幸せな君と~琴音・龍之介梨里篇~
街頭の巨大な液晶モニター。
道行く人々が、それを見上げる。
らららら~♪ と国民には馴染みの音楽が流れて、昔から続く人気番組が始まった。
「それでは今日は、令嬢でありながら『世界を救った一員』の加正寺琴音さんをゲストにお招きしております~~」
高齢ではあるが、ハキハキと笑顔が輝く女性司会者が拍手をした。
少し髪が伸びてオフショルダーワンピースを纏った琴音が、司会者の横に用意されたソファへ微笑んで座る。
「加正寺琴音です。よろしくお願いします。まさか私が、子供の頃から見てる人気番組に呼ばれるだなんて驚いております」
「あらあら、可愛いお嬢さんでびっくりです。そんなに細い腕で本当にあの恐ろしい化け物どもと戦ったの?」
エステで磨き抜かれた琴音の腕は艶めいている。
そして適度に筋肉もあり『ベスト・オブ・エンジョイバディ!女子高生の部』でも優勝し話題になった。
「はい、もちろん妖魔退治に筋力は必要あります……! ですが、それよりも大事なものがあるのです」
琴音は自分の胸に手を当てる。
最後の死闘のあと、琴音は胸の傷を綺麗に消した。
その経験も『貴女の傷は美しい』というブログを書いて発信し、アクセス1位を記録したのだ。
とりあえず琴音の人気は更に爆上げ中。
そして同じくらいアンチもいるが、それは琴音にとって気になることではない。
「なにかしら? 聞いてもいいの?」
興味津々で顔を寄せる女性司会者。
「……それは私の胸に宿る、たった一つの愛です」
一呼吸置いてから琴音は、答えた。
「まぁー! 素晴らしいことですね。それはあれかしら? 世界を守る博愛という意味ですか? ……それとも」
「当然に、皆さまを守りたいと想う愛もあります。でも、私のなかで輝き続けるのは一人の方への愛です」
琴音にカメラがズームになる。
微笑む琴音。
「それは、つまり恋人……ということでしょうか?」
「いいえ! 恋人ではありません。でもそれを越えた繋がりがあると思っております。彼が望むべき助けができるのが私です。それに、あの方は……過去からの因縁に縛られている状況なんです」
「あららら、過去からの因縁!! 白夜団の方なのかしら? ……おほほ。詳しく聞いたらダメですって。今や世間で大人気だけれど国家を守る公的機関でもあるわけですからね~」
スタッフからの指示に、女性司会者が笑いを混ぜて説明をした。
「まぁそこは濁させて頂きます。でも、とても素晴らしい方ですし、因縁はいつか決着がつくかと思ってるんですよ。正義は必ず勝ちますからね。私は因縁の方の命の恩人なのですが、今は少しの間の蜜月を許してあげている状態です」
「ええー! 貴女! 心が広いのねぇ!」
「いえ、そんなぁ~! 過去からの因縁につけこむような……悲しくて寂しい人なんですよ。私、女はいつだって余裕がないといけないと思うんです」
クスリと笑う琴音に、女性司会者は拍手をした。
「こんなにも綺羅びやかな、今をときめく女の子がまさか一途に恋心を頂いているなんて、びっくり!ですね」
「今の人達って、簡単に好きになったり別れたりするじゃないですか……私の恋は命を燃やしているんですよね。それが私を動かす力になって、皆さんを守る力にもなるんです」
「恋して闘う乙女! 男性ファンは泣いてしまうんじゃな~い??」
「大丈夫です。私は恋をしないアイドルなんかになりたいわけではないですからね。プライドをもって恋をする。そして愛を守るために闘う。それが私です」
女性司会者が、また拍手をした。
「それで、今日は初公開で? 貴女の武器を見せてくださるの?」
「はい! この番組なので特別に公開することにしました。パネルなんですが、これは私が愛を守るために捧げた二本の刀、『黄蝶露』と『骨研丸』です」
琴音が愛しそうに二刀の写真のパネルを、カメラに見せる。
「闘いのなかで、失ってしまったんですってね……切ないお話ですね~~今はなんの武器を? いいでしょ? 聞いても」
「はい。皆さんがご存知のように、白夜団の活躍で妖魔という人間を狙う獣害は弱体化しました。なので彼らのような……最強の二刀のような存在は不要。……でも今、新しい刀を創ってもらっているんです! 私には必要な力ですから! 名前は……あの人につけてもらいたいな! って思っています」
その顔はうっとりとしている。
頬を染めた琴音から、女性司会者にカメラが移動した。
「それは、あなた、すごいわ。できたらまた是非スタジオに見せに来てください。それで、え~と……お洋服も作るの?」
「あ、そうなんです! これは女の子達にも愛と強さを訴えていきたいなって思って、新たに自分を強く美しく見せる下着ブランド・メーカーとファッションブランドを立ち上げました」
「あらあら! 皆さん見て~! 素敵ね」
二人の間に新作の下着やスカート、ブーツなんかが運ばれてきた。
