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色の無い夜に・Colorless Night~最凶妖魔王を倒すため最強呪刀を継承した俺は、魔王に反旗を翻した妖魔姫とじれ恋学園生活しながら妖魔を討つ!  作者: 兎森りんこ
第三部 第二章

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兄弟死闘篇:兄と弟


 容赦なく降り注ぐ、剣一の攻撃。

 手加減しているわけではなく必死で攻撃を避けるが、このまま闘いが続けば不利という焦りも滲み出てくる。

 剣一の力で校庭内は浄化結界の領域が増えてきていた。

 そこに足を踏み入れれば麗音愛は溶ける。

 必死に止めるために策を考えている両親、白夜団員には来るな! と叫ぶので精一杯だ。


 多分剣一が本気になれば、ここ一帯を焼け野原にすることなど容易に違いない。

 

「くそっ!」


 針状にした呪怨の攻撃で剣一から距離をとった。

 刀を構える手に集中して放った針が剣一の腕に刺さる。

 しかし剣一は無表情なままで、その呪怨の針を握り浄化してしまう。

 白い軍服にそれ以上の血は滲まない……まるで治癒しているかのようだ。


「まさか、兄さん……不死に……?」


「あぁ……俺は不死を手に入れた……もう死は怖くない」


「紅夜の穢れた術で蘇った結果なのか……!?」


「……違う! 姫様の血の力だ……」


「姫……椿の……!?」


「穢れた名で呼ぶな……(めぐむ)様の血によって俺は蘇った……俺の(あるじ)だ」


 少しだけ感情のこもった瞳をした剣一を見て、悟る麗音愛。

 どういう方法なのかはわからないが、椿の血で剣一は不死の騎士として蘇った。

 いつか椿が泣いていた夢を思い出す。

 あの子は自分の事で泣く子じゃない。

 きっとずっと……剣一を案じて泣いていたんだ。

 

「兄さんが、こんな事になって……椿は泣いて泣いて……苦しんでいたんだろ!?」


「……何を言ってる」


「何を言ってるはこっちのセリフだ!」


 麗音愛から斬り込む。

 兄の紅の瞳。

 精悍な輝きは見えない。

 

「正気に戻れよ!」


「黙れ!」


 瀕死になった兄を椿は助けようとしたに違いない。

 人質になっていたのは兄だった。

 きっと椿は自分を責めているだろう。

 今もきっと、この死闘を見せられて泣いているに違いない。

 残酷な仕打ちに麗音愛の胸も更に痛む。


「兄さんはそんなもんに負ける男じゃないだろう!」


 晒首千ノ刀と綺羅紫乃の刃が交わった。

 邪流と聖流が反発しあい、激しい風が巻く。

 

「白夜団で最強の聖騎士だった事を思い出せ!」


「俺はもう紅夜会の者だ!」


 遠くでカリンがヤジを飛ばしているのが聞こえる。

 巻き起こった爆風を避けて二人は、一度離れたが剣一の斬撃はまだ麗音愛を追う。

 

「兄さん……!」


「俺はお前の兄じゃない」


「それは……どういう意味で言ってるんだよ!」


 至近距離での護符での攻撃に、麗音愛の右肩の団服が千切れ吹っ飛ぶ。


「事実、そのままだ」


「くっ……」

 

 血の繋がりは確かに無かった。

 二人は兄弟ではなかった。

 それでも……それでも……!


「さぁ、まだ逃げる気ならば、これで追い詰めて最期にしよう」


 右肩を押さえる麗音愛。

 砂埃が舞うなか剣一の手に、槍鏡翠湖が握られてた。


槍鏡翠湖そうきょうすいこ!?」


「あぁ……不死になり桃純家の能力も使える……もうお前に負けはしない」


 桃純家の能力まで手に入れた。

 目の前に立つ、最強の男が槍鏡翠湖を構える。

 

「不死になった……だから俺はもう弱くないんだ」


「兄さんが……」


「あぁ。俺はもう、死に怯える事はないんだ」


 麗音愛は剣一が死を恐れる事が剣一自身の為ではない事に気付いていた。

 誰からも愛される男の、皆への愛の証なのだ。

 それが自分の使命だと信じ、それを全うする為に――死を回避する。

 それが彼の強さだった。

 不死になる前から完璧だった。

 

