椿VS闘真~分からず屋~
「私、ずっとあなたが大っ嫌い!」
不気味な紅夜城に響く椿の拒絶の言葉。
闘真は一瞬その言葉が理解できないような顔をする。
その迷いは椿にとっては好機だ。
ハイヒールを脱ぎ捨てた裸足のまま踏み込んで、闘真に緋那鳥で斬りかかる。
しかし闘真を守る薔薇妖魔ロッサが触手で椿の攻撃を阻む。
「くっ……! 燃えて……!」
椿は桃色の炎でロッサを包んだ。
桃色の炎の効果はなんだろうか……まだわからないが妖魔には効くはずだ。
しかしロッサは燃え上がるが、コーディネーターを燃やした時より断然に燃え上がりが悪い。
「なぜ……っ!?」
ロッサからの触手を転がりながら避けて、また攻撃態勢をとる。
「姫様……!」
闘真は血の剣で椿に斬りかかる。
しかし、それは配下としての、躊躇ある行為だ。
椿はすぐに避けて、距離をとった。
「姫様はワガママすぎますよ!? 自分の行動がどれだけ迷惑かけているか、わからないんですか!? 非常識ですよ!」
「えっ!?」
相変わらずの闘真の言葉にも椿はまた素直に聞いてしまった。
「私が……ワガママ? ……迷惑……?」
「そうですよ。誰しもが憧れるこの世の王様の娘なのに……いつまでもいつまでも反抗期で……」
はぁ~っとため息をつく闘真。
「誰しもが憧れるって……紅夜のこと?」
「様をつけないと! あ~あ……もう紅夜様がお優しいからって、あまりにも酷すぎると思いますよ? どれだけワガママなんですかね……姫様は!」
「……またいつもの、あなた基準のわけのわからない事ばっかり……!」
また椿の心に憤りと怒りが燃えてくる。
「俺はもともと、姫様への攻撃を許されているんですよ? 俺が本気になったらどうなるかわかりますよね?」
「じゃあ本気でやればいいじゃない!」
椿が斬りかかろうとするが、闘真は更に後ろに下がった。
「でも! できないじゃないですか! 普通なら! そんな事くらい理解しますよ〜? やっぱり姫様ってちょっと……変ですよね! ちょっと……いや、かなり~~おかしいですよ!」
「何言ってるの!? わ、私は変じゃない! ……おかしいのは闘真だよ!」
自己肯定感の低い椿でも、譲れないものがある。
「えぇ!? 俺が!? 紅夜様に愛されて不満とかおかしいですよ!」
「おかしくない!」
「おかしいですよ! 神様なのに! 姫様は変だ! 意味がわからない!」
この感覚の違いが、ずっとずっと不快で椿の心を抉ってくるのだ。
何を言っても無駄で、わかってもらえない。
「私は……紅夜なんかに愛されたくないの! 私が愛してるのは、麗音愛だけ!」
「麗音愛……咲楽紫千の野郎……! でも、あいつはただの足がかりだって、みんな言ってましたよ。真実を愛を知るための。紅夜様に愛されるための、ただの通過点ですよ。姫様は美しくなるためにあいつを利用しただけなんでしょ?」
「利用!? そんな事するわけない! 私は麗音愛のことを心から好きだもの!」
「人間なんか好きになるわけないじゃないですか! あなたは妖魔王の姫なんだから! 妖魔でしょ!」
「わ……私は妖魔じゃない!」
突き刺さる闘真の言葉を、椿は首を振って否定する。
「あなたになんか話したってわからない! 私が愛してるのは麗音愛だけ! 紅夜なんか大嫌い! 絶対あんなやつのものに私はならない!」
「姫様! あまりに言葉が酷いです!」
闘真の怒りが伝わってきたが、椿も喜びだのなんだの言われ続けるのはもう我慢ならない。
「私は麗音愛のものなの! 身も心も麗音愛だけのものなの!」
今までで一番叫んでしまう。
紅夜城にも響き渡ったことだろう。
もし聞かれて紅夜が逆上しようが、妖魔が集まろうがそれでも叫ばずにはいられなかった。
シィン……っと闘真が静かになる。
止まってしまったかのように、驚愕の瞳をしたまま、動かない。
それで椿まで静止しているわけにはいかない!
椿はまた緋那鳥を構えて、闘真に攻撃をしかけた。
「……姫様ぁ!! 怒りますよ!」
しかし飛びかかった椿は、闘真の怒気によって浮かんだ血が弾丸のように放たれた衝撃で後ろに吹っ飛ばされてしまう。
「きゃあ!」
予想外の攻撃だった。
傷は浅いが、そのまま闘真の怒りに比例するように爆発的に増えたロッサの触手に絡み捉られてしまう。
コーディネーターより痛みと強さはロッサの方が上だ。
しかもロッサの触手には、棘が無数に生えており、ギリギリと絞められれば激痛が走る。
「あぁ……っ!」
椿が痛みで叫ぶと、ロッサは躊躇したように棘を少し引っ込めた。
「ロッサ! 何してる! 姫様にも少しお仕置きだ!」
「ぐ……痛みなんかで私の心は変わらない!」
闘真に言われてロッサの棘がまた刺さる。
しかし、椿は気丈に闘真を睨んだ。
血が滲み出る身体。
その強い瞳に、闘真は慄く。
「咲楽紫千を心から……?」
「……そうだよ……」
この想いは誰にも穢されない。
椿の胸元で揺れるネックレス。
「まさか……まさか……姫様はすでに、紅夜様を裏切って……穢れてしまっているのでは……?」
恐ろしい事実に気付いてしまったかのような顔をした闘真。
「……裏切り? 穢れ? あの男こそが穢れそのものだって、なんでわからないの!?」
「ロッサ! 姫様を絞め上げろ……お仕置きだ……お仕置きなんだ……姫様の馬鹿!」
「ぐっ……」
椿は苦しみの中、桃色の炎を出す。
青色の炎がうまく出せない。
どうしてしまったのか自分でもわからないが、ロッサは燃えながら棘だけを先に引っ込めた。
棘を仕舞えとは言われていないはずなのに、ロッサの戸惑いをなぜか感じた。
しかし腕や足は絞められ痛みが強くなる。
首にも絡まり、息が苦しい。
コーディネーターに続く触手ばかりの攻撃に、椿は心底嫌になる。
「嘘ですよね? 姫様……穢れてなんかいないですよね」
締め上げられた椿の前に闘真は哀しげな顔で近づいてきた。
いつもありがとうございます!
昨年中は、カラレスを読みに来て頂き本当にありがとうございました!
新年一発目は引き続き椿VS闘真です。
2023年、いよいよカラレスも完結を迎えることかと思います。
最後まで楽しんで頂けるように頑張りますので、お付き合い頂けると嬉しいです。
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戸森




