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色の無い夜に・Colorless Night~最凶妖魔王を倒すため最強呪刀を継承した俺は、魔王に反旗を翻した妖魔姫とじれ恋学園生活しながら妖魔を討つ!  作者: 兎森りんこ
第2章 制服の笑み花の涙

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椿、帰る~屋敷炎上~

 


 乱暴に両開きの重厚な玄関扉がドーンと激しい蹴りで開けられ

 Tシャツにジーンズ姿の闘真(とうま)が現れる。


「姫様!!」


 また、椿を見て嬉しそうな顔をするが、その横の麗音愛は睨みつけた。


「火の用意はできてるぜ、ヴィフォ」


 火炎瓶のようなものを両手に持っている。


「なんでそんな事をするの!?」


「姫様を虐待し続けた忌まわしい屋敷じゃないですか!!

 浄化しましょう!!

 俺らをだましていた

 あいつらもギッタギタに限界まで苦しめて殺してやりましたし!!」


 あぁ余計な事を、とヴィフォは顔をしかめたが

 気付かずニコニコと話をする闘真。


「……あんた達が……殺したの?」


「はい、ビデオに録ってありますよ、俺らと帰って一緒に見ましょうよ」


 まるで映画でも見ようというような誘い。

 摩美もため息を吐く。


 椿の心も気持ち悪さで満たされる。

 もう闘真の方は見ずヴィフォに叫ぶ。


「この家は母様との思い出もある! これからいっぱい

 たくさん思い出したいの!! やめて!!」


「ご命令ですので、申し訳ありません

 火が回る前にお逃げください、ではまた。火をかけて撤収!!」


「やめてーーーー!!!」


 ヴィフォの掛け声と共に

 エントランスホールに闘真が火炎瓶を床に投げつけた。

 燃え上がる炎。

 食い止めようなんて考えてたのが甘かったと思うほど激しい炎があがる。


「いやーーー!!!」


「兄さん! 椿を!!」


 剣一は椿の手を掴み、玄関へと向かった。


 麗音愛はすぐ地下に戻り、佐伯ヶ原(さえきがはら)を担ぎ上げ

 赤ん坊の写真立てを割って

 3歳の椿の写真とポケットにねじ込み飛び出す。


「!!」


 火の回りは早く、篝の絵が、祖母の絵が、燃えていく。

 椿達はもう、外へ避難していた。


「椿、無事か!!」


「麗音愛っ」


「和屋敷にも火が点けられた!あいつらなんてこと!!」


 剣一はすぐに電話をかけた。

 雪春も電話をかけている。


「母様のお部屋が……浴衣も……燃えちゃう行かなきゃ!!」


「荷物を回収しに行きましょう、椿さんの明橙夜明集(めいとうやめいしゅう)も向こうに残っている」


「先に行く!!」


「麗音愛1人で行かないで!!」


 すぐ椿を抱き寄せ飛んだ。赤く燃え上がる和屋敷。

 だが大広間側はまだ燃えてはいなかった。


 荷物を縁側から放り投げ、

 椿も浴衣ともふもふ君を胸元に抱える。


 ガクガクと震え、あふれる涙を手の甲で拭う椿。

 怒りがこみ上げてくる麗音愛。


「あいつらを追いかける!!」


「やめて!! 一人で行ったらダメ!!

