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色の無い夜に・Colorless Night~最凶妖魔王を倒すため最強呪刀を継承した俺は、魔王に反旗を翻した妖魔姫とじれ恋学園生活しながら妖魔を討つ!  作者: 兎森りんこ
第2章 制服の笑み花の涙

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香る月夜~明橙夜明集・華織月~

 

 麗音愛と椿の17歳の夏休みは終わった。


 団長の直美は麗音愛と椿の討伐作業に、やはり難色を示したが

 団員の手は足りず結局許可せざるを得なかった。


 妖魔の存在はずっと世間にが隠し続けられていたが

 最近の被害急増から

 今後、公表すべきか否かの議論は続けられている。




 満月の夜。


 麗音愛と椿の2人での作戦行動だった。


 派遣指示は剣一の権限でされる。


 直美にどう思われようが、2人を守るためだと剣一は椿が出る時は必ずペアで出動させた。


 今回は摩天楼。

 オフィス街のビルの屋上だ。


 こんなところまで妖魔が出現するようになるとは。


 麗音愛の呪怨に守られてはいるが

 落下防止のフェンスの上に立ち

 下を眺める椿

 風で髪がなびく。


 「こんなとこから落ちたら、怪我が治るって言っても

 復活はできないのかな」


 「危ないから降りなよ

 そして縁起でもないこと言わない

 俺が絶対……つかんでおくから」


 離さないとは言えず。


 「うん! まぁ私も身軽だし! 心配しないで」


 ぴょんと麗音愛の元に飛び降りる。


 「今日はとりあえず人払いは

  済ませてあるようだし好きに闘える」


 すっかり慣れた白夜団報告アプリの必要項目を入力していく麗音愛。


 「空中戦?」


 「いや、ビルの屋上ごとに

  寄せつけていこう」


 今回、回収されていた桃純家の書物のなかから

 妖魔を誘き寄せる用具の作り方が発見された。


 誘魔結晶(ゆうまけっしょう)

 と言って老若男女それぞれの血、体液、薬草などを混ぜて

 それを結晶化させる。


 「用意できてる?」


 「うん、バッチリ」


 軽く、準備運動をする椿。


 「できるだけ離れないで

  俺が呪怨で掴んではいるけど」


 「うん、信じてる」


 真っ直ぐにっこり笑う椿に、麗音愛も頷く。


 今日はポニーテールにして

 スポーティーな格好だ。


 細剣・緋那鳥(ひなどり)を構える椿。


 「どっちが沢山か競争ね」


 「わかった、んじゃ今日の帰りの牛丼だな」


 「オッケー」


 麗音愛が手のひらでグッと握り潰し 結晶が飛散する。

 キラキラと粉のように広がっていくと

 妖魔の影が、2人の周りを彷徨(うろつ)き始める。

 

 「よーし!」


 「数が少し多い――気をつけて、椿」


 「うん!」


 椿が麗音愛の背中に

 自分の背中をピトッとくっつけた。


 触れる温もり。


 あの最初の共闘を思い出す。


 2人でニヤリと微笑むと

 そこからは、もう背は離れ、お互いの闘いに没頭していく。


 雑魚は斬るまでもなく、椿の浄化の炎で一掃し

 麗音愛は呪怨で潰していく。


 麗音愛の周りにはいつも

 椿の小さな炎が一つ。


 椿の安全確認用。


 もちろん目視で必ず椿の無事を追いながら麗音愛は闘う。


 最近は晒首千ノ刀にも、ますます慣れてきた。


 片手で、刀を扱いながら

 片手で、呪怨を操り、飛び、潰し、飛ばし、喰い尽くす。


 あぁ――と響く、死の阿鼻叫喚、死への誘い。

 悪夢から醒めた時のような

 冷や汗で飛び起きるような感覚が毎秒毎秒襲ってきながらも

 いつか、この恐怖に慣れるのも怖いとも思う。


 慣れた時は自分がそちら側に取り込まれた時だ。


 闘っている時はいつも、孤独

 暗い闇に潜って、ただ滅するために身体を動かす。


 でもこの暗闇を照らす光。


 自分を照らす炎があるので安心できる。


「!!」


 椿が前後から大物に挟み討ちされた。


 瞬時にそこへ向かう。

 なんの痛みがあろうと引きちぎってそこへ走る。


 アキレス腱が喰いちぎられても

 腹元に牙が食い込んでも

 構わずに走る。


「麗音愛っ」


 優しく抱き上げて、椿を守れた。


 痛みなんてどうでもいい、ただこの冷え切った心に

 この声が、温もりが魂に響く。


「ごめんなさい!」


「いや、今日は量が多い」


 確かにそうだった。

 椿のセンスで、遅れることなど普段ない。


 今日は異常なほど

 妖魔が妖魔を呼び、月明かりのなか2人を囲んでいく。


 グロテスクなイソギンチャクのようなものから

 鳥のように飛翔するもの

 3つも頭のある犬

 全て牙を剥き、粘液が飛び散る。


「椿、しっかり捕まって」


「はい」


 左手で椿を抱え、椿は麗音愛の首元にしっかり抱きつく。

 こんな状況なのに

 つい微笑んでしまう不謹慎、と椿は思う。


 晒首千ノ刀が、麗音愛が吠える。


 月明かりも飲み込み、暗い、喰らい尽くし

 汚く、汚らわしい、闇。


「行くぞ」


 晒首千ノ刀を逆手に持ち、妖魔の群れに踏み込む!!


