佐伯ヶ原VSルカ~恋連花……!!~
佐伯ヶ原の継承同化の叫び!
眩い光が炸裂し、ルカは目を開くことができない。
「この場で継承同化しただと……!?」
「……俺はできなかったわけじゃない、していなかっただけだ……」
雷のように炸裂する力。
人間と偉大なる力……聖流と邪流が絡み合った瞬間に反発するかのような激しい力を感じる。
立っていられない程の風圧だ。
「まさか! ハッタリだ! 儀式もなしで……!」
佐伯ヶ原も白夜団の継承同化の儀式は知っている。
念入りな訓練に祭壇。
準備が必要なはずだ。
「俺は才能があるからな。そんな道理は吹っ飛ばす」
それを一言でひっくり返す佐伯ヶ原。
ルカは言い返したかったが、何も言えない。
まだ光と風は落ち着かない。
「こんな面倒事に介入する気はなかったんだが……そろそろ絵のモデルを返してもらうぜ!」
光が消えたと同時に、佐伯ヶ原の気迫が何倍にも膨れ上がる。
「ふん! お、お前なんかに! 短刀なんかに負けるか!」
迫りくる殺意に、ルカは腰の剣を抜いた。
リーチはルカの片手剣の方が長い!
相手は雑魚の非戦闘員だ!
そう思って見えにくい目のままに剣を振り回す。
「ぐあっ!?」
しかし、ルカの肩から血が吹き出る。
「だ~れが短刀だよ……ちゃんと見ろ」
「なに……」
短刀のはずだった明橙夜明集・恋蓮花は形状を変えてまるで鞭のようだ。
日本刀の柄から、しなやかに長く伸び淡い桃色の光を放っている。
「鞭……?」
意志を持っているように、妖精のように鞭。
「恋連花は同化し、力を発揮する時に花開く……」
鞭の先から身体部分から、花が咲き誇りすぐに散って花びらが舞う。
可憐な、淡い恋心のように……。
――連なる想い、恋連花――
闘真のロッサとは全く違う、すぐに溶けてしまう雪の花のようだった。
「ふざけんな! お前達いけ!」
佐伯ヶ原の後ろから、直美達を追いきれなかった何匹かの妖魔が襲いかかった。
が、佐伯ヶ原が刀の柄を振り下ろすと恋連花がしなり妖魔の顔部分を軒並み叩き落とす。
妖魔の体液と共に舞う光の花びら。
「今更、雑魚妖魔に用はないぜ……?」
「ふぅん……そ、そうか……鞭かい……」
ルカが腰に手をやると、ベルトと沿うように装備してあった鞭を持つ。
パアン! と炸裂音のような音がした。
「僕も結構な鞭使いなんだよ……妖魔の統制によく使うからね……」
「そうかよっ……!」
話をする気もないと、佐伯ヶ原は鞭をしならせるが身の軽いルカはそれを簡単に避け肉壁を走りながら佐伯ヶ原に攻撃を仕掛けた。
佐伯ヶ原は同化によって身体能力も少し上がったが、ルカの素早さや移動能力には敵わない。
ルカの攻撃を佐伯ヶ原も避けたが、肉の床は鞭によって激しくえぐられる。
人間の身体に受ければ致命傷になるだろう。
「あははっ! ひゅっ!!」
壁や天井の方にまで走り回り、ルカは攻撃を仕掛けてくる。
佐伯ヶ原は恋蓮花で弾き返す。
前から後ろから横から、佐伯ヶ原を中心にしてルカからの激しい鞭攻撃が繰り広げられた。
「キャハ! なんだよなんだよっ!? お前結局、防戦一方で動けやしないじゃないか!!」
あざ笑うルカに、佐伯ヶ原は何も言わない。
それでも狂いもなくルカの攻撃を恋連花で弾き返す技術は相当なものだ。
「くそっ! ……ふん、じゃあこれはどうかなっ!?」
鞭の乱れ撃ちが佐伯ヶ原を襲う!
「ぐっ!」
全て薙ぎ払ったかと思ったが、佐伯ヶ原の右腕に小さなナイフが突き刺さっていた。
鋭い痛みと深く奥へ奥へとナイフが食い込んでいく。
「僕がずっとお前の手を大事にしてやると思ったら大間違いだよ!? ほら! 手を動かしたら筋がもっともっと傷んでいくぞ! 特別なナイフだ! ははは!」
その言葉を聞いても、佐伯ヶ原はナイフを抜かないまま更に右手で恋連花を操り鞭での攻防は続く。
「ねぇ! もう二度と筆が握れないかもしれないよぉ!? あははは!!」
ルカの笑い声が響く。
佐伯ヶ原の右腕からは血が滴る。
周りにはもう一匹も妖魔は残っていない。
佐伯ヶ原に近づいた妖魔はすぐに鞭で粉砕された。
「攻撃をやめてくださいって言えよ! 絵が描きたいから助けてくれって命乞いしろよぉおおおお!」
「……うるさい餓鬼だ……」
このまま佐伯ヶ原が攻撃を続けても、腕へのダメージが広がり今に力尽きるだろう。
勝利を確信したルカは笑いながら、佐伯ヶ原からの攻撃を避ける。
佐伯ヶ原は脂汗を流しながら痛みと貧血でフラフラになるだろう。
「ひゃひゃひゃっ……!!」
このクソ天才画家はどんな顔をして死んでいくのかと、覗き込むように飛び跳ねると目の前に撓る恋連花の打撃が突如現れた。
「へっ……?」
まさか自分の動きを予想するとは思っていなかったルカは肩から胸にかけて切り裂かれ、思い切り地面に叩きつけられる。
「ぶはっ!!」
ゴロゴロと転がるルカ。
意識と痛みが追いつかない。
「ううっ!? な、なぜ……!?」
倒れうごめくルカの鞭と剣を佐伯ヶ原は放り投げ、見下ろした。
「……お前の行動パターンなんか、何度か見てりゃすぐ把握できる……俺の表情を見るために、ちょこまか動きながらも結果同じだ。つまりお前の行動範囲のカンバスができる……」
「な……」
「カンバスがあるなら、後はどこに上手く絵の具を乗せればいいか。それだけだ……」
冷めた目で見下ろした佐伯ヶ原。
「くぅ……ぐはぁ……っ」
そのまま佐伯ヶ原が恋連花を振り下ろした時、ルカは死を覚悟した。
が、恋連花で拘束したまま結束バンドで後ろ手で両手を縛られた。
「な、なんのつもりだ……! な、情けなんか!」
「うるせーよ大人しくしてろ……」
その後でキュッと恋連花がルカを締めた。
「うう……っ……な、にを……」
「餓鬼を殺すのは目覚めが悪い……気絶させるだけだ。寝ておけ」
ルカは白目を剥いて、そのまま眠るように気絶する。
少々手荒だが、今は仕方がない。
佐伯ヶ原は静かになった廊下で、右腕に刺さったナイフを引き抜いた。
止血処理をして、グルグルとテーピングで右手に恋連花を固定する。
「……ふん……」
痺れる右手。
佐伯ヶ原はそのまま、肉壁の廊下を一人歩き出した。




