表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
色の無い夜に・Colorless Night~最凶妖魔王を倒すため最強呪刀を継承した俺は、魔王に反旗を翻した妖魔姫とじれ恋学園生活しながら妖魔を討つ!  作者: 兎森りんこ
第三部 第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

412/472

死闘の前に


 紅夜城――。

 紅夜の玉座の前に呼び出されたのは母と娘。

 傍らに雪春が付き添う。

 ナイトの面々は既に軍服を着て椿達を見つめるが剣一の姿はない。

 

「久しいな篝。どうだ現世へ蘇った感想は……」


「お前が私を蘇らせるのなんて、想定済みよ。驚きもしないわ」


 椿の前に立つ篝は、幼女の姿だが覇気は戦姫のようにして紅夜にも怯えはしない。

 紅夜はそれを聞いて、楽しそうに笑う。


「しかしまた未成熟な身体で蘇るとは……しくじったか雪春」


「申し訳ありません。培養液で生成するのが此処までで限界という研究結果でした」


 雪春が頭を下げる。

 それを聞いて、一体どんな研究をしてきたのかと椿はゾッとした。


「まぁいい……傀儡のような偽りの姿だ。どうせ子を成すことはできないだろう……が、俺の子を産むことのできた唯一の女だ。また可愛がってやるぞ」


「嬉しくないわよ、この外道が!」


 篝が吐き捨てるように叫ぶ。


「お前たち人間にとって穢らわしいもの、妖魔の王に今更外道も何もないだろう」


「わかっているわ、お前は最悪の外道よ! それでも私がいるのだから娘に手を出さないで!」


「か、母様」


「この世にいられる間は、娘は守る」


 篝が椿と繋いでいた手を強く握った。


「はっはっはっ。お前のような出来損ないの傀儡一つで俺が満足するものか。この世で一番の女だったのは過去の話……一緒に可愛い娘を愛してやろうな……」


「ふざけるな!!」


 髪の毛が逆立つような怒りを顕にする篝。

 小さな炎が篝と椿の前に現れ消えていく。


「篝様、どうか紅夜様への暴言をお納めください。これ以上は紅夜会コーディネーターとして見過ごせません」


 紅夜は愉快そうに微笑んでいるが、隣に立つコーディネーターは篝を睨みつける。


「ふん、人間でありながら紅夜の味方をするクズどもが偉そうに……!」


「姫様との尊い時間を奪うことになりますよ? お納めください」


「もう、こいつと話すことはないわ。それで一体、なんのために私達を呼んだの?」


 此処に呼ばれる為に今日も最高級品のドレスと着物を身に着け、たっぷり時間をかけられ化粧をされたのだ。

 

「今夜は特別な余興がある……」


 玉座に座る紅夜の下に階段が長く続いている。

 その間に軍服姿で意識を失って倒れている剣一がスポットライトに当てられたように椿の目の前に現れた。


「……! 剣一さん!」

 

