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色の無い夜に・Colorless Night~最凶妖魔王を倒すため最強呪刀を継承した俺は、魔王に反旗を翻した妖魔姫とじれ恋学園生活しながら妖魔を討つ!  作者: 兎森りんこ
第三部 第二章

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寒気の終わり


 雪春は二人の攻撃を躱し、利用しながらも奪にダメージを与えている。

 琴音には一切手出しをしない。

 それでも琴音の斬撃は届かないのだ。


「くっ……これも避けるだなんて……っ」


 二人の荒ぶる令嬢を受け流す執事のように雪春は身を翻す。

 奪は狭い結界の中で暴れるように動いているが、彼女の身は溶けて傷を負っていく。


 それでも奪の勢いは止まらない。


「謀反者メェエ!」

 

「あんたもいい加減うるさいわね……!! そろそろ死になさいよっ!」


 琴音は奪にも攻撃を仕掛ける。


「貴女もうるさい……人間ですネ……!!」


 奪もまた苛立ちを見せ、琴音にビーム攻撃を口から放った。

 琴音はそれを瞬時に避ける。


 しかし、気持ちが悪い。

 この結界の中……。


 あの時のように、決められた舞台のようだ。


 台本通りに踊らされているような不気味さ。


 琴音は、自分に術がかけられていないか、何度も確認している。

 あの時のように、操られはしていないか、と確認をしながら戦っている。


 自分が操られているわけではない、でも違和感が消えない……。


「あの術を、知っている者にはもう効きません」


「!」


 何度目かの斬り合いで、琴音は奪の異変に気付く。


「アアアアア……アアアアアアアアアア……これは……これは……?」


 いつの間にか、あの日の桜吹雪が降っている。

 これこそ、まさに……あの術だ!


「絡繰門雪春……貴様は……何者なの……?」


 穢れた者を見る目で琴音が問う。


「貴女が言った通り、絡繰門家長子の雪春です……さぁ、奪……結界を今から解くので外の妖魔を片付けてください」


「ナ……なんですって……?」


 巨大な奪の動きが、止まる。

 抵抗しようとしているのが琴音にはわかった。


「まさか、あんな妖魔まで操るの……?」

 

「知能がありますからね、可能です」


 雪春はあっさりと言う。

 発動条件はあるのだろうが、奪には当てはまったようだ。


「グ……私が……そんな……謀反行為を……」


 結界が解かれて、更に集まった妖魔が一斉に雪春と琴音に襲いかかる。


「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


 抵抗をしようとしても無駄。それは琴音が知っている。

 奪は雄叫びをあげると、牙を爪を妖魔に向けて振りかざす。


 妖魔の群れが一瞬で肉塊になり飛び散る。

 

 妖魔の体液、血が、飛散し奪の抵抗の叫びが響く。


 やめろ、とは言わない。

 敵の妖魔が減るのは良い事だ。

 しかし琴音にとってはなんとも不快な惨劇ショーだった。


「……そこへ(ひざまづ)きなさい……」


 全ての妖魔を切り刻み、燃やし、殺し尽くした奪に雪春は言った。

 寒気が走る。

 そんな命令も可能だったのかと、琴音は戦慄したのだ。


 抵抗がバキバキと身体の震えになっている奪。

 しかし抵抗も虚しいものだ。従って羽根を閉じ跪き頭を垂れる。

 

「ご苦労さまでした奪」


「……そ、んな……父……さま……」

 

 明橙夜明集・雪春が振り落とされる。

 爽やかな風が吹くが、琴音は吐き気がする思いだ。


 巨大な奪の頭が胴体と切り離され、床に音を立てて落ちた。

 

 少しだけ、雪春の身体が揺れる。

 この術にもリスクはあるはずだ。身体への負荷は相当にあるだろう。


 琴音の身体は直感的に動いた。

 殺意が無意識に動く。


 この男を殺す――自然な動作。

 でもそれは失敗だと悟る。この男がこんな一撃を受け流せないわけがない。

 

 しかし、届くはずはないと思った琴音の骨研丸が雪春を貫いた――!

 

 雪春の背中から突き刺さり、腹部から血が吹き出る。

 

「何故……!?」


 叫んだのは琴音だ。

 口からも雪春は血を流したが、叫びも呻きもせずに刀を抜いて捨てた。

 

「……さぁ……懺悔かもしれませんね……」


「ふざけるな……っ!」


 振り返って、口から血を流し微笑んだ姿に琴音は寒気がした。

 誰よりも冷静で清廉そうで、誰よりも狂っている。


「でも僕にはまだ行くべき場所があります。なので此処では死ねません。貴女と同じ行き先がある……」


「私の行く先は玲央先輩の行く先……紅夜の元……」


「その通りです……それでは……」

 

 雪春は『また、会いましょう』とも『さようなら』とも言わなかった。

 彼の長い髪が揺れる。


「あっ……」


 妖魔と奪の死体が敷き詰められたような肉の廊下に、また花吹雪が散った。

 次の瞬間には、もう雪春の姿はない――。


 不快なざらついた気持ちだけが、ただただ残る。


「……気持ちの悪い男……」


 血のついた骨研丸を拾い、琴音もまた麗音愛を求めて歩き出す。


 そこから離れた場所で怒り狂うように荒れた、三匹目の最悪の妖魔が海里と摩美に襲いかかろうとしていた――。





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― 新着の感想 ―
[良い点] 謎多き男雪春‥おいどんの中のイメージは野村萬斎氏(・∀・)
[良い点] 雪春、やろうと思えばあの時に琴音を始末できたってことか 奪もかなりの強敵だったというのに恐ろしい術だ 琴音の怒りをその身に受けたりと、一応以前のことは悪いと思ってはいるようだけど、後悔はし…
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