少女達:怒りVS怒り!
紗妃の呪殺魔法陣・黒怨呪が人間の悲鳴のような不協和音を響かせながら増大していく。
海里は朔家の補佐達の助けで、なんとか魔法陣から脱出することができた。
もう琴音と紗妃は暗黒のドームのようなものに包まれて二人を目視することもできない。
「琴音様が!」
加正寺家所属の団員が琴音の身を案じるが海里は言った。
加勢に言った自分がおめおめ引き下がり、情けないが悍ましいこの魔方陣に太刀打ちはできない。
「彼女にとって、あれはゆりかごのようなものみたいですよ……さすが……武将令嬢です」
海里の言葉通り呪殺魔法陣を利用し自分の力をより強大にした琴音。
真っ黒な風が吹き荒れるなか、二人の少女はお互いに呪いに喜ぶ武器を構えている。
「ひゅっ……!」
先に攻撃を仕掛けたのは紗妃だ。
一気に琴音に向かって走り込んでくるが、そのスピードは異常に速い!
不気味に光った目だけがまるで浮かんでいるような、そして直前での跳躍。
乱舞のように、鎌を振り回す。
華織月の死を呼ぶ匂いも、今日はまるで満開の花のように溢れこぼれていく。
三日月の刃が琴音を翻弄する。
刀やサーベルの動きとは全く違う。
「……猿のようにちょこまかと……!」
琴音の二刀流でも華織月乱舞には、反撃する隙もない。
ヤジを飛ばすカリンを討ったところで紗妃にはなんの動揺にもならないだろう。
自分のパワーも上げてくれるこの結界を、壊す意味もない。
「ぶち壊すぶち壊すぶち壊す! 死ねぇ!」
激しい憎悪のままに鎌を振り回す紗妃。
琴音を喰い殺そうとタイミング悪く突っ込んだ妖魔でさえ刃先にいれば容赦なく斬る。
琴音は嫉妬などは慣れっこだ。
むしろ憎まれ、恨まれる事も上流階級の人間にとってはステータスとすら思っている面もある。
「うるさいわねぇ! それしか言えないの!」
結界のなかで、琴音は防戦一方だが嘲笑うようにサキに言った。
自動的に聖なる結界を発生させる装置は何個か団服のなかに持っている。
それを使い足止めした瞬間に右腕、または右足……一番いいのは首を落とす。
あの長いポニーテールを掴んで一気に首を……。
どうにか一瞬の隙を!
ちょこまかと上から妖魔を誘導しているカリンに、また琴音は骨研丸を投げつける。
今度はカリンの乗っていた妖魔に当たり粉砕し、カリンが空から落ちたのが見えた。
「殺す殺す殺す殺す!」
紗妃はやはり、カリンの身など案じない。
憎しみの炎。
しかし、琴音はその瞳に違和感を覚える。
この女は、一体誰を見ている……?
私に嫉妬して、私の命を妬んで僻んで殺したいと言っているわけではない。
琴音は悟る。
琴音の後ろを見ている。
紗妃は、そう……違う女を……!
「罰姫……! 殺す……!」
自分の後ろに、あの忌々しい女を見ている!!
琴音にとって、これ以上の屈辱はなかった。
「私をあの女の代理にするんじゃないわよぉおおおお!」
一気に琴音の怒りが爆発する。
また鎌を振り回す紗妃の斜めの斬撃を後ろへの宙返りで避けたあと、琴音は叫ぶ。
「黄蝶露ぉ! 骨研丸戻れ!」
「後ろか……っ!」
カリンに投げた骨研丸が、紗妃を間に挟んで琴音の元へ一直線に戻ってくる。
挟み撃ち!
「当たるか!」
紗妃は華織月を両手で持ち身を翻す――!
骨研丸は、紗妃の身体をかすめただけで当たらなかった。
ニヤリと微笑む紗妃。
しかし、それにニヤリと微笑み返す琴音。
「お前に私への恨みを、刻んで、あげるわ……!」
骨研丸と、黄蝶露の間にあったのは華織月の鎌の刃先。
「なにぃ!?」
二刀のサーベルに両側からの力が加わり、絶叫のような鋭い音を響かせながら華織月の刃が粉砕された。
切腹鎌の最期。
それを嘆く悲鳴も与えぬままに、琴音の二刀がサキの身体を十字に切り刻んだ。




