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色の無い夜に・Colorless Night~最凶妖魔王を倒すため最強呪刀を継承した俺は、魔王に反旗を翻した妖魔姫とじれ恋学園生活しながら妖魔を討つ!  作者: 兎森りんこ
第三部 第二章

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麗音愛の決意


 必死の覚悟で自分の喉に緋那鳥を突き立てた椿。

 だが――。


「麗音愛!?」


 麗音愛が晒首千ノ刀を離し、右手で緋那鳥の刀身を掴んだ。

 緋那鳥の聖なる炎が麗音愛の右手を焼くが離しはしない。


「椿、どういうつもりだ!!」


「わ、私が命を捧げなきゃ……この鍔の封印が解けないの……!」


「命だと……」


 椿が愛月姫の生まれ変わりだと察した紅夜は自らの触手から抜け出そうとしている。

 最終形態に近づいているのだろうズルリズルリと触手から解放され……背中から肉の羽が生えていく……。


「まさか……お前が……まぁいい。はははは!! まさに俺の花嫁にふさわしい!! 穢してやるぞ!! 女神を魂まで穢し貶めてやろう!!」


 残酷な紅夜の笑い声が響く。


「麗音愛……私が生贄にならなきゃ……だめなの」


 椿が涙をこらえて絞り出すような声で言う。

 決めた心が揺らいでしまう。


「そんな事は許さない!!」


「で、でも……きっとこれは麗音愛の前世の白夜様がお決めになったことで……」


「前世の? そんなのは俺の前世が勝手に決めたことだ!! 今の俺には関係ない!!」


「れ、麗音愛!?」


 いつも皆のために考え、自分を後回しにして静かに闘ってきた麗音愛。

 その彼が怒りに燃えた瞳をしている。

 それは恋人への怒りではない。


 例え神だろうが、自分の前世だろうがそんな道理に従う気はない!

 麗音愛の心に燃える炎。


「俺はもう絶対に椿を離さない……!!」


 麗音愛の声とともに呪怨の棘の結界が激しく広がって、紅夜の攻撃も妖魔や触手の攻撃も無効にしている。


「麗音愛……」


「椿は俺が守る! 出逢った時からそう決めたんだ!! あの時みたいに俺を置いて行くことは二度と許さない!!」


 死闘の時に頬ずりされて、一人落ちていった椿の手を握りこぼした、あの悔しさ。

 身体が千切れる痛みよりも辛い、あの思いを麗音愛は一度でも忘れたことはなかった――!!


「麗音愛……」


 強いほとばしる想いを聞いて、椿の瞳から涙が溢れる。

 別れを決めた涙は、愛を感じた涙に変わる。


 剣一が紅夜に対して時間稼ぎしてくれたのが見えた。

 

 麗音愛がまた緋那鳥に触れると、緋那鳥は元のレイピアに戻った。

 椿は緋那鳥を握りしめ同化する。

 腕のなかで話していた椿を麗音愛は更に抱きしめた。

 

「……わかった……?」


「うん……うん、でも……私はどうしたら」


「鍔を渡して」

 

 椿がそっと小さな白い鍔を麗音愛に渡す。

 

「でも……これだけじゃダメなの……」


「椿の命を踏み台になんて俺は絶対に、しない」


「麗音愛」


「大丈夫だよ、椿。椿は椿だよ。これからもずっと一緒に生きるんだ――」


 また椿の瞳から涙が溢れて、頬に麗音愛が口づけた。

 もう時間はない――!

 

「俺を信じて待っていてくれ!」


「はい……!!」


 紅夜の攻撃に耐えかねた呪怨の結界が一斉に砕けて、上空の二人へ攻撃が迫る。


「兄さんーーーーーーーーーーーー!!」


「おうよ!!」


 紅夜の攻撃を避けながら椿を抱き上げ翻った麗音愛。

 砕けた呪怨に、妖魔の死骸、剣一の雷撃に、椿の涙が舞う。


 麗音愛は剣一へ向けて、椿を優しく放り投げた。

 

「きゃっ……」


「ほい、お姫様」

 

 結界を足がかりにして狙ったように剣一が椿をキャッチする。


「けっ剣一さん」 


「兄さん!! 絶対守れよ!!」


「当然だろーが!! 俺は椿ちゃんの眷属なんだぜ?」


 椿にとって気がかりだった剣一の安否。

 優しく力強く、剣一は笑う。

 

「椿ちゃん。絶対守るから、俺達と生きてくれな」


「剣一さん……私……」


 死に逃げるつもりではなかった。

 沢山の大切な人のために命を賭けるつもりだった。

 そんな彼女の健気さを、麗音愛も剣一も知っている。

 だからこそ剣一も伝えた。

 

