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色の無い夜に・Colorless Night~最凶妖魔王を倒すため最強呪刀を継承した俺は、魔王に反旗を翻した妖魔姫とじれ恋学園生活しながら妖魔を討つ!  作者: 兎森りんこ
第三部 第二章

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さようなら:白夜団紅夜殲滅作戦終了


 美子達のゲートが強固になったことで、麗音愛達からも目視することができた。


「あそこだ! じゃあみんな出発しよう。俺が先頭で行く。兄さんは一番うしろで頼むよ」


「おう!」

 

 少し距離はあったが、弱音を吐くものは誰もいない。

 むしろ西野なんかは鼻歌を歌って摩美の手を握って歩き、爽子はデータ保存に夢中だ。

 しかし疲労は確実にしているし、母の安静は絶対なようなので皆で慎重に歩く。


「剣一……絡繰門さんは、見なかった?」

 

 直美が剣一に訪ねたのは、篝を連れて行った男。

 篝は天に昇ったが、雪春はその後現れていない。

 

「見てないな」


 雪春が酷い怪我をしていたのはわかった。


「ふん、あんな男は勝手に死んだんでしょう」


 琴音が言い放つ。

 雪春と交戦した事は報告済みだ。

 しかし琴音は致命傷になるはずの傷を負わせた事は言わなかった。

 それはもちろん負い目などではなく、あれは自分の成果だと思いたくもなかったからだ。


 篝を迎えに来た時に、もしも琴音がいたのなら首を跳ねていたのにと思う。


 あんなのは、自分を利用した自死だ――。

 と琴音は思い、いい気はしない。

 むしろ腹が立つので、さっさと忘れたいくらいの気持ちだった。


「雪春さん……母様と一緒にいたのに」


「……あの人が何を望んで、どういう結末を望んだのか……俺にも誰にもわからない。あの人なら脱出の方法を知っているかもしれないし……今はどうすることもできないよ」

 

 白夜団を裏切った男。

 危険を冒してまで、彼を今此処で探す理由はない。

 

「……うん、そうだよね」


「椿、眠っていいよ」


「ううん……」

 

 先頭を歩く麗音愛に抱かれた椿は、そう言われながらも最期まで見届けなければ……と意識を失わないように努めていた。


「あっ……」


「椿?」


 椿が声をあげた方向を見ると、誰か遠くに立っている。

 反射する鏡のような水面に、花が咲いていた。


「闘真……」


「えっ……」


 麗音愛は警戒し攻撃態勢をとったが、椿が止めた。


「大丈夫、麗音愛……戦わないで、お願い」


「……わかった……」


「……私、話をしてくる……」


「椿、あいつが何かしたら俺は許さないよ」


「……ううん、きっと大丈夫……皆さんは、先に行っていてください」


 麗音愛は剣一に先頭を頼んで、椿を下ろした。

 もちろん先には行かず、ゆっくりと歩いて闘真の元へ行く椿を見守る。

 カリンも摩美も何も言わずに、目指す光へ歩く。

 自分達がそれぞれ、選びたい道を自分で選んだからだ。


 一歩ずつ、椿は闘真に近づく。


「闘真」

 

