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色の無い夜に・Colorless Night~最凶妖魔王を倒すため最強呪刀を継承した俺は、魔王に反旗を翻した妖魔姫とじれ恋学園生活しながら妖魔を討つ!  作者: 兎森りんこ
第三部 第二章

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少女達:絶望の少女


 紅い夜が始まり、紅夜の元へ三人の少女が戻る。

 玉座にて摩美が跪き、黒い箱をコーディネーターに渡した。


「紅夜様。長い間、留守に致しました」


「……随分と人間の臭いをさせて帰ってきたな摩美」


「は、はい……愚かな人間どもを騙すには必要な事でしたが……申し訳ありません」

 

 篝と椿は二人で身を寄せ合い、紅夜の玉座の足元に座らされていた。

 紅い夜の絶望に飲まれそうになりながらも、この状況の打破を考えていた椿にとって摩美が戻ってきた事は驚きだった。


「ま、摩美ちゃん……どうして……」


 摩美は紅色の紅夜会軍服を身にまとっている。

 表情には怯えも迷いも見えない。

 敵として対峙していた時の、摩美のままだ。


「ふふ……まぁいいだろう。……中を確認しろコーディネーター。篝……お前は何をこの中に仕込んだ……?」


「別に何も。息子への……手紙よ」


 篝の言うとおり、文箱からは一通の手紙が出てきた。

 コーディネーターが読み上げる。


「『麗音愛へ

 この手紙を読んでいるという事は、貴方はもう自分の運命に気付きそして覚醒したということでしょうか。

 貴方には母として、何もしてあげる事ができずごめんなさい。

 それでも貴方を産んだ日に、貴方を抱き上げた時、幸せになってほしいと心から願いました。

 双子の妹には出逢えたでしょうか。二人とも私の可愛い可愛い子ども達です。

 麗音愛、どうか過酷な運命を貴方の力で切り拓いてください。

 きっとこの手紙を読んだ時には、貴方はもう十分に強くなっているはずです。

 この世界を、妹を、どうか頼みます。

 貴方を心から愛しています。

 貴方の名前は私が付けました。最初で最後の贈り物です。

 麗しい愛の音。

 貴方の名を呼ぶ、麗しい愛の音を聞き漏らさずに、どうか強さに変えて強く闘ってください。篝』

 

 手紙は以上です。あとはこのブローチが一つだけ……」


 コーディネーターが紅夜に手渡す。

 椿はそれが直美にもらったブローチと対を成すような形だと思った。


「ははは……! こんなものを後生大事に箱に入れていたとはな……殊勝なことだなぁ篝……」


「子どもに手紙を書いて、何が悪いのよ」


「……まぁ確かにこの手紙は、お前にとっては最重要機密だな。ふふ、俺の息子か」


「摩美、この他には本当に何もなかったのですか?」


 コーディネーターの問いに、摩美は頷く。


(はばか)ると命の保証はありませんよ」


「本当にそれだけしか、ありません。咲楽紫千を騙し此処に戻るのにどれだけ大変だったか、わかりますか」


「……いいでしょう。紅夜様、そのブローチを分析いたしますか……? 舞意杖のような桃純家の術具かもしれません」


 篝は何も言わない。

 その様子を見て、コーディネーターは文箱ごと配下に渡した。


「よくやった。摩美、下がれ」


「はい」

 

「……摩美ちゃん……」


 椿の視線に気付いているはずなのに、摩美は椿の方は一切見ず一礼し闘真やルカの隣に立つ。

 摩美が紗妃の元へ来た時の映像しか見えていない。白夜団で何があったのか、西野の怪我は大丈夫なのか……。

 中央の水鏡には、混乱する人々、燃える街が写っている。

 

「紅夜様!」


「……紗妃か」


 紗妃が血を吐きながら跪き、叫んだ。


「この身体を、また治してください! すぐにあいつらを殺してきます! 人間も何百人でも何千人でも首にして貴方に捧げます……我が王よ……!」


 椿が見た紗妃は、琴音に切り裂かれた傷で無惨にも崩れ落ちそうだった。

 再生は自動的にはうまくいかず、十字に切れた胸元や千切れかかった腕からは触手のような肉塊が伸び死にはしないようだが人間の姿には見えない。

 

