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色の無い夜に・Colorless Night~最凶妖魔王を倒すため最強呪刀を継承した俺は、魔王に反旗を翻した妖魔姫とじれ恋学園生活しながら妖魔を討つ!  作者: 兎森りんこ
第三部 第二章

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海里の死地恋語り


 紅夜城で海里は摩美を助け、白夜団が突入した事を告げる。

 海里は摩美の怪我の心配をしたが、動ける体力は残っているようだ。

 

「君の恋人も来ているよ」


「えっ? まさか……そんなわけない。あの人、何もできないんだから」


「いや、君を助けるって参加したよ。恋人って西野君だよね?」


「え!? 本当に!? バッ馬鹿なの!? あいつ、何を考えて!?」


 摩美は驚愕とともに青ざめるようにして慌てだす。

 素人の一般人がこんな場所に来れば、すぐに死んでしまうと思ったのだろう。


「彼は玲央君と一緒にいると思うから、とりあえず大丈夫だよ」


 『とりあえず』なのは自分達も一緒だ。

 片道切符なのかもしれない、と皆の前では顔に出さなかったが海里はその可能性ももちろんあると思っている。


「咲楽紫千と……それなら良かった……。 じゃあ早く私達は、姫様を……椿ちゃんを探さないと!」


「椿さんと一緒だったの!? 椿さんは今どこに!?」


「一緒にいたけど、闘真に連れて行かれて……」


 闘真といえば、紅夜会でも要注意人物の狂犬。

 咲楽紫千雄剣の腕を斬り落とした男だ。


「そんな男に……!! 椿さんを早く助けに! どこへ行ったかわかるなら教えてくれ!」


 海里の真剣な表情を見て、摩美は少し目を丸くして微笑んだ。

 そしてコーディネーターでの闘いで手から落とされた布の縄を手に取る。

 また瞬時に縄は剣のように硬化した。


「あんた、姫様が好きなんだね」


「えっ」


「わざわざ、七当主なのにどうして来たんだろう? って思ったけど姫様のため?」


「いや……あぁ……うん、そうですよ」


 嘘をついても仕方ないと、海里は正直に答える。

 

「……恋って、すごいよね」


 廊下は変化しているが、とりあえず闘真に拘束された場所へ戻ろうと摩美は歩き始める。


「もう結果はわかってるんだ。君達のように結ばれることはないよ……」


「……まぁ、そうかもしれないけれど。じゃあどうしてわざわざこんな死ぬかもしれない戦地に来たの?」


 鈍感どころか、人の気持ちには人一倍気付きのいい海里だった。

 そんな彼が、椿の心を麗音愛から自分に動かせるなど思うはずもない。


「……想い人を今救いに行かずにして僕はこれからどう生きていけばいいのかと……そう思ったんだ。逃げたらきっとこれから自分の中の愛も、誰かからの愛も信じることができなくなるって……思ったから志願した」


 こんな場所で初めて話す少女に何を語っているのかと海里は思うが、いつ死ぬかわからない状況が語らせているのかと思う。


「誰かあんたを待ってる人がいるの?」


「えっ……? 君って勘がいいんだね」


 驚く海里に摩美は笑う。


「自分の事以外はね。私も自分の事は全然わかんなくて本当に馬鹿だったから」

 

 摩美が白夜団に入る事になった状況は海里も知っていた。

 まるで恋愛小説だ、と一緒に報告書を読んでいた月太狼に言ったのを覚えてる。

 この少女は確かに、西野という少年の愛によって救われたのだ。


「……僕も、やっと気付いた事が色々あるよ」


「待ってる人のことで?」


「うん。その子は婚約者なんだけどさ、小さい頃からの幼馴染で……年下の女の子」

 

「へぇー金持ちのお坊ちゃまっぽいね」


 こんな皮肉は海里は慣れっこなので、今更どうとも思わない。 


「僕は兄弟の中では一番どうでもいい存在だから政略結婚的なね。でも彼女はずっと僕と結婚する事を信じて疑わない……僕しか見ない……馬鹿な女の子なんだよ」


「あんた優しそうな顔してるのに、随分中身はひねくれてるんだ」


「はは……だって幼稚園児の頃から僕の後を着いてきて好きだ好きだと玩具みたいに繰り返して……僕は冷めた目で見てたよ。恋も愛もどうでもよかったから」


 いつも温和な海里の本心を摩美は何も言わずに聞いた。


 今のところ廊下に妖魔はいない。

 海里が斬り落とした妖魔が目についた。

 道は四方向に分かれている。

 摩美にも正確な方向はもうわからないが、できるだけ状況を思い起こして道を決めた。


「……そんなんだったのに姫様を好きになったしまったの?」

 

