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色の無い夜に・Colorless Night~最凶妖魔王を倒すため最強呪刀を継承した俺は、魔王に反旗を翻した妖魔姫とじれ恋学園生活しながら妖魔を討つ!  作者: 兎森りんこ
第三部 第二章

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椿と闘真~椿、ご立腹!~


 紅夜城が変化していくのを、外から見た篝は走り出す。


「椿っ!!」


 しかし行く手を阻むように空から妖魔が篝を狙う。

 すぐに炎で焼き尽くそうとするが、妖魔は燃えたまま大きな口を開け牙を向ける。

 

「くっ! やはり力は不完全か……!」


 ふわりと篝の身体が浮いたかと思うと、雪春が抱き上げ明橙夜明集・雪春で妖魔を一撃で切り裂く。


「雪春さん……!?」


「僕は貴女の従者ですから、何も問題はありません」


 妖魔が爆散され、ゆっくりと地に降り立つ。

 篝を抱き上げたまま雪春はうごめく城に向かって歩き出した。


 着物では確かにこの城に入って闘うのは困難だ。

 武器もない。

 幼女姿の篝は大人しく、そのまま雪春の腕の中で策を練ることにする。

 自分の子供達の強さを信じて――。


 ◇◇◇


 背中を合わせた椿と摩美は襲いかかる妖魔を次々と倒していく。

 しかし、腹を空かせた猛獣のように窓から妖魔はまた入り込んできた。


「椿ちゃん! また来るよっ」

 

「うん!」


「生意気ナ生意気ナ、ナニガ姫ダァアア!」


 テーブルやソファをなぎ倒し、叩き潰し、他の妖魔とともに襲いかかってくるコーディネーター。

 ここまでの恨みをどれほど長く胸に抱いてきたのか。

 摩美の方が傍で見てきた分、冷静な秘書のような女のどす黒く燃え盛る烈情に驚きを隠せない。


「……コーディネーター……」


「こんな風になってまで、あんなのと一つになりたいだなんて!」


「紅夜サマト世界とヒトツに……! ずっと抱かれ永遠ヲイキル!」


「摩美ちゃん、廊下へ!」


 素早く伸ばしてきた触手を椿は斬り落とし、摩美と廊下に出る。

 まるで内臓のなかにでもいるような廊下。

 腸壁のような不気味な床を二人で走った。


「母様を探さなきゃ!」


「篝様は今どこに!?」


「わ、わからない……絡繰門雪春と一緒にどこかへ」


「あいつは味方なの!?」


「わからない……ずっと此処に来てからも見ていたけど、わからない! こんな状況になってしまって無事なのか……急がなきゃ」


 あの母なら大丈夫、そう信じているが……あの男の魂胆がわからない。

 一体何がしたいのか、あれほど自分を無惨に扱ってきた男なのに今どう思われているのかもわからない。 


 母を早く探して合流したい。しかしそうは言っても、この城の状況。

 いっそ外へ飛び出した方がよかったか!?


 長い廊下は続く。


「あっ!」


「摩美ちゃん!」 


 肉の床から触手が伸びて、摩美の足を掴んで転ばせたのだ。

 椿はすぐに青い炎を燃やす。

 摩美は青い炎でも浄化されない事を知っているため、躊躇なく一番強い炎を繰り出した。


 しかしその炎を消すためなのか一気に触手の量が増え、二人は絡み囚われた。

 城の高い天井に身体が持ち上げられる。


「きゃ!」


「いやぁ!」


 ギチギチに締められ身動きができない。


「待チナサイィイ。肉塊ニシテ紅夜サマのもとへ! 運んでアゲルましょうネ……」


「追ってきた!」


 クラーケンのような紅い妖魔。

 もう人間だったかもわからない触手をまとった紅い鬼。

 声だけは人間の時の音がかすかに混じる。

 怒りに燃えたコーディネーターが鞭のような触手を椿に向けて放った。


「くっ!」


 切り裂かれる! と思った瞬間。

 

「あれー姫様ぁ!?」


 コーディネーターの紅い触手を絡め取ったのは緑の触手。

 絡み取り、無造作に紅い触手を引き千切る。

 飛び散るのはコーディネーターの体液だ。

 