「下着はちょっとかわいそうな……シンデレラバストの方も可愛く見えるように、今回もそういう哀れな……いえ、控えめな先輩にもまたプレゼントしたんですよ。その先輩は背も低くて、みすぼらしい……いえ、せめて見栄えがよくなるようなブーツをと思って、うふふ。とっても喜んでくれました。そういう全ての女の子が可愛くなれる! をコンセプトに~なんと白夜団でも……」
巨大なテレビに写った琴音を、カフェテラスで龍之介と梨里が見上げていた。
「あれ、放送事故じゃないん? やばいっしょ」
「まぁ、いつもの琴音だろ~。んでお前、買い物はもういいか? 俺はもう疲れたわ」
二人それぞれストローの刺さったアイスコーヒーをすする。
梨里の足元には、沢山のショッピングバッグが置いてある。
「まぁ一人暮らしの準備は、こんなもんかなぁ~。玲央と姫ももう行っちゃったしさ~、あんたはまじで大学行かないで白夜で働くわけぇ?」
「ったりめぇだ。勉強なんかもうしたくねーし。東支部でも、世代交代と新しいやつら集まってきてるらしいしよ~腕が鳴るぜ!!」
特に進学する気持ちもなかった龍之介なので受験に落ちても無問題で、そのまま白夜団団員として働く道を選んだ。
地元へ帰るために、引っ越しの準備をすすめている。
「好きだねぇー。あたしはもう白夜は卒業認めてもらって良かったけどねー紅夜は滅んだし、撫鬼も壊れちゃったしぃ」
梨里の明橙夜明集・撫鬼は最後の戦いで砕け散った。
白夜団団員として生きる事を望まれているかと思ったが、梨里の祖母は紅夜が滅んだ後に梨里に好きなように生きろと伝えたのだ。
団員を完全に抜ける事はできないが、梨里は戦闘員を離脱した。
「わざわざ引っ越して料理かよ」
「んだ! あたしは大好きな料理を習いまくるんだから!! 世界中を旅してさ~最高じゃん! まぁ最初は、一人暮らしして和食習うけど~西の味付け気になるんだわ」
梨里もそういう理由で、引っ越し準備中だ。
「まぁ、お前ならどこ旅しようが一人で大丈夫だろーけどな」
「でもとりあえず海外旅行行こうかなーって思ってるわけ~姫と玲央ぴと会うかもしれないし、亜門のアトリエにも行ってやろって思ってるんだけどさ~どういうわけかヨッシーもいるって言うし」
「まじかぁ……じゃあ、やっぱ俺も春休み中はお前らと遊ぶかなー」
「お金はご褒美で有り余ってんだから、いーんじゃね? 西野っちの結婚式は来月だし、それまで海外で好きにしよーよ」
「あいつの結婚式なんざ興味ねーけどなぁ」
「ひでーこと言うなし」
西野も少々複雑で白夜団に入団した事を公表し、そのまま卒業と共に就職という形をとった。
白夜団の外では、摩美の素性は明かせない。
今後も完全に自由な生活は望めないだろうし、摩美もそれを受け入れてる。
それならば団に夫婦で尽くし、一生この世界で生きていく! と宣言をしたのだ。
結婚式は摩美はとんでもない! と断ろうとしたが椿やカリンや直美もささやかな式をしましょうと提案して行われる事になった。
会場は修行場の白狐地獄谷の宿泊施設だ。
「さすがに、あそこまではデリバリーも無理だし、あたしの腕が鳴るっしょーー!」
「それまでせいぜい精進しろよ」
「うっせーし! 『世界を救った一員』のギャルのレシピ本バカ売れしてんだからね~!」
「お前が本を出すとかな、日本語危ういくせによ」
「お前もな! バカ龍!」
梨里は妖魔が人々を襲うなかSNSで白夜団を公表し、避難を誘導した事から更に人気は爆発しSNSでの人気はナンバーワンで本も出した。
琴音はそれが理由ではないと言いながら、SNSは退いた。
「んじゃあ~飛行機予約して早く行こうぜ」
「オッケー! そうしよ!」
「向こうでバイクの旅もしてえな。車もいいけどやっぱパイクっしょ」
「いいね~空港からバイクで、亜門のアトリエ行こ」
「おうよっ!」
龍之介が自分の車のキーを空へ放り投げて、キャッチした。
まるで近所にでも遊びに行くような提案をして、二人はカフェを出る。
巨大液晶モニターでは琴音が笑顔で手を振って、番組が終わろうとしていた。
ちなみに琴音に『カメリア』を歌う要請をする事は禁忌だとテレビ業界では知れ渡っている。
理由は『タイトルが嫌い』だからだ、そうだ。
いつもありがとうございます!!
今回はコミカルに~と思って書いたので、余韻気にせず後書きです。
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明日(11月25日)でカラレス4周年です。
そして明日の「幸せな君と~麗音愛椿篇」で完結です。
これだけ長く完結の準備をしているのに、まだ完結の実感も
完結ボタンを押せるのかもわかりません……汗
感想本当にありがとうございます!!
もう、この宝物を抱いて私は生きていけます……。
本当に励みになっております。ありがとうございます