 椿もまた抱き締める腕に力を込める。

 気を緩めると落ちてしまう速さ。




 飛散していく妖魔達。

 それを呪怨が、弄ぶように引きちぎり食い尽くす。




「――人を、殺しているな!!」


 どこに隠れていたのか

 一際大きな妖魔が禍々しい声を発する。

 殺された死者の叫びが麗音愛には聞こえる。


 絡みついた妖魔の血をふるい落とすようにして

 そのまま麗音愛が刀を持ち直したと椿が思った瞬間。


 既に突き刺された妖魔は、絶命の咆哮を上げる。


「椿! 浄化!」


「はい!!」


 巨大妖魔を包む、蒼い炎。

 舞意杖と同化して強力になった炎は一瞬で塵にする。


 その後、人の魂も浄化されたのを感じた。


「ありがとう」


「うん」


 そう言いながらも、まだ妖魔は増え続ける。

 椿も炎で援護し

 数が落ち着いてきた頃、また麗音愛の腕から抜け出して

 緋那鳥を繰り出す。


 守られてばかりでは、椿は嫌なのだ。


 冷たく、冷たくなっていく麗音愛の身体の負担も

 少しでも減らしたい。


 2人はまた背を合わせる。


「大丈夫か――?」


「もちろん!!」


 それでもお互い何箇所か怪我をしているのは知っている。


「あと少し」


「うん!!」


 もう目で数える程度。これで終わりだ。


 そう思った時、雲が流れて一層

 満月の光が濃く、椿を照らす。


 ふと、満月を見上げたその時。


 良い香りが、椿を包む。


 甘い花のような、陽だまりのような、高貴な香水のような


「いい香り……」


 つい、そう呟いてしまった。


 その瞬間、鳥肌の立つほどの殺気!!


「椿!!!」


「!!」


 首を狙う、刃の輝き。


 椿よりも誰よりも

 その一瞬に麗音愛は自分の力を全てそこに使った。


 椿の首が落とされる運命を変えるため。

 全ての力を発動させる。


「――――――――!!」




「麗音愛!!」


「椿……」


 椿が腕の中にいて、ホッとする。

 しかし椿は絶望の声を上げる。


「麗音愛、うっ腕が!!」


「大丈夫だ」


 左腕が斬り落とされたらしいが、麗音愛にはそんな事はどうでもよかった。


 敵はどこへ行った?

 回避で目視することができなかった。


 激しい痛みが襲ってくるが

 左腕があった場所にはもう呪怨が絡みついている。

 再生できる。


 そして、麗音愛もこの美しい香りに気が付いた。


 満月に映る、三日月の影。


 違う、鎌だ。


 麗音愛は直感的に椿を離し呪怨で包む。

 自分が滅んだ時以外、破れぬ強固な結界。



 ギィイイイイイイン!!!!


 強烈に響く、金属音。


 鎌と刀がぶつかり合う。


「あれは――華織月(かおりづき)!?」


 驚く、椿。


 続く斬撃に、まだ片手の麗音愛は必死に応戦した。

 痛みと香りで集中力が乱される。


 やっと敵の顔が把握できた。


 女だ。

 ポニーテールの若い女。

 同じ年頃か。


「あの結界を解け、殺すのに邪魔だ!!」


「なに!?」


 椿を殺そうとするなど、紅夜会ではないのか。


 呪怨の槍で足元を攻撃し、距離をとることができた。


「麗音愛!! それ108の武器の1つだよ!!」


「!!」


 ならば白夜団?


「紅夜会、天海紗妃(あまみさき)


「……紅夜会が、何故椿を狙う!!」


 紗妃は、麗音愛の結界に守られた椿をギッと睨みつける。


 同じ髪型だった事を嫌悪するように髪を解いた。

 茶色いロングの髪が揺れる。


「みんながお前を愛してると思うな!!」


「!!」


 激しい憎悪の瞳。


 椿はその殺気に覚えがあった。


 紗妃の顔は、美少女といっていいだろう。

 美しく整っている。


 きっと1度見れば忘れない。

 その顔に覚えはないのだが

 憎しみの篭もった睨み。


 どこかで覚えがある。


「紅夜会だと言うのならば、お前は殺す!!」


「ふん」


 ギラリと光る、紗妃の華織月。

 美しい名前とは真逆で禍々しく、血に塗られたように光る。


 甘い匂いを放ち、妖魔でさえ虜にし、その間に滅する。

 だが殺人に使われ、門外不出の禁使用武器だったはず。


 何故、紅夜会が……そしてあの強さ。


 明らかに同化しているように感じる。


 一体どうして、そしてあの瞳、知っているのは何故。


 紗妃はまだ左腕が復活していない麗音愛に、容赦なく斬撃を浴びせていく。


 麗音愛は絶対に負けない――そう信じてる椿も

 不安で麗音愛の名を叫んだ。





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― 新着の感想 ―
[一言] え?白夜団でありながら紅夜会にも所属? てっきり雪春がそういう存在なのかと思っていた。 彼女は何者? 何かの因縁があるの? これは先を読まなきゃわからない!
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