表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
色の無い夜に・Colorless Night~最凶妖魔王を倒すため最強呪刀を継承した俺は、魔王に反旗を翻した妖魔姫とじれ恋学園生活しながら妖魔を討つ!  作者: 兎森りんこ
第三部 第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

425/472

少女達:少女覚醒



「……結界……?」


 手のひらよりも小さな結界が摩美の胸元で輝いている。

 

「七さんに、頼んで……私の体内に一番強くて紅夜会に気付かれる事のない結界を作ってもらいました」


「すごい……紅夜も欺ける結界だなんて」


 身体検査もあっただろうに、紅夜の前に立っても胸元の秘密を隠し通せたのだ。

 

「はい。大分無理をさせてしまって、七さんはしばらく結界を張る事ができなくなってしまいました」


「そこまでして一体何を……」


「姫様、これです」


 摩美が胸元に手をやり、そっと椿に渡す。


 結界は消えたが、輝きは消えない。

 キラキラと椿の手のひらで溢れる光。


「これは……コイン……? 違う、小さな……白い……つば……」


 椿の言う通り、それは白く輝く刀の鍔のように見えた。

 ガラスのように煌めいて、何か複雑な模様が刻まれている。

 しかし大きさはかなり小さい。


「姫様、実は手紙はもう一枚あったんです」


 不思議な感覚が、椿の身を包む。

 これは、とてもとても大切なものだ……。

 何か、懐かしいような切ないような愛しいような……。

 涙が溢れそうになる。


「……これは、私が持って……生まれてきたもの……」


「! そ、そうです……姫様……覚えているんですか?」

 

「ううん……覚えて……ない……でも、でもこれ……」

 

 きっと思い出さなければいけないことがある。

 欠けた何かを紡がなければいけない、自分にその役目が――。


 でもそれ以上はわからずに、ただ胸がキリリと痛くなる。


「……姫様……?」


「……麗音愛に会いたい……」


 この温かさを感じた時に、傍に麗音愛がいない事を何より辛く感じる。

 どうして傍にいられないのか、傍にいる事が運命(さだめ)のはずなのに……。

 深く深く感じる愛。


 もしも、麗音愛と出逢う前にこれを貰っていても何も感じなかったと思う。

 愛を知って、今感じる……この気持ち。


「絶対、迎えに来ますよ……栄太と一緒に」


「……摩美ちゃん……ありがとう……危険を犯してまで届けに来てくれて……」


 自分の主だった紅夜を目の前にして、どれだけの恐怖を我慢したか。

 それでも摩美も愛を知った強さの宿る瞳をしていた。

 

「この生命は姫様と咲楽紫千に助けてもらったもの。これが私の役目だと思ったから、いいんです」


「ありがとう……絶対、一緒に帰ろうね」


「はい……!」 

 

 涙をこぼす椿を摩美は支えるように寄り添った。

 運命は味方してくれている……椿は母の言葉を思い出し強く感じる。


「そうだ……私の宝物と一緒に……」


 椿はベッドルームに移動して枕の下からネックレスを取り出した。


「あぁ、彼からのプレゼントですね。私が通します。指輪とボタンと一緒に通しましょう」


「うん……ありがとう」


 綺麗な音がして、ネックレスに第二ボタンと指輪、そして鍔が通された。

 二人の少女が微笑み合う。

 

「な~にを~わたした……ぁ??」


「!!」


 突然の恐ろしい声!

 二人の背後に突然現れたのはコーディネーターだ。


「やはり~~なにか……隠してたわねぇ~~~」


「きゃあ!」

 

 いつもスーツ姿にメガネの秘書のような姿の彼女だが、今は首を横に捻じ曲げ蛇のように舌を垂れ下げている。

 まとめている髪は蛇女のように広がり、瞳は怒りに震えるようにチラチラ揺れる。


「何を隠したぁ~? 姫様とて容赦しませんよ……」


「な、何も……隠していない!」


 すぐにネックレスを胸元に隠した椿は、摩美を庇うようにコーディネーターの前に立つ。


「その謀反者を渡しなさい……寵様……」


「嫌! 彼女は何もしていない!」


「あの生意気な女もいない……! 紅夜様の……と我慢し続けていれば……貴様らぁ!」

 

「コ、コーディネーター! 姫様に向かって無礼では!?」


 今度は摩美が椿を庇うように前に立つ。

 隠れるために羽織ってきた白い布が、ギュルルルと縄のように締まって剣のようになり摩美が構えた。


「無礼……だと……だとだとだと」

 

 コーディネーターの様子がおかしい。

 

「我らが悲願の紅い夜を前に……邪魔するやつは……処分する……! 我らが願い! 我らが悲願……!」


「……妖魔化……!?」


 人間だったコーディネーターの身体はみるみるうちに、手が足が膨れ上がり変化していく。


「あぁ……! 紅夜様ぁ……んふっ……はぁ……貴方を感じます……この紅い夜にぃ……やっとひとつにな、れ。る……あああ」

 

 人間から化け物ように変化していくというのに、コーディネーターは歓喜したように両手をあげる。

 しかしその両手はもう、赤黒い触手のようだ。 

 

「進化する人間は、紅夜様と一体化するのです……! あぁああ紅夜様ぁあああ!! 紅夜様と一体化ああああ!!」

 

 その瞬間に、今まで城だった部屋がまるで内臓のように変化していく。 

 大理石の床が、壁が赤黒く脈打つ肉になった。

 

「これは……紅い夜の影響……!?」


「救済を! 救済を! 紅夜様の愛を奪いやがってぇええ!! もう許さないぃいいい! きっと紅夜様はお許しになるぅう! さぁあ肉塊にして、食べてあげる。一つになりましょう~~姫様……!」


 正気を失ったかのように、最後の叫びとともにコーディネーターの顔が真っ二つに裂けてそこから真っ赤な目が五つ、無数の牙をもつ顔が現れた。


「姫様! 逃げて!」


「いいえ! 私は逃げない――!」


 麗音愛も皆も、闘っている!


「今の私にできること……っ! お願い! 闘う力を!」


 チリリ……ッと椿の周りに火花が散った。

 力が(みなぎ)る!


 これは、胸元にある白い鍔のおかげなのか……。

 助けというよりは、自分を取り戻したような気持ちになった。


 あの人の傍にいるための、強さ!!


 瞬間、一気に椿の周りに炎が吹き上がった。

 灰になる手枷。

 純白の炎と燃え上がる烈火の紅い炎。

 二つが混ざり、桃色の炎が椿を包んでいた。

 邪魔な長いドレスの裾は燃え上がっていく。


「……ナニィ……!?」


 迦陵頻伽の鳴き声のような美しい鳥の声が摩美には聴こえる。


「闘う――!!」


 椿の手には煌めく細剣、桃純家明橙夜明集・緋那鳥が握られていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 執筆3周年!おめでとう!お疲れ様です!そしてこれからも突き進んでくだされ!!(・∀・)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