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色の無い夜に・Colorless Night~最凶妖魔王を倒すため最強呪刀を継承した俺は、魔王に反旗を翻した妖魔姫とじれ恋学園生活しながら妖魔を討つ!  作者: 兎森りんこ
第2章 制服の笑み花の涙

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椿、帰る~2人夏祭り~


 

 長い石階段を登っていく。

 体力はある椿だが、慣れない下駄で早くは上がれない。


 横で見ていても、なんだかひっくり返りそうで

 麗音愛(れおんぬ)が手を差し出そうとした時、おばちゃんが後ろを振り返った。


「彼氏さん、椿(つばき)ちゃんちょっと支えてあげてよ。ここ手すりもないから」


「え」


「か、彼氏じゃないですっ!!!」


 と椿が大きな声で言った。


「あら、お友達……おばちゃん失礼しちゃったわ~」


 おほほと、おばさんは笑って誤魔化す。


「そうです!!彼氏じゃないです!!絶対違います!!」


 この前のお友達の別れた騒ぎを思い出す椿。

 椿のなかでは男女交際=好きでも大嫌いになってしまうかも

 という危険なイメージが出来上がっていた。


「私達は、親友なんです!!! 親友ですよ!

 ね! 麗音愛!! 親友だもんね!?」


「うん、親友」


 そこまで全力で否定されるのも、と思いながらも

 実際、親友だしな。と端っこからはみ出てくる感情はそのまま消え去っていく。

 どこか機能しない心。


「親友!」


 椿がにこにこして嬉しそうに頷く。

 椿の笑顔を見ると、麗音愛も嬉しくなる。


 椿が笑う道が正解。

 だから、これでいい。


「ほら」


 麗音愛が

 右手を差し出すと、もっと嬉しそうに笑ってポニーテールとリボンが揺れて、手をとった。


「ありがとう」


「大丈夫?」


「うん、ここすごく強い力を感じる

 麗音愛、大丈夫?? このすごい浄化の力」


「あぁ負荷はあるけど……辛いまではいかないよ」


 麗音愛が辛くないのは安心したが

 そこまで強大な呪いの力だということだ。


 椿は手がつなげた事が嬉しかったけど

 麗音愛のひんやりした手に比べて

 自分の手が暑さで手がベタベタしないか気になりながら階段を登りきった。

 お役御免というように、自然に手は離れていくことに少し寂しさを感じる。



 上では小太りの

 町内会長が汗を拭きながら待っていた。


「おおおお! (かがり)様!! あ、いや失礼」


「会長! ね、とっても似てるでしょう!篝様そっくり!!美しいわぁ~~~」


 2人がとても褒めるので、椿は逆に恥ずかしさで萎縮してしまう。


「どうぞ、どうぞ社務所でお茶でも……」


「でも、せっかくお祭りを楽しみに来てらっしゃるから

 お引き止めするのも迷惑だから……炎灯(ほのおともし)だけしていただきましょうよ」


「あぁ、そうだね、遊びに来てくれたのに

 じゃあ、炎灯お願いできますかね??」


「本当に私でいいんですか?」


「もちろんですよ」




 緋那神社の神主さんも現れて、挨拶をすると

 少し力のある人なのか麗音愛を見ると

「おぉイケメン君だねぇ」と麗音愛を褒めた。


 町内会長とおばさんは何を言っているんだ?というような顔をして見る。


 連れられて、神社の中庭に作られた祭壇行くと大きなロウソクが3つ用意されていた。


「さ、こちらの3つに火をライターで点けていただければ…」


 と花火の点火に使うような大型ライターを渡される。


「あの、1人に、させてもらいませんか?母と一緒に灯す気持ちになりたいんです……。

 あ、麗音愛はいて」


 くっと、麗音愛のバッグを引いて引き止める。

 神主、町内会長、おばさんは笑顔でそれでは、とその場を去る。



 椿の目の前にある、3本の装飾されたロウソク。

 赤と、青と、紫の色。偶然なのだろうか。


「きっと見た目は普通の赤い炎になってしまうと思うけど……


 皆様が幸せになれますように……母様……」