「それは弱さじゃないだろう……っ!」


 キィン! と槍鏡翠湖は剣一の手元で共鳴し、喜ぶように槍先が麗音愛に襲いかかる。

 刀から槍になっても、何も違和感なく繰り出す刃。

 リーチが長くなり、一気に不利になるのは麗音愛だ。

 思い出す同化剥がしでの闘い。

 しかし美子の槍さばきとは段違いの鋭さとスピード。


「俺は、姫を守り続ける……姫だけを愛する! それが俺の手に入れた愛だ……!」

 

「何を言ってんだよ!」


「俺は、永遠の愛を手に入れた!」


 天才という存在故の葛藤があったのかもしれない。

 誰からも愛される者故の孤独を感じる事があったのかもしれない。

 それでも、愛してくれる全てを愛し返す道を選んだのは剣一だ。

 その兄の口からこんな言葉を言わせる事は、彼の魂を冒涜している――!


「あんたはそんな事絶対言わねぇよ!」


 チリチリと麗音愛の周りの空気が弾ける……。

 怒りが……哀しみが……大切な人への想いが、心の奥で撹拌(かくはん)される。

 

「もう黙れ玲央! 首を斬り落としたあと聖なる力で焼き尽くしてやる!」


 剣一の覇気が濃くなり、構えた姿が聖流の流れで戦天使のように見えた。

 

「ぐあ!」


 浄化の作用が槍先から溢れ出し、触れていないのに麗音愛の身体を溶かす。

 更に突き刺された麗音愛の返り血で、剣一の軍服が更に紅く染まっていく。

 

「兄さん……!」


 いつも笑顔で家族を、皆を、自分を照らしていた兄。

 お調子者で女好きで遊び人の大学生だと思っていたのに、真の姿は真逆だった。

 土曜日はいつも帰宅し家族団欒の時間を作っていた理由は、死と隣り合わせの任務をしていたからだ。

 中学生から白夜団で闘い、天才ではあったが努力し強い力を持って皆を守っていた兄。

 

 幼い時、少し面倒くさそうにしながらも追いかける自分を追い払ったりしなかった。

 

 剣一が紅夜の腹に穴を開けていなければ、あの死闘から帰ってはこられなかった。


 何も知らなかった自分と椿を白夜団で導いて見守ってくれたおかげで、いつの間にか白夜団が自分の居場所になっていた。

 

 修行旅行での兄弟稽古では魂を燃やして、生き抜く為の闘い方を教えてくれた。

 

 椿とすれ違った時も、いつもフォローしてくれて……そのおかげできっと椿と想い合えた。


 あの残酷な事実を知って椿と逃げた時だって、剣一は何もかも知っていて……それでも

 『俺だって何があってもお前は俺の弟だと思ってる』そう、言ってくれた。

 

 いつだって味方だった……!!

 

 今までの過去の思い出が一気に吹き出す、

 

 どんな時だって、ずっと、生まれた時から俺の兄貴だった――!

 この絆を、兄が築いてきた誇りを、他の誰にもけがさせはしない!!


「首をよこせ!」

 

「うぉおおおおおおおおおおおおお!」

 

 麗音愛は槍鏡翠湖の柄を蹴り上げ跳んだ、晒首千ノ刀を剣一の首めがけて振り下ろす。

 

『麗音愛ーーー!!』


 紅夜城に椿の悲鳴が響く。

 剣一の首が飛ぶ!?

 しかしその瞬間、麗音愛は晒首千ノ刀から手を離した。


「いい加減に目ぇ覚ませ! このクソ兄貴ぃいいいいいいいい!!」


 麗音愛の右拳が剣一の左頬に叩き込まれる。

 その瞬間、一気に紫の炎が舞い上がり二人を包んだ――!!




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― 新着の感想 ―
[良い点] 目を覚ませ兄さん!!あーーー!!
[良い点] 兄弟愛ー!!!(´;ω;`) いいぞ麗音愛!早く目を覚まさせてやって〜! ヤジを飛ばすカリンにちょっと笑ってしまったw可愛いわw 麗音愛には是非、無表情で紅夜のウネウネ髪を掴んで床にビッタ…
[良い点] >兄の口からこんな言葉を言わせる事は、彼の魂を冒涜している――! >兄が築いてきた誇りを、他の誰にも穢させはしない!! ほんまここにめちゃくちゃビビッとを押したいですわ… 熱き兄弟の絆(…
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