「姫様……」


「無事だったのね……炎は貴方を裁かなかった……」


「生きてるってことは……そういうことなんですか……」


「うん……多分……だけどね……」


 闘真はあちこち焼け焦げた姿だ。

 しかし怪我はむしろ治っている。


「紅夜様は……?」


「紅夜は消滅したの、もう……どこにもいない」


「くっ……」


 悲しさ悔しさを浮かべた顔で下を向く。

 闘真にとっては、紅夜は正義で家族だった。

 ただ、そこに生まれてしまった……存在を強要された存在。


「……闘真、一緒に来る?」


「……姫様……」


 闘真がゆっくりと椿を見た。

 摩美や、ルカ達が白夜団と共に光へ向かっているのはわかる。

 追いかけて皆殺しに……少し前ならそう思っただろう。

 しかし、そんな思いはもう闘真にはなかった。


「いえ、俺は行きません」


「でも……」


「俺は、この世界で……ロッサ達と薔薇を育てて生きていきます」


 闘真の向こう、更に奥の景色。

 崩壊から逃れたと思われる陸があった。

 そこにはまだ、色とりどりの薔薇が咲いている。

 内臓のような触手が蔓延っていた世界は、今は城の瓦礫と土と透明な水で浄化されたような世界になっている。


「薔薇園の無事だったとこがあったんです……ロッサも……あ、この薔薇はロッサです」


 闘真の横で綺麗な水を吸って咲き誇っていた薔薇は、ロッサだった。

 かなり燃えたあとに再生したようで、今は普通の薔薇の樹が湖に生えているように見えるが少し蠢いた。

 ピンク色の可憐な薔薇の花。闘真はそれを一輪摘んだ。


「闘真、此処はどうなるか……わからないんだよ? 崩壊してしまうかもしれない」


「それならそれで運命ですよ。俺は人間とは一緒に暮らしてはいけない。……まだ紅夜様が大事だし……」


 ロッサや薔薇と、此処で永遠の墓守をするつもりなのか。

 それでも危害を加える気がないのならば、それぞれの生き方を否定することはできない。


「……うん、わかった……」


「姫様、これを」


 一輪の薔薇の花。

 ずっと拒絶してきた闘真の薔薇。


 椿はそっと、それを受け取った。


「……うん、ありがとう……」


 椿にもわからない涙が溢れて、でも微笑む。


「すごく、よく似合う。俺の薔薇を添えた姫様の笑顔がやっと見れた」


 闘真も頬を染めて、微笑んだ。


「……姫様、大好き。愛しています……」


 椿はその言葉に答えることはできない。

 

「あと、ごめんなさい……」


「……うん……」


「さようなら、姫様」


 一輪の薔薇を握りしめた。

 棘もない、優しい薔薇の花。


「……闘真……さようなら……」

 

 それが闘真との別れだった。

 椿が涙を拭いながら麗音愛の元へ戻り、振り返るともう彼の姿はなかった。

 

 どうか彼とロッサと薔薇達が、此の世界で暮らしていけますように――。

 そう願った椿の涙が、薔薇の花びら落ちて弾けた。


 椿を待っていた、皆が優しく微笑んだ。


「帰ろう、椿」


「うん」


 光が溢れるゲート、そこに皆で手を伸ばす。

 

 それは輝く、未来――。

 



 

 『白夜団・紅夜殲滅作戦』

 

 五月X日・明朝四時二十三分計画終了

 

 白夜団・作戦突入者総勢十一人


 生存者

 

 咲楽紫千 直美

 咲楽紫千 雄剣

 咲楽紫千 剣一

 咲楽紫千 玲央

 桃純 椿

 加正寺 琴音

 朔 海里

 佐伯ヶ原 亜門

 多田 爽子

 西野 栄太

 西野 摩美


 紅夜会捕虜・三名

 カリン(姓名不明)

 ルカ(姓名不明)

 ヴィクトリア・フォイヒトヴァン


 水環学園校庭からの発生ゲートにより脱出・帰還

 死者〇人

 負傷者七人

 

 消息不明

 絡繰門雪春(元・白夜団所属者)

 

 以上


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― 新着の感想 ―
[良い点] 辛いことも苦しいこともたくさんあったけれど、みんなで力を合わせて選び取った未来。 紅夜がいなくなることで終わった夜の次は、白く輝く光がみんなを導いてくれるのでしょう。 妖魔側も、それぞれ…
[良い点] と、闘真ぁあ〜〜〜!! 生きとったんか〜〜〜!!!( ;∀;)ブワッ なんか初めて椿ちゃんと会話が成り立った気がする 考え方も行動も常識からズレまくっていたけれど、彼はずっとブレずに紅夜…
[良い点] 闘真、初めてちゃんと会話した気がする…… 頭おかしすぎていまいち好きになれなかったけどきれいな別れで良かったです。
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