 椿が赤と青と紫の炎を出現させる。


 舞意杖(まいつえ)で、火を操り、ろうそくに灯す。


 すっかり暗くなってきた夜の闇に、優しい炎が灯った。




「ありがとうございます、ありがとうございます

 これで続いた厄も祓えそうですよ」


「少しでもお役に立てれば」


 えへへと椿が笑う。


 会長からグイグイと押し付けられ御礼のポチ袋を受け取った。

 おばさんは、まだ仕事があるというので

 2人で参拝し、石畳を降りようと椿が向かうのを麗音愛が引き止めた。


「椿、一気に飛んで降りよう」


「え」


「お腹減っただろ!」


「うん!!」


 麗音愛に連れられ、誰もいない暗い林の方へ行く。


 椿はなんだかドキドキしてしまったが

 すぐに抱きかかえられて一瞬で祭りの外れに着く。


 御礼を言って降ろしてもらうが、少し名残惜しい。


「? 行こう」


 そんな椿には麗音愛は気付かず剣一に電話をかけた。



 みんなと、合流する麗音愛と椿。


 剣一はもう、屋台に腰を下ろして酒を飲み、すっかり小夏や地元の人とワイワイ楽しんでいる。


 雪春にどうでした? と聞かれたので椿は、火を点けただけですと報告すると、そうですかと静かに微笑んだだけで終わった。


 とりあえず歩こうと2人で祭りの散策を始める。


「あら」


「あのお嬢さん」


 と椿を見て、皆が気付き始めた。


「私イカを焼いたの食べたいなぁ」


 気付いていない椿がそう言ってお金を払おうとすると


「無事だったんだねぇ」


 と屋台のおっちゃんに声をかけられる。


「やっぱりそうなのねぇ!!」


 近くにいた、おばさんも声をかけてきた。


「わ、私、若奥様なんかじゃないです!!」


「じゃあやっぱり桃純(とうじゅん)の……!! おーい! みん……」


 おっちゃんが大声を出そうとしたので麗音愛が慌てて止める。


「あの、今日は見守ってあげてください。この子今、色々疲れているので」


「あぁ……そう、そうなんだな。ごめんごめん

 若奥様なんかじゃないことは、皆わかってたよ。どうにもできず

 みんな心配してた。帰ってきたの? 今だけ?」


「ありがとうございます……そんな風に思ってくれてたなんて気付かなかった……」


「今はにっこり笑って幸せそうで良かったよ。隣は彼氏かい?」


「え!? 違います!! 彼氏なんかじゃないです!! 違います!! 私達は親友!! 親友なんです!」


 また、ものすごい否定っぷり。


「彼氏じゃなくて親友だもんね!? 麗音愛」


「うん、そうだね親友」


 なんだか自分の感情がよくわからない麗音愛。

 でも親友と言うと、にっこり笑う椿。1番自然な笑顔になる。

 それが椿にとって最上級の絆だからなのだけど

 麗音愛は知らない。


「ほら、お嬢ちゃんイカ焼き! 食べて! お金はいいから!! 祭り来てくれてありがとう!」


「ええー!? でも」


「いいから!!」


 それからは、皆が椿に

 りんご飴だの、焼き鳥だの沢山差し出してきて

 小さな子どもまでラムネ菓子なんかを渡してくる。

 椿は遠慮していたが、皆引っ込めることはしないので

 沢山御礼を言って美味しい美味しいと全部食べた。


「おいひー!」


「だろ!?」


 次は佐伯ヶ原とチョコバナナを頬張る椿。


「ねぇ、あの袋なに?」


「あれも綿菓子だよ。買ってみる?」


「可愛い! 食べてみたい」


 昼間あんなに泣いてたとは思えないほど、キャッキャと笑う椿。

 少し無理をしているのかなと感じることはあったけど

 ずっと修羅場を乗り越えてきた彼女の自己メンタル修復術も邪魔をしたくはない。


「椿、写真撮ってやるよ」


 と佐伯ヶ原が言った。


「! 本当!?」


「サラ、一緒に並んで」


「え……」


 椿だけの写真で……と思ったが、椿はジッと見てくる。


「親友との写真……欲しい」


「……」


「親友との写真……欲しい」


 むぅぅ……とうるうるした目で見てくる。


 降参。


「わかったよ、ここでいいの?」


「鳥居も入れましょう~あ、もうちょっと寄って」