「ギャアアア! 貴様ァ!」


「と……闘真!?」


 大きな薔薇の妖魔ロッサを引き連れた闘真が、驚いた顔をして現れる。


「コノ無能ノ馬鹿男メ! ワタシヲ攻撃シテどうする!」


「え? え? 誰だよ? 喋る妖魔?」


「無能ガア! ワタシハコーディネーター! 紅夜サマのタメにコノ謀反者を捉えヨ!」


「えぇ? あんた本当にあのおばさん? そんで……謀反者? 誰が?」


 まだ床からの触手に絡め取られたままの椿を見上げる闘真。

 紅い羽織の隙間から白いドレスが翻っている。

 裾が燃えてミニスカートになっている事に気付いて、闘真は少し頬を赤らめた。


「ひ、姫様……少し大胆すぎでは……ちょ、ちょっと見えそうです……」


 こんな状況で闘真は照れながら目を背け、ロッサが闘真の目の前に大きな葉を揺らす。


「闘真! 姫様を助けなさい!」


「あ? 摩美までいたのか。お前、姫様となんで一緒にいんだよ」


 摩美の存在にやっと気付き、怪しんだように睨む。


「ソノ娘、マミはコロセ! 謀反者ダ!」


「えっ?」


「闘真! 謀反者はコーディネーターだよ!」


「えぇ? なんだよ……どっちだよ」


 困惑した顔をする闘真。

 だがコーディネーターへも摩美へも信頼の感情もない瞳を向けている。


「闘真」


「!」


 闘真にとっては誰よりも何よりも綺麗な声が自分を呼んだ。


「はい! ひ、姫様……こんにちは……いや、ごきげんよう? ……いや、こんばんは」


 また照れた顔で椿を見上げる。

 

「お願い、助けて! 動けないの……」


 触手は椿の両腕両足に絡まり、ついには胴にも巻き付き始めている。

 

「闘真ァ! ワタシノ命令ハ、紅夜サマの意志である!」


「……紅夜様の……」


 『紅夜』という言葉に闘真は反応する。


「闘真……! お願い!」


「イイ加減ニシロ! コノ出来損ないガ! 私のイウコトをキケ!」


「うるせぇ! じゃあ俺が、紅夜様のところへ姫様を連れて行く!」


 コーディネーターが闘真に振り下ろした触手と椿が拘束された触手を闘真が血の剣で一瞬に切り刻んだ。


「ギャアアア!」


「くちうるさいババァは黙ってろよ……姫様っ」


 一気に解放され、床に叩きつけられる前の椿を闘真が抱き上げた。


「きゃあっ!」


 触手からは解放されたが、今度は闘真と後ろのロッサまでが椿に絡みつく。

 

「さぁ、俺が紅夜様のもとへお連れしますね」


「バカ闘真! 姫様を離せ!」


「うるせーよ、摩美。お前はそこにいろよ。コーディネーターとな!」


 触手を切断されて怒り狂うコーディネーターを闘真はロッサの茨の触手で絡みつかせ、摩美が絡まれた触手に更に絡ませる。

 

「と、闘真待って……! 摩美ちゃんを解放して!」


 あの距離でがんじがらめになっていては摩美が危険だ。


「姫様、摩美なんかほっておきましょう」


「あっ……やだっ」


 闘真はそれ以上は椿の言うことは聞かずに、お姫様抱っこしたまま歩き出す。

 

「さぁ急ぎましょう」


 闘真は更にスピードを上げて、変化した廊下を走って摩美の姿は見えなくなってしまう。


「待って! 闘真! 話を聞いて!」


「城がこんな状況なんですから、急がないと! よっと! 紅い夜ってこんなんなんだぁ」


 何度、止まるように言っても聞かない闘真に椿はついに、緋那鳥の刃先を闘真に向けた。


「離してっ!」

 

「うわっ! 姫様!?」


 驚きバランスを崩した闘真の腕から、ロッサの蔦を切り裂いて椿は飛び出した。

 肉の床に降り立ち、戦闘ポーズをとる。


「姫様……紅夜様がお待ちなんでしょう?」

 

「紅夜は倒しに行くけど、連れてってもらわなくてもいい!」


 椿としても作戦を立てる気はある。

 これから麗音愛達が突入してくるのであれば合流が一番だ。

 

「倒しに? また、そんな事言ったらダメですよ……」


「世界が終わってしまうんだよ? コーディネーターが言ってた。世界中の人々が紅夜に吸収されちゃうかもしれない! 紅夜がみんなを支配するなんて、そんなの絶対許されない……!」


 椿は必死に闘真に語りかける。

 だが闘真は苦笑いした困った顔をする。


「……まだ反抗期なんですか? だってこれから姫様は紅夜様と一つになるんでしょ?」


「や、やめて……!」


「きっと嬉しくて最高に幸せになりますよ、気持ちいいってみんな言いますよ」


 意味を知っているのか知らないのか……にっこりとした笑顔が椿の心を傷つける。

 

「気持ち悪いこと言わないで!」


「……コーディネーターや摩美はどうでもいいけど、紅夜様には従わなきゃいけません」


 寂しそうな顔の闘真の横で巨大な薔薇妖魔のロッサまで揺れる。


「このまま連れて行かれるわけにはいかない……闘真……」


「はい、姫様」


「私……ずっとあなたが大っ嫌い!」


 緋那鳥を構えた椿が桃色の炎とともに闘真に斬りかかる!

 

 

 

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― 新着の感想 ―
[良い点] ずっとあなたが大っ嫌い!か…( ̄▽ ̄;) まあ、会話成り立たないもんな 嫌われてますよ、そりゃ しかし、 こちらの話が通じないということは むこうの話も通じてないということ 闘真か…
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