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色の無い夜に・Colorless Night~最凶妖魔王を倒すため最強呪刀を継承した俺は、魔王に反旗を翻した妖魔姫とじれ恋学園生活しながら妖魔を討つ!  作者: 兎森りんこ
第2章 制服の笑み花の涙

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頬の痛み

 

 着いた病院で軽く診察を受けた後

 荷物の置かれた個室に通され、そこで麗音愛は剣一と再会した。

 剣一は弟を避けて椿を抱きしめる。


「あーー!! なんっにもできなくてごめん!! 無事で良かったよ椿ちゃん」


「け、剣一さん」


 麗音愛に引き剥がされ、イテテと剣一が身体をさする。


「また怪我を……」


「少しね。1人まだいて、戦闘になった。結局逃げられちゃったよ、ごめんね」


「謝らないでください。いいんです。私が1番何もできなかった」


 舞意杖を出さずとも、紫の炎が優しく剣一を包む。


「ありがと、これ疲れないの?」


「大丈夫です……」


 そう言いながら

 ふらりと椿がよろめくのを、麗音愛が支えてベッドに座らせた。


「佐伯ヶ原、まだ寝てんの?」


「うん……4人部屋の方に寝てるって。兄さん、雪春さんはどこ行ったの?」


「あぁ、あの人は調査部だし、俺はわかんない。

 やるべき事が違うからな。椿ちゃん大丈夫??」


「はい」


 そう言いながら、汚れてしまったもふもふ君を抱き締めると

 ポロポロと涙が流れる。


 麗音愛も剣一も何も声をかけられない。

 胸が張り裂けそうになる。


「俺、ジュースでも買ってくるよ。何も飲んでないよね、ずっと」


「や! やだ! 麗音愛行かないで!」


「玲央、俺が行く。コーヒー? 炭酸?」


「あ、じゃあコーヒー、椿は、サイダーかな」


「……水でいい」


 麗音愛のシャツの端を掴んだ椿はポツリと言った。


 剣一が出て行った後、麗音愛もベッドに腰掛ける。


「……怖いの……」


「うん、いるからここに」


 そうだ、と麗音愛が立ち上がり汚れたジーンズから写真を取り出した。

 よれよれになってしまっているのを伸ばして渡す。


「ごめん、折れて……」


「ありがとう……燃えちゃったと思ってた。嬉しい……」


 もふもふ君を抱きながら、写真を見つめる。

 そっと、いつものように麗音愛の肩に頭を寄せた。


「燃えちゃった……屋敷……」


「……うん」


「……もふもふ君、汚れちゃった」


「帰ったら……」


 コツコツと足音が聞こえて剣一かと思ったが

 ドアを開けたのは母の直美だった。


「玲央!!」


「母さん」


 慌てて、ベッドから立ち上がる麗音愛。

 心配かけて……と言おうとしたが


 バシィ!!!と頬に鋭い痛みが走る。


「! おばさま!」


 直美が麗音愛の頬を打ったのだった。


「玲央! あなたは!!」


 呆然とする麗音愛を庇うように前に立つ椿。


「おばさま! 麗音愛はなにも悪くない!! 悪いのは私です!!

 叩くなら私を叩いて!! 麗音愛を叩かないで!! 叩かないで!!」


 幼子のように泣いて叫ぶ椿を見て

 ハッ! とする直美。


「椿」


「ご、ごめんなさい椿ちゃん……

 心配で、親として、心配で……」


「椿、大丈夫だから

 母さんは俺を心配してくれただけ」


「母さん気が動転してしまって……」


「心配かけた俺が悪いんだ、椿、座ろう」


「……ごめんなさい」


「母さんも、ふらふらしてるよ、椅子あるから」


 丸椅子に腰掛けさせると、直美が椿の写真に気付く。


「それは……」


「椿の写真だよ。屋敷で見つけた」


 重々しい雰囲気のなか

 バターンと剣一がドアを開ける。


「自販機いいのなかったからさ~

 売店まで行ってきたんだけど

 椿ちゃんの好きなお菓子も買ってきたよーーー!!

 俺もレロレナ表紙で

 プロイボーイ売ってたから買ってしまった~~!!

