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第3次パワフル転生野球大戦ACE  作者: 青空顎門
第3章 日本プロ野球1部リーグ編

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233 切磋琢磨

 大松君が先発した今日の東京プレスギガンテス対兵庫ブルーヴォルテックスの試合を、いつものメンバーで最後までテレビで観戦してからしばらくして。

 美海ちゃん達はそれぞれ自分達の部屋に戻っていった。

 歓談の後に残ったのは静けさと空になった食器のみだ。

 後者はワゴンにまとめ、内線でルームサービス係に連絡して取りに来て貰う。

 今日やるべきことはこんなところか。

 明日もデーゲームだし、後は風呂に入ってサッサと寝るとしよう。


「しゅー君、お風呂できた」

「ありがとう、あーちゃん」


 試合終盤に彼女が自動湯張り機能をスタートしておいてくれたらしい。

 バスタブには既に湯が張っていた。

 ビジネスホテルとは違って十分に深さがあるので、肩まで浸かることができる。

 ゆったり温まってから上がったら寝間着に着替え、ツインベッドの片方に2人で寝転がりながらスポーツニュースで今日の試合の結果をサラッと確認しておく。

 さり気なく私営ウエストリーグが全敗していた。


「残念リーグ……」

「やめたげなさい」


 あそこは現状大分悲惨なことになってしまっている。

 さすがに可哀想なので話を変えよう。

 丁度、天気予報に切り替わったし。


「って、うわ。明日も暑くなりそうだな」

「今日の夜からずっと暑い。熱帯夜。冷房必須」

「そうだな。でも、冷え過ぎないように気をつけないと」

「ん。特にしゅー君の肩」


 確かにピッチャーは肩を冷やさない方がいいとはよく言われることだ。

 しかし、俺は【怪我しない】から別に問題はない。

 こちらとしてはむしろ、あーちゃんの体の方が大事だ。

 まあ、調子を安定させる類のスキルは病などが原因の不調にも及ぶことが分かっているので、風邪を引いたところで影響はそこまで大きくないだろうけれども。

 だとしても、体調を崩さないに越したことはない。


 とは言え、時節は夏。暑さ真っ盛りの8月だ。

 我慢をして熱中症になってしまっては全く意味がない。

 たとえ部屋の中にいたとしても、そうなる可能性は普通にあるのだから。

 なので、28℃を超えた時点で普通に冷房をつけるようにはしている。

 ただし、冷え対策のために設定は弱め。

 更にあーちゃんに強く勧められるまま肩ウォーマーを身に着けているが……。

 結果、ちょっと暑い。

 なので、それ以外は半袖のTシャツにショートパンツという姿になっている。

 迷走した果てという感じだ。


 ちなみに、あーちゃんもほぼ同じ格好だ。

 二の腕は肩ウォーマーで肌が隠れているが、太もも以下は露出している。

 肩以外薄着なのは、彼女のくっつきたがりも1つの理由かもしれない。

 スキルで体調が安定していて筋肉量も多いからか、互いに平熱が高いからな。

 あーちゃんは今も腕と腕、足と足を絡めてきたりしているが、大分(ぬく)い。

 今日のホテルの空調だと、もうちょっと冷房を強くしてもいいかもしれない。


「しゅー君、そろそろテレビと電気消す?」

「……そうだな」


 といったタイミングでのことだった。

 そのSIGNのメッセージが届いたのは。


 ――ピロンッ!

 ――ピロンッ!


