紅夜分身・最悪の三体
紅夜城。
変化した城のなかを一人歩くカリン。
戦闘で汚れた身体をお風呂で洗い、また紅色の紅夜会のゴスロリ軍服に着替え終えたところだった。
「な、なんなのこれ……紅夜様? 紗妃も摩美もいなくなっちゃうし……バカァ……紅夜様とルカのところに戻りたいけど……迷路みたいになっちゃってる……ルカァどこ? ……剣一のバカァ……」
ぶつぶつと、そのまま内臓のような廊下を歩く。
何か遠くからは戦闘のような音や、何かの叫び声も聞こえる気がする。
「……どこへ行けばいいの……?」
カリンの言うように、城は変化して王の間へと続いていた廊下も変にうねり曲がっている。
仕方なくカリンは、そのまま廊下を進む事にした。
◇◇◇
「紅夜様……」
王の間では紅夜の傍にいるルカが目を見張る。
玉座にいた紅夜の足が触手に変化し、巨大になって伸びていく。
内臓のような壁や床に繋がり、赤黒い長髪も更に伸びて繋がっていく。
「妖魔化した人間どもよ! 俺と一体化せよ! ……さぁ俺の分身どもよ……これから来る人間どもをまずは生贄に捧げろ」
地上で紅夜を崇め、妖魔化した人間達の力が紅夜を強大にしているようだった。
どんなに紅夜が敵だと訴えても、紅夜が新時代の救世主だと信じている人間はいるのだ。
「……ふはは……真っ黒な悪の化身よ……俺の力を分け与えてやる……存在せよ」
紅夜が足から伸ばした触手の節に、三つの巨大な塊が出来上がり、そこからドサリと産み落とされた三体の妖魔。
人のカタチをしているが、顔はぬるっとして牙のある口だけが大きく開いている。
真っ黒な身体は筋肉質で粘液に濡れ、人間を容易く切り刻める爪をカチャカチャと揺らした。
大きな悪魔のような翼をはためかせ三匹は、ケタケタと笑う。
「パパ……」「……お父様……」「……」
三匹が言葉を話す。
妖魔の進化が此処まで到達してしまった。
見た目は異形だが、言葉や立ちふるまいは人間のようだ。
「おお! なんという素晴らしき進化、そして感じるこの強さ……! 紅夜様の新世界に生まれる新人類!」
ルカが興奮して、喜び叫ぶ。
「ははは……父などと呼ぶな。お前達は俺の肉塊。俺の子どもは寵に産ませるのだ……」
そう冷たい目をして三匹に言った紅夜はおかしそうに笑う。
「しかしまぁ娘に、息子に……恵まれたものだな……ふふ……そうだな、お前たちの兄にあたる男を連れてこい」
カチカチと歯を鳴らす三匹。
「……わかったよパパ……」「……お父様、かならず……」「……サラシセンブッコロス……」
「お前たちに名を授けよう、失、奪、殺……城への侵入者を始末したあとは人間界へ送りだしてやろう。人間の国は滅び、新しい世界がくる……ははは……」
「素晴らしいです、紅夜様……!」
妖魔達の進化に涙するルカは三体の新生妖魔を何度もポラロイドカメラで写真に撮った。
「ルカ……お前は寵を連れてこい」
「は! 承知致しました」
ルカは一礼して、その場を去った。
「紅夜様……」
最後に残ったのがヴィフォだけだ。
戻らないコーディネーターの場所を不安気に見つめる。
「コーディネーターは俺と一体化する事を望んだか。ヴィフォ、さぁ来い。寵が来るまでの間はお前で暇をつぶしてやる……」
ニヤリと紅夜が笑う。
「……ありがたき、幸せでございます」
ヴィフォが跪き、紅夜は触手でその頬を撫であげた。




