子、やっぱりあのハオ・シンランなわけ!? そ、そんなーーーーーっ!
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