60:白いアレだよ、ソフィアちゃん!
獣人族の様子を確認し終えた私は、不安な気分で街の一角を目指していた。
そう、次は問題児(※30歳)であるドルチェさんの率いるドワーフ族の様子を見に行く番だ。
抑圧せずに自由にやらせると公言した私だけど、目を離すとどんなことをしでかすか分からないからね~。
彼からは「鍛冶場は職人の戦場っ、気軽にくるでない! 領主殿はパトロンらしく結果だけ見に来ればいいのじゃ!」なーんて言ってたけど、果たしてどうなっていることやら。
あれから一週間も経ったことだし、経過確認をするために鍛冶場を訪れる。
「ドルチェさーん、調子のほうどう? 何か良いモノできたー?」
そうしてひょいっとドアから顔を覗かせると、
「うわああああ逃げるのじゃぁぁあああああッ! 爆発するーーーー!」
「えっ、えええええええッ!?」
わたわたと駆けてくる褐色三歳児ボディ(※30歳)のドルチェさんを抱き留めた瞬間、大爆発が巻き起こったッ!
咄嗟に水魔法を足元から噴出して距離をとるも、爆発の衝撃は完全には押し殺せない。
私はドルチェさんを抱いたまま、ごろごろと地面を転がることになったのだった……!
どっ、どうしてこうなったーーーーーーー!?
◆ ◇ ◆
「――いやーすまなかったのぉ領主殿! 新種の火薬を作っておったら失敗してしまったわ!」
まいったのぉ~とボリボリと頭を掻くクソショタ野郎。
あれから気絶した私とドルチェさんは、騒ぎを聞きつけてやってきたドワーフのみんなに運ばれて簡易診療所に運ばれていた。
医者がいないのでろくな治療は出来ないけど、包帯や治療薬くらいは揃っているようだ。何かあった時のために欲しいね~医療技術者。
まぁ私が知ってる身体をいじくれる人なんて、前世を合わせても『復讐の王子』ハオ・シンランのヤツしか……ってそんなことはどうでもいいわッ!
「ドルチェさんっ、なんて危険なものを作るの!? おかげで死にかけたわよ!」
「いやいやっ、本当にすまんかったって! なはは……実はのぉ……」
――ドルチェさんいわく、ドワーフ族は身体が小さいため、鉱山などで鉄を採るのに苦労してきたんだとか。
そこで目を付けたのが、ヒト族が最近作り出した『火薬』らしい。
魔法使いでなくても戦力となるよう国王ジークフリートが直々に開発を主導した謎の粉だ。
詳しいことは知らないけど、これを鉄の筒に弾丸と一緒に詰めて爆破することで、弾が高速で飛び出す『銃』という武器になるらしい。まだそこまで量産は進んでないみたいだけどね。
ドルチェさんは目を輝かせながら「あれはすごいっ」と熱く語る。
「以前ワシらをコキ使ってくれていた領主の下で知ったが、あれはまさに時代を変える発明品じゃよ。
国王ジークフリートはまさに戦争の天才じゃ。火薬を開発したことで、魔法を使えない者たちにも一撃必殺の手段を与えおった」
「まぁね。そのうち剣なんて廃れちゃったりしてね」
……なんて冗談めかして言ってみるが、これは事実だ。
ニ十歳まで生きた前世の記憶で知っている。量産が進んで正規兵全員に銃が配備されるようになると、剣や槍は徐々に割を食っていった。
まぁ壁に当たると跳弾する危険もあるから、ダンジョン内を主な戦場とする冒険者の間では流行らなかったけどね。あと単純にめちゃくちゃ高価だし。
久しぶりに前世のことを思い出していると、ドルチェさんはピンと指を立てて私に訴える。
「あれはたしかに素晴らしい……がッ、ワシに言わせればまだまだ調合具合が甘いわ!
もっと盛大に爆発するようにすれば、銃なんてチマチマ撃たんでも敵に投げ込んで皆殺しにしたり、鉱山を開拓するのに便利になるじゃろうがッ!
そこで開発したのが……これじゃーッ!」
そう言ってドルチェさんは服の下から小瓶を取り出した。え、なにそれ?
ちょっと手を出せというので言う通りにすると、小瓶を開けて謎の液体を手のひらに垂らしてきた。
うわぁなにこれ……なんか白っぽくてドロドロしてるんですけど……!?
私は表情を引きつらせながら、見た目は子供だけど中身は大人な褐色三歳児に問いただす。
「ねぇドルチェさん……これってもしかして、その、『アレ』とかじゃないよね……? 正体によっては、私本気で怒るからね……!?」
そう言うと、ドルチェさんはキョトンと可愛く首をかしげ、
「アレって何のことじゃ? それはただの爆薬じゃが」
「って、ある意味もっと危険なモノじゃない!?」
人の手の上になんてもんを垂らしてるのよーーーーーッ!
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