「寵、お前はこいつのあるじだ。こいつは昨日禁忌を犯して倒れたまま。お前が生気の補給をしてやれ」


「ほ、補給……?」


「触れてあげれば、主から眷属に伝わるはずよ!」


 篝の声を聞いて、椿が階段を駆け上がる。


「け、剣一さん……! しっかりして」


 剣一の頬に触れると、淡い光が灯る。


「どうして……禁忌って、また……」


 きっと、紅夜に抗う事をしたんだろうと椿の瞳に涙が込み上げる。


「剣一さん……! 剣一さん……!」


 抱き上げた剣一の顔に椿の涙が落ちる。


「う……椿……ちゃ……」


「剣一さん! やめて、その名は呼ばなくていい……呼んだら駄目……!」


「少し……抗いすぎた……」


「はい……もう……もう……何もしなくていいです! 紅夜に抗わないで……!」


「もう大丈夫……姫様……」


「起きたか、立て剣一」


 紅夜の声が無情に二人を引き離す。


「……はい」


「剣一さんに、何をさせる気!?」


 立ち上がった剣一を庇うように前に立ち、椿が叫んだ。


「寵。お前の同化している槍鏡翠湖(そうきょうすいこ)を、この男に渡せ」


「え……!?」


「あの愚かな白夜が創りし無能な人間に与えた『明橙夜明集(めいとうやめいしゅう)』……。槍鏡翠湖は俺のこの世界にも切り込みを入れる事ができる武器だ……」


「そ、それをどうして……」


「俺を倒すために創った武器を、人間どものために使ってやろう……剣一、カリンに転移結界は教わり習得しただろう」


「はい」


 階段の横に控え立っているナイトのなかでカリンが『私の教え方がいいからよ』と得意げに胸を張った。


「一体何を……する気?」


「槍鏡翠湖でこの世界と人間の世界を繋ぎ、妖魔達を送り込む」


「なんですって!」


 椿と篝の二人は驚愕し、闘真達ナイトは嬉しさで喜びの声を上げた。


「お前達の世界はまさに地獄になるだろう。実体化した無数の妖魔が人間を襲い、邪気は流れ込み妖魔化した人間は完全な妖魔になる」


「そ、そんな恐ろしい計画のために槍鏡翠湖を渡せるわけがない! それにいくら剣一さんでも綺羅紫乃と槍鏡翠湖の二つも操るなんて……」


「はは……そいつにはお前の血が流れているんだぞ」


 桃純家は他の一族の明橙夜明集とも同化できる能力があり、舞意杖(まいづえ)のような桃純家の特殊宝具との同化ではない限り自ら同化を解除し他人に渡す事も可能だ。


「まさか……継承同化を、剣一さんもできる……?」


「……嘘をついてごめんね……綺羅紫乃はもう俺のなかにいるんだ」


 剣一が右手を差し出すとキラキラと輝く光が集まり、聖なる刀『綺羅紫乃』が現れた。


「……剣一さん、何も謝る事なんて、ないです……」


 また涙を流している椿を見て、剣一も哀しげに微笑む。


「俺は君の眷属になって、幸せに思うよ……だから……」


「剣一さん!?」


 剣一は綺羅紫乃を握りしめ、玉座にいる紅夜に向かって斬りかかる!


「少しでも一矢報いる!」

 

「ふははは! まだ俺に抗うか!」


「うあっ! ぐああぁああ!!」

 

「剣一さぁん!」「剣ちゃん!」

 

 しかし刀が届くどころか、玉座に辿り着く前に、長い階段で剣一は倒れ込んだ。


「もっと強く縛らないと、ダメなようだな」


 愉快そうに紅夜は笑い、人差し指を剣一に向かって動かす。


「うううぐがああ!」


「やめて! やめてぇ!」

「やめなさい!」

 

 倒れ込んだ剣一を椿が抱きしめる。

 頭を押さえて、苦しむ剣一の見開いた目からは生気が消えたように感じた。


「剣一さん……」


「さぁ、槍鏡翠湖をそいつに渡せ」


「……そんなことできない……」


「それではお前の目の前で白夜団の人間を一人ずつ殺していこう……そうだな咲楽紫千家の人間の手足をちぎっていこうか。団長の女はどうだ?」


「や……やめて!」


「寵姫、どうか槍鏡翠湖を俺に渡してください」


「……剣一さん……」


 椿の手から抜け立ち上がった剣一の瞳は紅く光り、陰っている。

 もう完全に紅夜の配下に堕ちてしまったのだろうか。

 

「剣一、穴は向こう側から開けなければならない。弟の首を持って穴を開けて此の世界に戻れ」


「はい」


「咲楽紫千の首に、地獄と化した人間どもの叫び声……最高の祝宴になる」


 絶望に椿はまた倒れそうになる。


「……椿、今は大人しく槍鏡翠湖を渡しましょう」


 椿を支えながら篝が言った。

 

「母様」


「麗音愛を信じましょう」


 確かに紅夜城と人間世界が繋がるのは麗音愛との闘いの後……。

 麗音愛が剣一と闘い勝てば阻止することはできる。

 今はそれに賭けるしかないが、麗音愛の勝利は剣一の滅びを意味する。

 

「……はい……」


 それでも今はこれしか方法がない。

 槍鏡翠湖を手元に出現させ、剣一に渡す。

 剣一はすぐに同化させ槍鏡翠湖は消えた。


「剣ちゃん……いくら桃純の血が入っているにしても……此処まで使いこなすなんて……」


 不死と桃純家の血を手に入れた彼は、最強の騎士になった。

 もしも白夜団のままであれば、どれだけの人を救えただろうか――。


「血をたっぷりと浴びて帰ってくるがよい」


「御意」


 紅夜の笑い声を背に、剣一は玉座を去って行く。

 言葉に詰まる椿は背中を見守るしかできない。

 剣一の帰りを願う事は麗音愛の死を意味する。

 

「寵、篝、お前達も此処で余興を楽しむがいい。さぁ宴が始まるぞ」


 紅夜が手を上げると、巨大な水鏡が出現する。

 闘真が興奮で飛び上がった。

 

「いや……麗音愛と剣一さんの闘うところなんて見たくない……!」


 泣き喚く椿と、それを支える篝は拘束されて、紅夜の両隣の椅子に座らせられた。

 残酷な死闘が、始まろうとしている。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