 摩美がたまに姫様と言うことに気付いていたが、海里は何も言わない。

 むしろ姫様が相応しいような気すらする。


「うん、あんなに自分を犠牲にしながら皆を癒やし戦う人はいないって……思った」


 海里が椿と出逢ったのは、大晦日の大晦日結界復旧作戦だ。

 あの作戦を成功させた後にも椿は紫の炎で皆の治療にまわった。

 海里の友人の命を救ってくれた時、誰よりも疲弊しているはずなのに優しく微笑む聖女。


 海里にとっては初めての恐ろしい妖魔との実戦。

 必死に闘いながら、生贄のように白夜団の当主にされた虚しさを感じた。

 死んでしまってもいい存在なんだと強く思った。


 でも自分の境遇の何倍も辛いはずの少女が、罰姫と言われた彼女が疲れを隠して微笑みながら皆を癒やしている……。

 その姿に惹かれたのだ。


「姫様って……優しくて強くて綺麗だよね」


「うん。でも普段は健気で可愛らしくて、ね。あんなギャップがある人もそうはいないよ……僕は人生でこんなに誰かを想った事はないってくらい好きになってしまった」


 境遇を考えれば、恨みつらみの人格になっていてもおかしくないのに。

 海里のなかにも、はっきり自覚できる歪みが椿にはなかった。

 

 業を背負っていても、可憐な少女の行いをいつも見つめてしまう。


 だから琴音が魅了の呪いだと言った時は、正直そうかもしれないと思った面もあったのだ。


「告白したの?」


「……まさか。椿さんには玲央君がいる。あの二人の絆の間に入り込めるわけもない……だから余計に無邪気に好きを繰り返す幼馴染がうっとおしくなった。婚約破棄の話もしたよ」


「……あんたひどいわね」


「親の言いなりで『朔海里』が欲しいだけなんだと思ってたし……でも」


「でも?」


「僕が椿さんを助けたくて突入班に参加するっていう事を告げたら、意外な面が見れて……彼女の方から婚約破棄するって言われたよ」


「いい気味」


 遠慮もなしに摩美は笑う。


「うん、だから僕も自分の気持ちに素直になって、此処で雑魚なりにも椿さんの役に立ちたいと思う」


「それって死亡フラグじゃない?」


「そうかな……そうかもね」


 誰にもするつもりがなかった話を、まさか元紅夜会の少女にするとは……。

 改めて運命の皮肉や面白さを海里は直に感じる。

 それでも、なんだかいい気分に思えた。


 これが死地かと……改めて思う。


「多分、その彼女はまだあなたが好きできっと待ってるんでしょ」


「うん、僕もそうだと思ってる」


 椿が麗音愛と再び出逢い、紅夜を倒して幸せになる……。

 そんな未来をこの目で見届けたら、自分も幼馴染と向き合える気がした。

 婚約破棄を告げられた時に、気付かなかった感情にも気付いたから。


「じゃあ生きて帰らないとね」


「……そうなんだよね。椿さんも、君もみんなね……」


「うん、まずは姫様を探そう」


「西野君じゃなくていいの?」


「あいつは咲楽紫千にお任せ! まぁなんとか生き延びるでしょ」


 西野が嫁だと言ってるのを聞いた事があったが、この二人の絆も海里は感じる。


「愛する人と結ばれるってさ、奇跡だよね」


 こうも愛する二人の絆なんかを連続で見せられると、少しため息が出た。


「……鬱憤は、戦闘で晴らしてくれる?」


 二人の声を聞きつけたのか、廊下の先に無数の妖魔が現れたのが見える。


「そうだね、闇落ちしないようにストレス発散するさ!」


 刀を構えた海里は、摩美より先に妖魔に向かって走っていった!


 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 前回の更新見逃してた?! 摩美ちゃん、冷静でメンタルしっかりしてて好感度高い! みんな純粋だからこそ紅夜に洗脳されちゃったんだろうなぁ…サイコパス闘真しかり。 西野は麗音愛が守ってくれるさ…
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