58:私のために争わないで、サイフくんと借金彼氏!!!
エルフ族、獣人族、ドワーフ族のみんなに仕事を任せてから数日。作業のほうは順調と言えた。
今日も『シリウス』の領主として各亜人種たちの仕事ぶりを見回ることにする。
まずは農園で霊草類を育てているシルフィードさんたちのところだね~っと。
「おや、これはソフィア殿。今日もサボっていないかチェックですかな?」
「って普通に見に来ただけだよ、シルフィードさんっ! それで霊草のほうはどう? 昨日から何か変化あった?」
「ふふふ、見てください。ほら」
彼が示したほうを見ると、そこにはちっちゃな芽が何百と並んでいた……!
って、全部の発芽に成功したの!? 王国からの報告だと、ダンジョン以外の場所では芽を出させることすら難しいってあったのに!
「すごい……すごいよシルフィードさんっ! 一体どうしたの!?」
「いやなに、わたくしはただ植物たちの声に耳を傾けただけですよ。
赤子を育てるようなものです。適切なタイミングで肥料を与えてやれば、これこの通りというわけで」
別に大したことはしてませんよ~って感じを出しながらも、口元がちょっぴり自慢げに跳ね上がっているシルフィードさん。相変わらず表情に出やすい人だ。
そんな彼にはもちろんのこと、私は農園で働いてくれているエルフの子たちみんなに頭を下げた。
「ありがとうね、みんな。もしも回復薬の原材料になる霊草が大量栽培できるようになったら、国の医療は大きく進歩するわ。
セイファート王国に苦しめられたみんなにとって、この国のために働くのはきっと複雑だろうけど……それでも頑張ってくれているアナタたちに、心からの感謝を」
「ちょっ、頭を上げてくださいってソフィアさんっ!? ボクら、結構楽しくやってますから!?」
わたわたと慌てるエルフの子供たち。本当にみんないい子ばかりだ。
でも全っ然気にしなくていいからね!!! だってみんなが霊草を大量栽培してくれたら、それと栽培法を国に売っぱらってめちゃくちゃ大金が入るだろうから!!!
もう稼ぎ頭であるエルフさんたちには、喜んで頭を下げまくっちゃうよッ! ありがとうございますみなさま、お財布ホックホクになりそうで嬉しいでーーーす!
そんなプライドもクソもない私に、シルフィードさんがフッと微笑む。
「やれやれ。農民に……しかも亜人種に頭を下げるだなんてどうかしてますよ、アナタは。
――顔を上げてください、ソフィア殿。アナタはわたくしたちの領主なのですから、もっと堂々としていないと駄目じゃないですか」
「シルフィードさん……うん、ありがとうね」
優しげな声色でシルフィードさんは私の肩に手を置いてくれた。
彼らと過ごすようになってから約一週間。とにかく下手に出まくってきたおかげで、警戒心もだいぶ解けてきたようだ。暗殺される心配はもうなさそうかな? 特にシルフィードさんとは仲良しだし。
ただ問題が一つあって……、
「――うぉおおおおおおおッ! 嫌な予感がしたからすっ飛んで来たらやっぱりこれだッ! おいシルフィード、俺のソフィアから手を放しやがれッ!」
「おやおや、これはウォルフ王子! 獣人族としての仕事をほったらかしてまでわたくしのところに来るなんて、異文化交流に熱心ですね~~~~!?」
「んだとぉおおッ!?」
ガルルルルっと唸りながら農園にやってきたウォルフくんと、嫌味全開で細目の奥の瞳をギラつかせるシルフィードさん。
私とシルフィードさんが仲良くなるたびに、ウォルフくんは彼と(ダメな意味で)見つめ合うことが多くなっていったのだった。
もうっ、二人とも仲良くしなさーーーいっ!
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