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色の無い夜に・Colorless Night~最凶妖魔王を倒すため最強呪刀を継承した俺は、魔王に反旗を翻した妖魔姫とじれ恋学園生活しながら妖魔を討つ!  作者: 兎森りんこ
第三部 第二章

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兄弟死闘篇:無慈悲・そして椿の願い


 ナイター照明に照らされた校庭。

 剣一の綺羅紫乃が輝き、麗音愛を襲う。

 麗音愛も晒首千ノ刀でその一撃を受け止めた。


「兄さん!」


 紅い瞳の剣一は、もう答えはしない。

 代わりに斬撃が繰り返される。

 あの日の兄弟稽古も本気でやりあった。

 しかしあの時の厳しいながらも優しさを感じた斬撃ではない。

 

 溢れる殺意――。


「剣一! やめなさい!」


 母の直美が叫んでいる。

 皆が驚愕している様子が見えたが、剣一の攻撃を躱すだけで精一杯だ。


 麗音愛の身体が自動修復されるとはいえ、首を切断されればどうなるかわからない。

 

「くっ……!」


 剣一が護符を放ち、光の矢が麗音愛を襲う。

 紅夜に操られていても、聖なる力に愛されている――最強の騎士!


 麗音愛には剣一がどういう状態なのかわからない。


「逃げ回っているだけでは、永遠にこの闘いは終わらないぞ……!」


「闘えるわけないだろっ!」


 呪怨の翼を広げ、飛び上がる。

 このまま飛んで剣一から逃げるか!? そう思ったが夜空の様子がおかしい。


「結界……!?」


「――逃すと思うか」


 学校を覆うように結界がドーム状に形成されている。

 触れれば浄化の力でどれだけのダメージを受ける事になるか。

 逃げる事は不可能だ。


 戸惑い翼を空中で止めたが、風を切る音がすぐ傍で聞こえる。


「!」


 結界を足がかりに跳び上がった剣一からの強襲。

 打撃のような一撃に麗音愛は地面に叩きつけられる。

 しかし呪怨の自動攻撃だけで、咄嗟に剣先から転がり逃げた。

 

「お前も闘え! 一方的に追い詰め首を獲る事は望まれていない……!」


「紅夜は俺達が殺し合う事を見て楽しんでいるだけだぞ!」


天啓式てんけいしき聖雷法せいらいほう……れつ!」


 麗音愛の言葉をかき消すように、剣一が発動した雷術。

 天井の結界の通る事により威力が増し、更に麗音愛を追いかけるように連続の術発動。

 信じられない程、剣一の強さが増している。


 繰り出した呪怨の翼が右も左も雷によって破壊され、その隙を狙ってまた斬撃が追ってくる。


「ぐはっ!」


 肩、脇腹。

 白夜団の団服もまるで紙切れのように、剣一の綺羅紫乃は切り裂き貫き麗音愛の血が舞う。


 ◇◇◇


「麗音愛……!」


 玉座の紅夜の隣に座らされ、水鏡に映る惨劇を見せつけられる椿。

 麗音愛の血が剣一の軍服を染めていく。


「やめて……」


 紅夜は自分の左の席で泣く椿を眺めながら紅い酒のグラスを傾ける。

 右側に座らされた篝が、横目で紅夜を見た。


「たかが人間二人に随分執着するのね?」


「ふふ……古より神にとって人間の足掻きは興味深い玩具だ。なかなかに面白いだろう。愚か者の白夜の使いが滅び合う……愉快だ」


「……白夜様もあの子達も愚かなどではないわ」


「お前も俺に身を捧げた人間……立場的には俺の配下だ。白夜を崇めることなど、もう忘れろ」


「馬鹿な事を言わないで! それにね、あなたは神なんかじゃない!」


「……喚くな篝。俺はうるさいガキは嫌いだ。壊すぞ……?」


 わざとに落としたグラスが篝の足元で激しく砕け散り、酒も飛び散る。

 椿の白いパンプスの足元にもグラスの欠片が転がってきた。


「……いくらでも、どうぞ。私のような木偶人形はいつでも壊せばいいでしょう?」


「ほう」


 ニヤリ笑うと紅夜の長い長い黒髪が妖しくうねりだす。


「母様!」


 椿は拘束され、動けない。

 

「お待ちください、紅夜様……!」


 椿が叫んだ瞬間。

 後ろで控えていた絡繰門雪春が篝を庇うように、一歩進み跪く。


僭越(せんえつ)ながら、篝様は蘇ったばかりで不安定な状態です。診断と改善の時間をどうか頂きたく……」


「不安定か……」


「はい……身体の未成熟さに精神も引きずられている可能性があります。此処で篝様を手放すのは早計かと」


 雪春の表情に若干の焦りが見える。

 篝はその様子を黙って見ていた。


「いつも無表情なお前が珍しいな……まぁ俺は今機嫌がいい。いいだろう、さぁ酒を持って来い……」


「はい。ありがとうございます」


 篝が平然としている横で雪春は下がっていく。

 椿は紅夜の影になって姿の見えない母が、ただ無謀に紅夜に叫んでいるわけではないと悟る。

 この状況でも何かを見極めているのだ。

 

 椿も涙を拭う。

 泣いているだけでは駄目だ。今、自分にできることを考えなければ……。

 

『くっ!』


「麗音愛!」

 

 それでも剣一の無慈悲な斬撃が麗音愛を襲って鮮血が飛び散るたびに、心は激しく痛む。

 涙をこらえて両手を硬く握りしめた。

 

 剣一さん……。

 剣一さん……!

 貴方が、私の眷属でいてくれるなら……どうか私の心の声を聞いてください……!


 紅夜なんかに負けないで……!

 私の声を聞いて!

 麗音愛を殺さないで!

 

 お互いに尊敬しあう唯一無二の兄弟なのに!

 

 剣一さん……!

 紅夜なんかに負けないで!


 麗音愛……剣一さんは私の血のせいで……こんな状態になってしまった。

 ごめんなさい。でも、どうか剣一さんを助けて! 


「麗音愛……負けないで……!」


 麗音愛と剣一へ想いが通じるように必死に願う椿。

 だが水鏡に映る兄弟の惨劇はまだ続く。



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[良い点] ああ あわわわ 大変じゃぁ
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