紅夜城突撃!!
麗音愛達は紅夜城へのゲートで空に登っていく。
しっかりと槍鏡翠湖を掲げる美子が最後に見えた。
皆の無事を確認しつつ降り注ぐ妖魔を、麗音愛は一気に斬り落とし炎で焼き尽くす。
「うぎゃあああ! 飛んでる!! こ、これはすごいぞぉおおお!!」
興奮して小型ビデオカメラを振り回す爽子が吹っ飛んでいきそうになったので、首根っこを剣一が掴んだ。
紅と白の雲が流れていく嵐のなかを猛スピードで上がっていく感覚。
「できるだけ離れるな! どこに落ちるかわからない!」
剣一が叫ぶ。
「剣一さん!」
海里が煽られて離れていってしまう。
「海里! 俺の方へ来れるか?」
「くそぉ! ぜ、全然飛んでく方向がわからないっ……」
飛ぶ事に慣れている麗音愛はバランスを取るが、西野はクルクルと回る。
「ぎゃぁああ! 玲央ぉおおお!」
「西野つかまれ!」
麗音愛の伸ばした手を西野は慌てて掴み、そのまま麗音愛に抱きついた。
「ちょっとブサイク! 塵芥の分際で何を玲央先輩に抱きついているのよ!? 図々しいわね!」
ちょうど麗音愛に抱きつこうとしていた琴音がギロリと西野を睨む。
摩美の誤解は説明したのだが、元紅夜会の摩美の恋人。
気に入らない相手だ。
麗音愛が聞いているとわかっていても毒舌は止まらない。
「言ってる事ひどくない!?」
「てめぇ! サラから離れろ! 絵面が酷すぎるだろうが!!」
佐伯ヶ原も叫ぶ。
「佐伯ヶ原も言ってる事が酷すぎるよ!!」
麗音愛は、今無理に呪怨の羽根を出せば勢いでもぎ取られたり逆流する可能性もあるかと冷静に状況を見ている。
「加正寺さんも、佐伯ヶ原もこっちへ!」
しかし琴音も小柄な佐伯ヶ原もバランスが崩れて麗音愛との距離が更に離れた。
麗音愛が手を伸ばすが届かない。
「佐伯ヶ原!」
「サラァー!」
「加正寺さん!」
「いやぁああああん! 玲央先輩っ! 怖いですっ! 捕まえてくださぃぃ!」
そう二人に望まれても、強い力に阻まれる。
更に台風の中のように、回転も始まっていく。
「あなた……!」
「直美、絶対に離れるな!」
雄剣が直美を片手で必死に抱きしめ、直美も機転を利かせて自分のベルトを雄剣のベルトと絡ませた。
「母さん! 父さん!」
「大丈夫だ玲央! お前の足手まといになるために来たんじゃない! 自分の身を守りなさい……!」
抱き合う咲楽紫千夫婦に佐伯ヶ原がぶつかって、直美が佐伯ヶ原も抱きしめた。
浮かび上がったはずなのに、急に落ちていく感覚。
「落ちるぞ! みんな衝撃に備えろ!!」
皆がバラバラに落ちていく瞬間、できるだけ衝撃から身を守れるように皆を紫の炎で麗音愛は包む。
紅夜城に、爆撃のような着地音が響き渡った。
◇◇◇
紅夜城が揺れる……。
麗音愛は西野を庇いながら、着地した。
包んだ紫の炎で衝撃は緩和され痛みは治療されたが、同じように皆を保護できたかが気になる。
激突の衝撃で色々な粉塵が舞い、煙で何も見えない。
「西野、無事か?」
「お、俺は大丈夫、ありがとう。さっそく足手まといに……」
「気にするな。父さーん! 兄さん! みんなどこにいるーーー!?」
大声で叫ぶ。
しかし声は響かず、肉の壁に吸収される。
……誰も呼声に答える者はいない。
「……はぐれたか……」
同じように無事に着地していればいいが……。
剣一と加正寺琴音については身を守ることができるだろう。
海里も七当主だ、きっとどこかで落ち合える。
佐伯ヶ原と両親がひとまとめになっているのを目視したが、あのチームが一番戦闘力が低い。
早く合流しなければ……。
「うわ……なにここ、気持ち悪すぎだろ……妖魔の内臓?」
肉の床に西野は飛び上がる。
「……多分、城なんだろう……上空から少し把握したけど巨大な肉塊のようになっていた」
天井を突き破って、墜落したのは不気味な内臓の城。
空いた穴は、ギュルルルと蠢く肉塊によって封じられてしまった。
剣一に聞いていた城の様子とは全く違う。
内臓の廊下の広さは天井も三階ほどあり、横幅も同じ程度もある。
これだけの広さの廊下がどれだけ無数に広がっているのか検討もつかない。
「佐伯ヶ原ーー! 加正寺さん! 海里さん!! いないか!?」
呼声に答えたのは、無数の妖魔達だ。
暗い廊下の先に、グチャグチャとおどろおどろしい妖魔の群れがやってくるのが見える。
「うわ!」
「西野、俺が斬り込む! できるだけでいいから、自分の身を守れ!」
「わ、わかった! お、俺もちょっと時間ちょうだい! えっとこの場合の結界の術式は……えっと」
天井を突き破って、外に出ても標的になるだけだ。
椿を見つけ、紅夜を討つ前に力尽きるわけにはいかない。
これが紅夜の策略だったとしても、この道を進むしかないのだ。
「椿ーーー! 俺だ! 近くまで来たぞ! 今、助けに行く!!」
届くはずのない声でも、麗音愛は叫びながら妖魔を斬り落とす。
「摩、摩美ちゃん! 俺も頑張るから待っててねーーー!」
西野も叫んだ。
その手には、ジャラリ……と鎖鎌。
「えっ……? 西野まさか……」
「ここに来るまで秘密だったけど、摩美ちゃんの縄と似てるって思って武十見さんに鎖鎌を習ってたんだ。これに結界をあてがって雑魚妖魔から身を守るとか、雑魚妖魔をちょっと斬るしかできないけど……」
「すごいじゃないか!」
「えへへ! だろ! ブサイクだって塵芥だって俺には待ってる恋人がいるもんねーー!」
確かに西野の持つ鎖鎌は青い光を放っている。
まさかあの武十見の技を友人の西野が受け継いでいるとは!
麗音愛が妖魔を斬りながら、西野に微笑む。
「ふふ、頑張ろう、西野」
「オッケー玲央先輩~~ん!」
「やめろっって!」
二人は先を急ぐ――!!