「大丈夫、玲央を信じよう!! さぁ心臓を貫かれても不死身にしたのはお前だぜ紅夜!! 何があっても姫も世界も守り抜く!!」


 剣一の青い炎が勢いを増して輝き、二人を狙う触手を妖魔を焼き尽くす。

 麗音愛は椿と剣一を背に守るように紅夜と対峙した。


「寵が愛月……そしてお前はまさか……あいつの生まれ変わりだと……?」


「さぁな! 俺にはわからない! ただ、今此処でお前を倒すだけだ……!」


 混じり合う刀。

 紅夜が刀を振るう度に、紅い海が裂ける衝撃だ。


「無能な人間よ。神のことわりを知らぬ、世のことわりも知らぬ、愛月の使命も絶ち、無惨な死を選ぶか……」


「俺は椿の使命を絶ったりはしない……俺が俺にできることをすると言ったまでだ!! 誰一人犠牲になどしない!!」


「ならば無力のまま死ぬがいい、我が息子よ、朽ちていけ……!」

 

 触手を切り離した紅夜は重力など思いのまま、呪怨の羽で飛ぶ麗音愛よりも早い!!

 それでも椿の無事を確保した今、麗音愛も激しく応戦する。


「息子よ! お前はただの、成り下がったゴミだ。中途半端な絶望の亡者達と同じ!! これからは俺の世界だ! 人間など全て喰らい尽くして美しく穢れだけの世界にするのだ……!!」


「黙れ!!」


「すぐに揺れ動き、裏切り、恨み、妬み、不安定で中途半端なゴミ……全て排除して俺が娘と新世界を創ろう……!!」


 宙を舞っている麗音愛に、紅夜が手から最大限のエネルギー弾を放つ。

 今までの何十倍もの巨大さだ。

 麗音愛の後ろ一直線上に仲間がいる。

 それを計算していることなどわかっていた。

 麗音愛が避ければ、仲間が全滅する。


「うぉおおおおおおおお!!」

 

 麗音愛は真正面から受け止めた。

 学園死闘の際に受けた雷撃など比にならない。

 紅夜も蘇り、ずっと力を蓄えてきたのだ。

 圧倒的な破壊力!

 麗音愛のマントも団服も黒焦げになっていく。

 刀を持った指先が黒焦げに、踏み込んだ右足が黒焦げに……。

 

「ぐふ……っ!」


 ボロボロの刀、晒首千ノ刀。

 呪怨の血を吐くような悲鳴で晒首千ノ刀が焦げていく。

 しかし、ここで死に墜ちるわけにはいかない――!!


「麗音愛ーーーー!!」


 愛する人の声が聞こえる!

 椿も、篝の声も。


「玲央ーーーーー!!」


 みんなの声が聞こえる!

 家族の声も、人間界で残って闘っているみんなの声も!!


 全部背負っているんだ!!


「うぉおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 凄まじい攻撃を麗音愛は消滅させた。

 だが、もう身体は半分炭になっている。

 紅夜は楽しそうに笑った。


 激しい痛み、それでも何度でも立ち上がってきた。

 神であろうと、人であろうと。

 大事なものを守るために……愛する人と仲間と共に……。

 

「あぁ……そうだ……俺は、こうやって闘ってきたんだな……ずっと」

 

 じわりじわりと蘇る……想い。

 麗音愛も微笑んだ。


「笑った……だと? 気でも触れたか、いや……お前は最初から狂った男だったな。長く楽しませてもらったよ……慈悲として、次でとどめを刺してやろう」

 

「いいや……」


 椿から受け取った小さな白い鍔。

 包んだ左手の中でまた淡く輝いている。


「愛月の使命をった今、それはもうガラクタだ」


「そんなわけないだろう……繋いでくれた想いも此の力も……絶対に無駄にはしない!!」


 麗音愛が左手を天に、手を掲げる。

 

「俺はもう二度と転生などしなくてもいい!! 俺の魂の全てを使え!! 今こそ全ての魂を此処で解放させる――!!」


「呪われ、地に堕ちた闇の男が何をするつもりだ!!」

 

 麗音愛の左手が爆発したような強烈な光を放った。

 世界の何かが当てはまったように、薄暗い不気味な紅い夜に朝陽が昇るような光が溢れる。


「晒首千ノ刀よ!! 真の姿に、還れ!!」


 白い鍔が、晒首千ノ刀と同化した。

 世界は白に包まれる――!

 

 

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― 新着の感想 ―
[一言] 最新話追いついた! 雪春さんはあれはあれでヤバイけど良い気がしてきた! ここに来るまでに色んな敵と戦って、仲間になったりと長い時間を経て読んできたからなんとも感慨深いです(*´ェ`*) 琴…
[良い点] 椿ちゃんが自害することにならなくてよかった(ノД`) 麗音愛くんはほんとに椿ちゃんを大事に思ってるんだねえ…… 剣一さんは相変わらずかっこよくてあの……ほんとありがとうございます(?) …
[良い点] 私達は真面目でつい、運命とか宿命だからという理由で犠牲になるのが当たり前と思いがちですが、よくよく考えたらそんなもん知らんよね  おーー!!どうなるどうなる??まだ終わらんといてー!!
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