 さっきの話の浄化を作動させるかも!! 早くこの場所から逃げないと」


「玲央!! 応援を呼んだ! 俺は浄化を発動させようとしてる奴がまだいるか確認してくる!!」


 消防車の音が遠くから聞こえてくる。


「これからは白夜が対応する機密事件になる、

 消火はしてもらうが、何も話さなくていい。わかったな!」


「わかった」


「荷物は俺の車に放りこんで、佐伯ヶ原乗せて、庭を抜けて門のところまで行け

 車の中に入れば白夜の人間だとわかる!! 玲央は危険を感じたら逃げろよ!!」


「俺は行かなくて大丈夫なの!?」


「お前が行って発動されたらどうする!!」


 場所がわかるのだろうか、剣一は走り去っていった。

 とりあえず椿を兄の車に乗り込ませ、見様見真似で車を走らせる。


「佐伯ヶ原が心配だ」


 雪春が佐伯ヶ原を保護していると思えない。


「椿、大丈夫か」


 勢いよく燃えていく館に呆然として声も出ない。


 洋館の避難で飛び出した場所に、佐伯ヶ原が横たわっていた。

 雪春の姿はない。

 窓ガラスは炎で割れて、寝かされた場所にも今にも火の粉が降り注ぎそうになっていた。


 瞬間、窓から炎が吹き出す。


「佐伯ヶ原君!!」


 叫んだ椿は最大限の炎で佐伯ヶ原を包みながら、 火事の炎を椿の炎で包むと、打ち消すことができた。


「私の炎で消せる!! 私、火を消してくる!! 佐伯ヶ原君をお願い!!」


「駄目だ! こんな範囲を消すは無理だ!!」


 麗音愛は降りて佐伯ヶ原を担ぎ、後部座席に乗せる。


「だって!! だってだって!! あの部屋も燃えちゃう!! 母様の!!

 麗音愛はこの結界地から出て!!」


「俺には1人になるなと言って1人で行くのかよ!!!」


 ビクッと椿がなる。

 麗音愛に怒鳴られた事なんて初めてだった。


「何もできなくて、ごめん」


 ぎゅっと手を握り、車へ連れて行く。


「ここで、椿に怪我をさせたり何かあったら俺は

 椿のお母さんにも、おばあちゃんにも顔向けできない」


 ふるふる、と椿が顔を横に振る。


「っごめんっ……麗音愛」


 助手席に大人しく乗った椿を確認し

 麗音愛は車を走らせた。

 屋敷の広大な庭。

 ものすごいサイレンを響かせた消防車が何台も通り過ぎる。


 門まで行くと

 真っ青な顔をした、おばさんと小夏がいた。


「お、おばさま……」


「つ、椿ちゃん!!」


 麗音愛が停車させ、椿が車から降りようとすると

 足がもつれて、高い車から落ちてしまう。


「おばさま……」


「大丈夫かい!!?? 火事なの!?」


 落ちた椿に駆け寄る。


「ご、ごめんなさい……せっかくあんなに福火を喜んでもらえたのに

 こんな事になって……みんな、きっと不吉な火って思う……」


「何を言ってるの! 誰が思いますか! 怪我はないのかい!!?」


「玲央君なにがあったの!?」


「あ、あの……火を着けられたみたいで、必死に逃げてきたんです」


「剣一さんは!?」


「兄も無事です……」


 すすだらけになって、涙のあとがくっきり残った椿の顔。

 おばさんが水で濡らしたハンカチでごしごしと拭いてくれた。


「佐伯ヶ原君は大丈夫なの?」


「はい、ショックで倒れただけで……」


「それでどうするの? 事情を話したあと、もし行くとこないなら家に……」


 サイレンを鳴らした車が近づいてきた。

 黒のSUV車が2台。パトランプが付いているがパトカーではない。


 降りてきたスーツのサングラスの男。


咲楽紫千(さらしせん)さんですね? 渡辺椿さんも一緒ですね」


 麗音愛は椿とおばさん、小夏を背後に守るように立ちはだかった。

 椿も麗音愛の背で攻撃体勢をとる。


「あなた方は?」


「同じですよ、あなたのお兄さんからの要請で参りました。

 さぁ、私共と一緒に」


「兄を置いてはいけない!」


「そうです!! 剣一さんを待たないと!!」


「今、連絡がとれて、迎えの車が行っています。電話で確認してください」


 すぐに電話をかけると、その男の言う事を聞けと言われた。


「おばさま、何も話せないでごめんなさい」


「いいんだよ、でも、また必ず元気な顔を見せてね」


 (かがり)とは違う、どっしりとしたおばさんに抱きしめられ

 それでも母の温かさ優しさを感じ、また涙が流れる。


「はい」


「小夏さんも、お世話になりました。兄が特に」


「ううん、また会いたいって伝えておいてね」


「はい」


 もう一人の黒ずくめの男が何やら2人に話しかけた。


「守秘義務のお話をさせて頂くだけですから、さ、急ぎましょう。

 マスコミがそろそろ来ます」


 麗音愛と椿は男達が乗ってきた車に乗せられる。

 もう1人は剣一の車に乗り込み

 2台は発車した。



 説明を受けている2人の間に、ふわふわと3色の炎が揺れる。

 気付いた2人の手に優しく触れて、サァっと消えていく炎。


「椿ちゃん……」


 おばさんの祈るように合わせた手に、そっと小夏も手を重ねた。


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― 新着の感想 ―
[一言] 燃えてしまうのはショックだ。 でも、大事なものはちゃんと持ち出せたから、まだ良かったのかもしれない。 紅夜会の奴らが本当に嫌いだ!
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