共鳴する力!!
触手に絡みつかれ紅夜の元へ拐われる椿の叫び声が紅い空に響く。
少女の泣き叫ぶ声が、世界の終わりを告げるように穢れた紅い海にも響き渡る。
「いやぁ! やめて! 離して!!」
椿が桃色の炎で燃やしても、次から次へと触手が更に身体を縛りつける。
緋那鳥を持つ手も拘束され、紅の海へ落ちる前に椿の中へと同化した。
呪怨の翼で全力で飛び、手を伸ばす麗音愛からも離されていく。
「椿ーーーーーーー!!」
「……麗音愛っ……!!」
やっと出会え、愛する人と抱きしめあってからの絶望。
戦い続けた疲労もあり、締め付けられる痛みで椿は気を失いそうになる。
それでも触手へ、紅夜への拒絶を続けた。
「椿から離れろ!!」
麗音愛も自分の炎を椿を縛る触手に向ける。
二人の炎は、混ざり合い、燃えながらも触手の勢いには追いつかない。
「きゃあ! 麗音愛ーーー!! 麗音愛っっ! いやぁ! 麗音愛っ」
「椿を離せ!!」
麗音愛の斬撃も炎をくらっても触手は増殖し続ける。
「あはははは……! 俺の紅い夜が来た。全ての命は俺と同化しろ……! 弱き者達よ……それがお前たちの幸福だ……」
妖魔化した人間を吸収し、強く増殖していく触手が絡みつき巨大化していく紅夜が笑う。
まだ数キロ離れているのに、膨れ上がっていく覇気だけで更に巨大に見える。
紅い月、血の海。
凄まじい力を解き放ち、吸収して肥大していく力。
「お前達を消し去った後は、あちらの世界に降りて全ての人間を喰ってやろう。それが真の素晴らしき統一された新世界だ……はははははははは」
「ふざけたことを言うな!」
「あーはっはっは! お前が我が息子だとはな……!! 今ならはっきりと顔が見えるぞ!」
「お前の息子なんかじゃない! 俺は父さんと母さんの息子で、そして篝さんの息子……!! それ以外はない! 椿も同じだ!!」
「いいや、お前は我が息子だ……思う存分に可愛がってやるぞ……俺と娘の祝言を血と臓物で祝え……! 俺と娘が一つになるのを見るがいい……!!」
「ふざけるなぁあああ!!」
「ははははっはは!! 全てを紅く絶望へ染めあげろ!!」
その声から発生したオーラに飛ぶ麗音愛は煽られる。
そして更に倒した凶悪で知恵をもつ妖魔、失奪殺の三匹も現れた。
「僕ト「私ト「俺と遊ボうゼェエエエエエーーーー!!」」」
「うるさい!! 邪魔だあぁああ!!」
獰猛な三匹が舞い上がり牙と爪で襲いかかる――!!
仕方なく麗音愛は一度、紅い海へと降り立った。
喰われることはないが、その間にも椿との距離が離れていく。
焦る心。
その時――。
「天啓式聖雷法……激!」
激しい稲光と凄まじい雷撃が三匹を貫いた。
輝く聖なる力……!
「兄さん!」
弟の声に頷いた兄。
「玲央、俺がサポートする! お前は椿ちゃんを守り、紅夜を倒せ!」
剣一は結界を駆使しながら、飛ぶようにして上空を舞う三匹に攻撃を加える。
白いマントが翻り、紫に輝く綺羅紫乃が強い光を放つ。
「俺達、三匹ヲお前一人ガどうにかできると思っッテンノカァアアアアアアアア!!」
殺が叫び、他の二匹も咆哮した。
「当たり前だろう、俺を誰だと思ってるんだよ。白夜団特務部長の咲楽紫千剣一様だぜ……?」
剣一は怯むことなく、不敵な笑みを浮かべて綺羅紫乃を構えた。
周りに味方がいない今こそ、彼の本領が発揮される。
「兄さん頼むっ!」
兄になら任せられる。
剣一の戦いをすり抜け、麗音愛はまた椿を追うため飛び立たとうとするが更に増えた触手が襲いかかった。
「玲央先輩ーーー!!」
「加正寺さん!?」
血の海を走る一人の少女。
「先輩の邪魔をするものは全て死ね……!!」
琴音が骨研丸を、遠方から投げ麗音愛に喰いかかろうとした巨大な触手を粉砕する。
その顔は麗音愛を見て喜びに満ち、黄蝶露で更に妖魔を斬り落とす。
「俺を援護する必要はないよ!」
「玲央先輩! 世界のために私も先輩を援護したいんです!」
椿を助けるためとは、絶対に言わない。
「此処は危険だ! いくら君でも……! 避難してくれ!」
「いいえ! 玲央先輩が傍にいるのなら、私はいくらだって強くなれるんです! ほら先輩から力が流れるのを感じるんです! あの妖魔王を殺すための力が……!」
「俺から……? 明橙夜明集を伝わって……」
琴音の言うとおりだった。
麗音愛の晒首千ノ刀も悲鳴のように唸り声のように、強い力を発揮するのを感じる。
自分が紅夜を倒したい想いと同調しているようだった。
眼の前に映る、触手に奪われ無惨に吊るされた愛しい人。
更に爆発する、紅夜への殺意。
世界を、愛する者を、賭けて戦うために生まれし武器――。
明橙夜明集。
晒首千ノ刀が唸り、呪怨が爆発的に増える。
そして、麗音愛が吠えた。
「黄蝶露、骨研丸。お前たちの主を守れ――! 明橙夜明集……お前たちの力を最大限発揮する時がきた……!! 紅夜を倒す……!!」
白い稲妻が激しく紅い海に落ちる。
麗音愛にもわからない、ただ自然に明橙夜明集に命じ明橙夜明集が応えた。
「玲央先輩!! すごい力が……!! やっぱり先輩は私の神様です……!!」
琴音は自由自在と言わんばかりに、二刀流のサーベルで触手を切り払う。
黄蝶露から発生した霧は、毒の鱗粉のように舞い琴音を守る結界になった。
「玲央……お前はやっぱり……!」
剣一の綺羅紫乃も力を増す。
人間世界の美子の槍鏡翠湖も、全ての明橙夜明集が力を増幅させていく!!