「……本当にいいのか? 紗妃……」


「もちろんです……! 今までもそうやって闘ってきました! 愛する紅夜様! 貴方だけが私の……」


「お前の憎む、我が娘の血でまた蘇るか」


 耐えられないように、笑い出す紅夜。

 椿は背筋が凍る思いがした。

 まさか……。


「は……? 我が娘の血……?」


 紅夜の言葉に、紗妃の顔が歪む。


「再生技術は寵の血があってこその技術だ」


 そう、紅夜と人間の娘の椿の血が手に入った事で再生技術が格段に進化したのだ。

 紅夜の血だけでは、人間には猛毒。

 椿の普段の血と、特別な呪いで椿に熱を出させた時の血。

 それを研究材料にして、人間の再生を可能にさせている。


「わ……私の身体に……罰姫の血が……?」


「そうだ、お前は憎む寵の血よって何度も蘇る……滑稽な女だ……」

 

「う……嘘です……そんな……馬鹿な事……」


 そんな説明は受けていない。

 いや、説明など聞いたことがあっただろうか?

 額に嫌な汗が浮かぶ。


「お前はどうあっても最期には寵を殺すことは、できない。お前にとっての主なのだからな」


「こ……紅夜様……どうして……そんな……私の主は貴方だけ……私を認めてくださったのではなかったのですか……!?」


「俺が……お前をか……」


「はい……あ、あいつらを殺して……私に新しい顔と名前と……そして御慈悲を……」


 クスッと場に似合わぬ楽しそうに微笑む紅夜。

 何を思い出したのか。

 あの日、連れられてきた狭間滝江(はざまたきえ)という少女の顔か。


「慈悲? ただの余興だ……白夜の犬に穢された醜い女よ。お前の憎しみで俺の可愛い娘が毎度泣く姿は、とても良いものだった……。そして……そう、今のその絶望に満ちたお前の顔が見たかっただけだ」


 断頭台に頭を入れた時のように絶望で歪む紗妃の顔。

 それを見て、紅夜は高らかに笑う。


「はっはっはっはっは! 次でお前は寵を崇める完璧な眷属にしてやろう。白夜の者共との闘いのコマとして使ってやるぞ……幸せだろう……紗妃」


「……いやあああああああ!! がぁあああっ!!」


 紗妃は奇声の叫びをあげた。

 頭を掻き毟るようにして、身体を引きずり血を流したまま紗妃は王の間から出て行った。

 摩美もカリンも、その壮絶さに誰も動くことはできない。

 

「……酷い……!」


 椿は追いかけようと立ち上がったが、躊躇と目眩で座り込んでしまう。

 自分が追いかけて、何を言えるというのか。

 

 剣一と椿が襲われた時、紗妃から『斬姫刀ざんきとう血ノちのゆめ』を雪春が奪った。

 『貴女には、姫は殺せませんよ』

 それはこういう意味合いだったのか……。

 激しく憎い相手の椿の血で蘇り続けていたという事実は、どれだけ紗妃を苦しめることだろう。


「酷い……! 剣一さんの時のように、あんたのコントロールで私の眷属だって支配できるくせに! どうしてこんな苦しめ方をするの!!」


「お前の血が流れているという事実を言ったまでだぞ……俺は……ははは」 


 道理も何もない。

 ただの酔狂、娯楽なだけなのだ。

 怒りに震えた椿をヴィフォが拘束しようとしたが、制するように篝が抱き締める。

 

「この子を少し休ませて頂戴! 私達を……部屋に戻らせて!」


「どうしてだ……? 世界が滅びゆく様を見て涙する娘を愛でてやりたいんだがな」


「まだお前の考える宴まで、時間があるはずよ……」


「そうだな……まぁいい。その時まで喜びに震えて母と娘で待っているがいい……」


 篝は、椿を支えながら水鏡を見つめた。

 あの混沌の世界で、自分の息子が強く闘っている事を信じて。


 

 

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― 新着の感想 ―
[一言] 果たして摩美の真意はどこにあるのか……。 紗妃はどうあっても幸せにはなれそうにもないけど、直美と会ったことで少しでも救いがあればいいなと思いつつ。 篝さんも椿ちゃんもつらいだろうけど、頑張…
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