14:新天地へ!
「――あっ、ソフィア嬢だ!」
「ソフィアさん握手してくださいっ!」
あははは……ど、どうもどうも~……!
声をかけてくる人たちにいつもの作り笑いで対応し、さっと人通りの少ない路地裏に入る。
……ヴィンセント王子との決闘から一週間。私の街での生活はガラっと変わっていた。
どこに行っても、とにかく誰かが話しかけてくるのだ!
街を歩けばさっきみたいな感じだし、ダンジョンでだって冒険者さんたちが『感動したぜぇ! アンタこそ冒険者の鑑だッ!』みたいなことを言ってくるし、この前なんて酒場に入ろうとしたら、吟遊詩人さんが私のことを歌ってる始末!
えーと、どんな歌の内容だったっけ……たしか『ソフィアは激怒した! 仲間の尊厳を踏みにじった悪しき王子を倒すべく、二本の剣を取り立ち上がる! まるで舞うように王子の剣戟をさばき、見事に勝利を掴んだのだ!』……とかそんなんだった気がする。
って違うから!? ヴィンセント王子に喧嘩を売っちゃったのは偶然だから! あと戦いのほうもわりとギリギリで、一撃でもさばき損なってたら普通に死んでたからッ!
「はぁ……どうしてこうなった……」
路地裏の壁に背中を預け、私は思わず溜め息を吐いてしまった。
注目されることは本当に慣れない。前世が根暗女の私に、この状況は精神的にキツすぎる……!
正直、ほとぼりが冷めるまで宿に篭ってじっとしてたいところなんだけど……そういうわけにもいかないんだよなぁ。
「うぅ、王族に喧嘩を売っちゃうのは流石にまずかったよねー……」
あの決闘により、私はさらに頑張ってお金を稼がないといけないことになっていた。
なにせ王子様をボコっちゃったのだ。こうなると貴族の最終手段である、『困ったときの王家に相談』が使えなくなった可能性が非常に高い。
流行り病で領地が大変なことになったり、大災害で作物が全滅しちゃったりしたときに使う手だ。
まぁ支援を貰えるかわりに『領主には土地を守る力がない』って思われちゃうから、あくまでも最終手段なんだけど……グレイシア領がどうしようもない状況になった時には遠慮なく使おうと、お父様と相談して決めていた。
……だけどなぁ、私、王子様を中途半端に半殺しにしちゃったからなぁ……いざという時に助けてもらえなくなっちゃったかも。
流石に鬼畜の国王陛下だって、息子をボコった相手に対しては不快感を覚えるよね? はぁ。
「うーーーーん……どうしようかなぁ。注目されないようにしつつ、ガッポリお金を稼ぐ方法には……あっ」
ウンウンと考え込んだ末に、私は良いことを思いついた!
そうだ、遠征しよう! ここより高位のモンスターが出るダンジョンに行ったり、ダンジョンから溢れ出したモンスターに完全に生態系を乗っ取られた土地の正常化に向かったりすれば、街から離れつつお金が稼げるじゃん!
……前世ではほぼこの街のダンジョンでしか戦ってこなかったから、かなり不安なところもあるけど……こうなったらもうやるしかない!
さっさとお金を稼ぎまくって領地を安定させて、ちょっとだけお金持ちの家に嫁いで平和に生きていくんだ!
そんな決意を胸に、私はウォルフくんに会いに行くのだった。
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