 今月もうギガやべーし!!!」


「咲楽紫千部長、お元気そうですね」


「うげぇ!!……ど、ども」



 ちょっと明るい雰囲気にしようと思っただけなのにぃと

 ブツブツ珈琲を飲む剣一。


 直美に体調の事を聞かれ、大丈夫だと答えると

 それきり直美も黙ってしまう。

 気まずい空気のなか、看護師が現れ

 シャワールームが空いているうちにと言われたので

 椿と麗音愛が行った。


 ベッドの枕に、2枚の写真。

 赤ん坊の写真と、七五三の写真。


「椿ちゃんの3歳のかっわいーよなぁ~~~」


「……」


 より一層顔色が悪くなる直美。


「その隠し部屋に、その写真が?」


「俺は見張りで入らなかったけど、そうだってさ

 子どもの描いた絵とか、そんなものしかなかったって」


「そう……」


「椿ちゃん、可哀想。メンタルまじ心配

 この写真まで取り上げないでくれよ」


「えぇ、専属カウンセラーも用意しているの。写真は

 椿ちゃんが持っているといいわ。椿ちゃんの写真なのだから」


「生まれたばっかの赤ちゃんってまじで赤いんだな」


「……そうよ」


 赤ちゃんの写真の裏に数字が書いてあるのを剣一が見つけた。


「お、なんだこれ」


 そう言った剣一から直美は急に写真を奪った。


「少しこの写真を預からせて頂戴」


「はぁ?」


 ササッと赤ちゃんの写真を鞄にしまう直美。


「剣一、あなたももう、桃純家のことに首を突っ込むのはやめなさい。

 もう今後こういった事は許可しません、団員としての仕事ではないわ。

 玲央と椿ちゃんの団員としての活動ももうやめさせます」


「んで、2人を引き離して閉じ込めておくって?」


「閉じ込めるなんて言ってないでしょう」


「妖魔はどうすんの?2人の力がなければ無理だよ

 どっちにしたって、狙われる立場なんだ。

 紅夜会から俺らが守れるわけないんだから、生き抜く術を教えていくべきだ!!」


 他人にはこんな事はしないが

 つい、剣一も強い口調になってしまう。


「どちらにしても桃純家の御当主を家で、なんてとても無理よ」


「それについては、前にも言っただろう。玲央の心が死んでもいいの?

 あいつ、最近少しまともになってきた感じなのにさ」


「あの子は何も変わってないわよ。心配し過ぎなの」


「玲央が椿ちゃんから離れるなんてありえないだろ」


「……まさかとは思うけど、交際しているなんて事はないわよね」


「親友なんて言ってるけどさ~いっつもべったりしてんのに何もなしなんて逆に不健全だよな」


「剣一!! 冗談でもやめなさい!!」


 鬼気迫るような直美の顔に、剣一も口をつぐむ。


「……椿ちゃんは、桃純家の御当主なのだから……」


 直美の携帯電話が鳴った。

 電話を切って、直美が深く息を吐く。


「現場に向かうわ」


「気を付けて、ってか写真……」


「伝えておいて、きちんと返しますから」 





 シャワーを浴びた椿が病院のパジャマを着て、

 ふらふらと、もう既に済ませた麗音愛の待っている

 ふれあいスペースにやってきた。


「椿」


「待っててくれてありがとう」


 麗音愛も熱いシャワーで少し緊張が緩むのを感じたが、

 心ここにあらずな椿を見ると辛い気持ちになる。


「お腹は空いてない?」


「うん……」


 朝ご飯以来、食べていない。

 昼にあの火事でもう夜だ。

 ちょうど夕飯の時間らしく、配膳がまわっている。


「……さっき、ごめんね

 おばさま怒ってるかな」


「いや、変なとこ見せて謝るのは俺のほう

 母さんも心配してくれたんだ。俺のために」


「……口を挟んじゃってごめんなさい」


「俺に謝ることない、かばってくれてありがとう。

 あんまり怒られた事ないから、俺もびっくりした」


「そうなの?」


「勝手に名前を変えてたのがバレた時以来かな……

 椿はさ、気にしなくていいから」


「うん……」


 そうは言うが椿の歩みは重い。


 気まずいのは麗音愛も同じ。

 兄にメールして確認すると、

 もう、母はいないと返信がきた。


 晒首千ノ刀を継承して、白夜団に入って、

 母親との関係が、変化していくのを麗音愛は感じた。




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― 新着の感想 ―
[一言] 何だろう。直美さんの行動が気になる。 あの赤ちゃんの写真は……実は違うとかあるだろうか? いや、でもあの部屋には椿の子供の頃のものだけだったから、それはないか。 しかし、直樹さん、御当主問…
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