「う、うん!!」


 撮るとなったら、椿の方がワタワタし始めて

 前髪をちょちょっと直したりしてる。


「もうちょっと! 寄って!」


「もうちょっと?」


「麗音愛。も、もうちょっとだって」


 浴衣姿の椿に寄り添うと、椿が麗音愛の腕を両手でぎゅっと掴んだ。

 ふわっと良い香りがする。


 わたあめの香りじゃなくて……と、つい椿を横目で見てしまい

 ドキッとする。


 移動手段で抱き上げる時は何も感じないのに……。


「はい、こっち向いて」


 ジャジャジャジャ!!!! と佐伯ヶ原が連写する。


「撮りすぎだよ」


「普通ですよ。後で送りますねぇ」


「わーい!!! 佐伯ヶ原君ありがとう!!」


「……別に」


「今度は2人も撮ってあげるよ」


 麗音愛が2人にスマホを向ける。

 椿はイエーイ!! と元気いっぱいピースをするので

 佐伯ヶ原もなんと一緒にピースで高校生らしい写真が撮れた。


「なんだよ、さっきもこういう元気に撮れば良かったのに

 俺もピースとかの方がまだマシに撮れたかも」


「え、だ、だって……」


 椿は言葉を濁して、タピオカ飲みたいと歩き出した。

 佐伯ヶ原は、疲れたから剣一の元へ行くと去ってく。



 麗音愛は椿を追って

 2人で型抜きや、くじ、ピンボールゲームや

 ストラックアウトをした。


「おっしゃ!!」


「すごい!!」


 麗音愛がストラックアウトで8枚抜いたので景品が当たって

 もふもふ君のキーホルダーを選んで椿に渡す。


「えっ……いいの?」


「うん」


「ありがとうっっ!! わぁい嬉しい!!」


 予想以上の喜びに麗音愛も少し気恥ずかしくなるが

 2人で思い切りお祭りを楽しんだ。



「これ、美味しい」


 人混みを少し避けてベンチに座って

 チョコクリームの入った鯛焼きのようなお菓子を頬張って幸せそうな椿。


 頭にはお面、腕にはヨーヨー、綿あめ、光る腕輪に、水風船。

 巾着もパンパンになって、もふもふ君キーホルダーがぶら下がっている。


 誰より楽しんで

 同じ年代の子たちと混ざって、普通の高校生だ。


 いや、やっぱりもう少し幼く見えるかも。


 でも、みんなが振り返って椿を見ていく。

 お祭りの光のなかでもキラキラ眩しい。



「ねぇ麗音愛のあんこも美味しい?」


 そう聞く、椿の口にチョコがちょっぴりついてる。


 つい、そっと麗音愛が指で拭ってあげると


 目を丸くして、リボンが猫耳みたいに揺れて自分を見てくる浴衣姿の椿にふっと笑ってしまい


「かわい……」


 無意識に声に出てた。


「ぇっ……」


 椿も、優しく微笑む麗音愛にそんな事を言われて

 ドクンと心臓が高鳴る。


 麗音愛は声に出てた! と一気に顔が熱くなる。



「……っ! あっ……えっと……!」


 慌てて横に置いていたペットボトルのお茶を落として、また慌てて拾う。


「あ、あんこも美味いよ」


「…………あ、そ、そっか、そうだ、うん美味しいに決まってるよね!!」


「うん、そう。ほらティッシュ」


「うん……ありがとう」


 目を逸して話す姿に、照れているのがわかった椿は

 恥ずかしいけど、今まで誰かに言われた時より一番嬉しく感じた。


「そういや、家の近所のお菓子屋さんでも……」


 麗音愛が違う話を必死に探して話しながら

 チラッと横目で見ると、椿はニッコニコで麗音愛を見つめていたから

 目が合って

 普段ひんやりしている麗音愛の顔がまた熱くなる。


「福火渡しが始まるぞーーー!!」


 石階段の方から声と歓声が響いた。





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― 新着の感想 ―
[一言] こんな自然な形で「かわい……」を言うなんて、反則やろう!!!麗音愛!!! こっちまでドキッとしたわ!( ー̀֊ー́ )✧︎ まぁ、言えてよかった……うん(о´∀`о)ニヨニヨ 佐伯ヶ原が撮…
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