剣一&爽子VSカリン~剣一絶対殺すモード~
「うおおおお! 落ちるぞぉ! 助けてフェロモーーーン!」
「そろそろ俺の名前みたいに言うのやめなさい!」
ギャッギャ叫ぶ爽子を抱きながら、麗音愛が生み出した紫の炎をまとい落下する剣一。
自分でも着陸時に青い炎を足元にまとって、怪我一つなく着地した。
剣一の白いマントが翻る。
「……なんだここは……」
麗音愛と同じく、迷路になった紅夜城に突っ込んだ剣一達。
天井はすぐに塞がれてしまった。
「うわぁ! なんだこれは! 妖魔の肉か!? おおおおおほっ! これは良い資料だ~~!」
お姫様抱っこされていた爽子は剣一の腕からすぐに降りると、胸元に専用ベルトで持ってきた試験管を一つ取り出し、内臓のような床をピンセットでほじくりだしている。
「まったく……敵の本拠地だぞ」
「わかっているが……カガク者のサガ!」
「いや、科学者じゃないだろ」
「いひひ、魔術の化け学さ!」
剣一は新しく支給された携帯電話を見るが、もちろん電波などない。
暗い広々とした内臓の廊下。
どこかで体液が排出されたような水音。
そして響く、鼓動のような音。
剣一は自分で把握できた城の地図を皆に渡していたのだが、もうあれは全く役に立たない事を悟る。
「爽子、みんなの位置の把握は無理か?」
爽子はヘッドフォンを頭に着けて、目を瞑りながら何か機器をいじっている。
「無理っすね。いろんなノイズが走ってて、まず此処の場所がどこかわからないっすから……」
「まぁ、そうだよな」
剣一が白手袋をした指を形の良い顎にあて数秒、考える。
「よし、考えていても仕方ないな、行くぞ。妖魔の先に椿ちゃんも紅夜もいるはずだ」
薄明かりの中を剣一が、赤い炎を浮かび上がらせる。
心のどこかで僅かに感じる椿の波動。
しかしこの空間は遮断作用もあるのか、場所まではわからない。
「もう、あんたも普通の人間じゃないんすね……椿ちゃんのキメラ眷属……ううむ……キメラ剣一~キメケン」
「遠慮がないねぇ、いいけどさ」
「可能なら輸血してほしい! 私もファイヤー! したい! キメりたい!!」
「いや、怖い事言うのやめて?」
そんな爽子にとっては本気の、冗談を言えたのも数分。
二人を襲う妖魔の気配が群れになって迫りくるのが見えた。
「来たか」
「想像通りさフェロモン。さてと……それでは」
「呼び名統一しろよ」
爽子はまるで丑の刻参りのように、頭に鉄輪をかぶりロウソクの代わりに青炎結晶をぶっ刺す。
そして手足、胸腹、背中、などには既にセットされているようだった。
広い避難場所にも通用する倍の量を小柄な女子が背負っているのだ。
「私は此処で資料を調査・採取するので、後は頼んだぞ」
「はぁ~……まったく」
「……しっかりせいよ、特務部長! 我を守り給え!!」
爽子がデカいリュックを置いた場所に、剣一は更に青い炎を発生させて円で囲んだ。
「はいはい、じゃあ急いで皆と合流したいからそこから出ないで待っててくれよな!」
「は~い、ビデオテイクわ~ん。皆さんこんにちは愛天使レモンシャワラン……ただいま紅夜城にいま~す! 特務部長ことキメケンのバトル開始! シャワランは楽しく妖魔城採取します」
綺羅紫乃を具現化させた剣一に一つカメラを固定し、爽子は手元のビデオカメラを回しながら紅夜城の床と壁を採取し始める。
◇◇◇
「全然、着かないよぉ~お腹すいた……わぁ!?」
まだ歩き続けるカリンだが、城に響く爆発音で立っていられずに転んでしまった。
「なに? ……一、二、三、四……攻撃……? 近いとこにも落ちた……」
カリンは自分の周りに結界を張り巡らせる。
「まさか……剣一……なの……?」
少し考え走り出すカリン。
しかし、それを後ろから追ってきた巨大な妖魔が行く手を阻んだ。
「なっなに!? きゃあ」
後ろにひっくり返りそうになったのをなんとか耐えたが、目の前にいる真っ黒な悪魔のような妖魔にカリンは驚く。
「だっ誰……」
「カリン……か……」
紅夜の生み出した最凶の妖魔三匹。その一匹の失だ。
失の顔に瞳はないが、頭部から放たれる電磁波のようなものがカリンの脳内にも響く。
「うう……! あなた……紅夜様の……?」
紅夜会の子供同士の通じ合い……。
「そうだよ……ボクの名前は失……パパのこども……メイレイ……殺しにイクよ」
「白夜団を……咲楽紫千を……?」
「そうだよ……み~んな……コロソウ」
沢山の牙を揺らして、ギャッギャと失は笑ったようだった。
「……だれを……」
「カリンを……イジメるやつヲ……」
「イジメる……」
「ソう……ムカつくヤツデいいよ……」
「うん……剣一だ! 剣一を殺しに行こう……!」
失の禍々しい気に当てられたのか、ぐるぐる闇の瞳になったカリンは、失の背中に乗った。
しなやかな筋肉が黒光りする人型妖魔。
悪魔の羽根がカリンを包むようにバサバサと動いた。
「すごぉい! 剣一なんかより絶対強い!」
「……カワイイ……カリン……さぁイク……よ」
「そうだよ! 私は可愛いのに! 術を教えてやったのに! 裏切った剣一……! 許さない! 殺す……!」
「あっちに人間の香りがスル……」
そう言うと、失はカリンを背に乗せて廊下を飛んで行く。
遠くに見える白い団服。
でもそれは紅夜が与えたものではもうない。
カリンにとっては裏切りの白夜団の制服!
綺羅紫乃を振る剣一の顔が見えた。
じわりと滲む感情。
「殺して……やる!」
唇を噛んだカリンは、失と共に戦う剣一の元へ突っ込んでいった。
いつもありがとうございます。
第434部分・紅夜城へのゲート開通!で武十見の描写追加。
第436部分・紅夜城突撃!!で朔海里の描写を追加いたしました。
最新話更新でお読み頂いた皆様には大変失礼な事を致しまして、申し訳ありません。
もうお読み頂いた方は、武十見も現地組にいたんだな。
海里も紅夜城組にいたんだな。と思っていただければ大丈夫ですm(_ _)m
これからも最後まで楽しくお読み頂けるように頑張りますので
お付き合い頂けると嬉しいです!