「ん?」

「SIGNのグループチャット?」


 2人同時にスマホを手に取り、アプリを起動させる。

 メッセージの送り主は案の定と言うべきか──。


【磐城巧】

『大松君にアドバイスをしたって聞いたけど、本当なのかい?』


 正に今日の試合において完璧に封じ込められてしまった磐城君だった。

 大松君自身が明かしたのかどうかは分からないが、どこからか伝わったらしい。

 あるいは、そうだろうと予想して鎌でもかけているのか。

 いずれにしても、別に隠すようなことではないけれども。

 なので、肯定のメッセージを打ち込む。


               『ああ、オールスターゲームの後でちょっとな』

【磐城巧】

『そっか』

『もし可能なら、僕にも助言が欲しいな』

『最近、どうにも成長がないような気がしているんだ』


 それを見る限り、どうやら彼もまた閉塞感に苛まれていたようだ。

 現状維持は後退であるという格言もあるし、実際にステータスは上限に達してしまって以降ほとんど変動がないからな。

 進歩がないという意識を持ってしまっても不思議じゃない。


 とは言え、俺達にできることは少ない。

 後は技術、言わばプレイヤースキル的な部分を磨いていくぐらいしかない。

 あるいは、ゲームならぬ現実であるが故に可能となるスキルの応用か。

 後者は仕様の穴とも言える。

 まあ、これについては他の超常的な話と同様に伝えようがないけれども。


「アドバイスして上げるの?」

「勿論、それはするよ。具体的なとこは避けるけど」


 彼もまた打倒アメリカ代表に不可欠な人材。

 俺の完全な操り人形になって貰っては困る。

 なので、大松君と同じようにフワッとした話に留めざるを得ない。


            『大松君にはオリジナル変化球を作ることを提案した』

         『結果があれな訳だけど、磐城君もその方向で行ってみる?』

【磐城巧】

『あれって変化球だったのかい?』

             『広義で言えばフォーシームだって変化球だからな』

                『ましてや螺旋回転で変な軌道のボールだし』

【磐城巧】

『それは、そうだね』

『けど、二番煎じにならないかな』

                『大松君が選んだのはジャイロボールもどき』

            『気になるなら、それとは別の変化球を選べばいいさ』

  『それぞれが自分に合った変化球を作り上げるのは当たり前のことだからな』

【磐城巧】

『例えば?』

                     『そこは磐城君自身が決めないと』

   『けど、まあ、参考程度に大リーガー、アメリカ代表投手の例を出そうか』

【倉本未来】

『大リーガーっすか?』

【野村茜】

『みっく、まだ起きてた?』

【倉本未来】

『スマホの電源OFFにし忘れて、通知音で目が覚めたっすよ』

『メッセージを眺めてたら興味深い話になったから話に参加したっす』

【磐城巧】

『そう言えば、皆は明日もデーゲームだったね』

『夜にごめん』

                            『俺は問題ないよ』

                   『それより大リーガーの話をしようか』

【倉本未来】

『アメリカ代表の投手の中にいるってことっすよね』


 倉本さんの文章から、何やら答えを当てようとしている気配が伝わってくる。

 アメリカ代表投手という括りだと1番手に来るような選手だ。

 適当に予想したとしても、むしろ外れる可能性の方が低いだろう。

 正解を先に書かれると、間の抜けた感じになって説得力が乏しくなりかねない。

 なので、俺は急いでメッセージを打った。


        『大リーグ現役最強投手であるサイクロン・D・ファクト選手』

      『彼は直球とカーブがほとんどなのに、何故か全く打たれないんだ』

【倉本未来】

『やっぱりサイクロン投手っすか』

『その話、聞いたことあるっす』

【磐城巧】

『そうらしいね』

『やっぱり175km/hの直球は別格なのかな』

                      『まあ、それもあるだろうけど』

       『どうやら彼は、カーブを最低6段階で投げ分けてるらしいんだ』

【磐城巧】

『6段階!?』


 野球の情報は軍事機密に相当する部分があるため、色々と制限されている。

 それでもお馴染みの映像は誰でも、それこそ他国の人間でも見ることができる。

 手前からピッチャー、バッター、キャッチャー、審判が収まった中継画面だ。

 それを村山マダーレッドサフフラワーズのインターンシップ部隊が画像解析などを駆使して分析した結果が、俺がSIGNに記載した内容だ。

 ただ、正確には――。


                            『最低6段階、な』


 あくまでも、あの微妙に斜めになっている映像からの分析だ。

 6段階のみとは言い切れない。

 もしかしたら更に細かい制御を行っている可能性もある。

 さすがにそれは画面越しでは分からなかったようだ。


【倉本未来】

『最古の変化球であるカーブで無双するなんて、凄いっすよね』

『そこまで行くと、もはや魔球っすよ』


 それこそカーブは最古の魔球でもある訳だけど、一時期廃れてもいたからな。

 古臭い変化球っぽい印象が倉本さんにはあるのかもしれない。

 とは言え――。


         『彼のカーブは正にそう呼ぶに相応しい変化球だと俺も思う』

【倉本未来】

『はー』

『さすがは大リーガーっすね』

                            『まあ、とにかく』

           『そういう方向性で変化球を極めるのもアリってことだ』


 同じ変化球のはずなのに似て非なるもの。

 時には複数の変化球を持つよりもバッターを惑わせ得るかもしれない。

 だから、変化量の細かく調整をしてくるような超技巧派ピッチャーとの対戦機会も多く持ちたいところではあった。

 磐城君がそうなってくれれば、異質な球を投じるに至った大松君と共に日本プロ野球全体のレベルアップに貢献するような選手になってくれることだろう。


【磐城巧】

『成程。変化量を自由自在に操る、か……』

『正に神業だね』

               『けど、その神業も磐城君ならできると思うぞ』


 彼もそのためのスキルを持っているからな。

 そのまんま鵜呑みにしてカーブを鍛えてくれると仮想サイクロン・D・ファクト選手にもなってありがたいところだが……。

 まあ、カーブでなくとも問題はない。

 勿論、この方向性でなくたっていい。

 俺の想定を超えてくれるなら、それに越したことはない。


【磐城巧】

『とりあえず試してみようと思うよ』

『今日の負けはさすがに悔し過ぎたからね』

                           『うん。その意気だ』


 磐城君に劣等感を抱いた大松君が発奮して進化を果たし、その大松君の進化が磐城君に刺激を与えてまた新しい意欲が生まれていく。

 正に切磋琢磨。

 この相乗効果こそ打倒アメリカ代表の鍵にもなるはずだ。


 勿論、俺達も俺達でまだまだ足りないところがある。

 次回のWBWまでに1つでも多くの武器を増やさなければならない。

 さて、次はどうしようか。

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