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色の無い夜に・Colorless Night~最凶妖魔王を倒すため最強呪刀を継承した俺は、魔王に反旗を翻した妖魔姫とじれ恋学園生活しながら妖魔を討つ!  作者: 兎森りんこ
第三部 第二章

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悲しい誕生日


「今年は本当に雨ばかりね……」


 直美が本部団長室から窓を眺める。

 紅夜が覚醒めてから直美の心労は募るばかりだ。

 剣一と椿が行方不明になって更に痩せた母を麗音愛は見つめる。


 秘書が淹れてくれたルイボスティーが二人の間で少しずつ冷めていく。


「母さん、ちゃんと食べれてる?」


「えぇ、貴方こそ……」


「なんとか大丈夫」


 直美にも『剣一は生きている』そう告げた。

 だが、どんな状況なのかはわからない。

 椿は紅夜会にとって姫様だが剣一は違う。

 捕虜として酷い扱いを受けているかもしれない。

 彼の無事を心から願う母がどれだけ苦しんでいるか……。


「今日は、あなたの誕生日よね……母さんの、私の嘘だったけど」


「嘘だったとしても家族でずっと祝ってもらった事は嘘じゃない」


「玲央……」


 直美は椿が麗音愛の誕生日を祝うために飾りを作り準備していた事を報告書で読んでいる。

 椿がいればどんなに楽しい誕生日会になっていただろうか。

 涙が溢れそうになってハンカチで拭った。


「お祝いは……?」


「誕生日祝いは椿とするよ。椿と兄さんが帰ってきたら、みんなでさ」


「そうね……じゃあ、おめでとうはその時に言うわね……夕飯は?」


「うん。椿と双子だって鹿義達は知らないから、気を遣って……なんか旨いもの作ってくれてるみたいだから帰るよ」


「そう……いいお友達ね」


「うん、みんなに助けられてる」


「友達……入院している時にね……夢を見たの」


 直美が儚げに微笑む。


「どんな?」


「篝の夢……」


「篝さんの……」


 椿と麗音愛の母。直美の親友だ。


「頑張れーって言うのよ。向こうは若い少女の頃のまんまで……私は疲れ果てた病院のパジャマ姿でね。私は何を無責任な事言うのよ! ってこんなに辛くて……もう無理……って泣き言を言っちゃったんだけど」


「うん」


「それでも頑張れ! 貴女しかいないの! って言うからね。運動会じゃないのよ、いっつもいっつも無理難題言って! って段々腹が立って」


「母さんが? うん」


 直美の言葉に少し麗音愛が笑う。


「それでもいっつもなんとかしてきたじゃないの! 咲楽紫千直美団長! なんて自信満々の笑顔で言うから、泣いて腹が立ってたのに、最後にはそう言われたら、そうかもね……って呆れながらも笑っちゃった」


「うん」


「とりあえず起きて、おかゆを口にしたわ。寝込んでいられないとね」


「夢枕かな……親友だもんね」


「本当にね……さぁ、これから『人間妖魔化現象』についての説明をまたしてくるわ」

 

 あのスタジアムでの妖魔暴走事件は、出回っている動画を除けば隠蔽工作は完璧に行われた。

 死亡理由も書き換えられ、沙藤は自殺という事で処理された。

 『白夜団存続』は結果的に有耶無耶になり、結論は出ていないが『あんな化け物と戦うには化け物が必要だ』という考えは刷り込まれたようだ。

 

 今、一番問題視されているのは『人間妖魔化現象』だ。

 例のスタジアムでの事件の動画と共に、徐々に人間が化け物になる奇病が流行りだしている……と噂が広まってきた。

 そして、それは噂だけではなく実際に患者が増えている。

 治療法が無い今、皆をどう守っていくのか……それを話し合いに行くと言う。

 宿目七や手練の団員が同行するというので麗音愛も護衛は任せる事にしたのだ。


「うん、じゃあ。俺も頑張るから」


「玲央……いつもありがとう。あなたも身体に気を付けて」


「うん」


 廊下を歩く麗音愛。

 自分の足音しか聞こえない、静かだった。

 しかし後ろからの足音が聞こえる。


「玲央先輩!」


「加正寺さん」


 ショートヘアを揺らして琴音が走ってくる。

 

「お誕生日おめでとうございますっ! 今日、ですよね?」


「あ……うん。ありがとう」


「色々あって……ありすぎて、そんな気分じゃないかもしれませんけど……これお祝いです」


「わざわざ……ありがとう」


「先輩……!」


 麗音愛の微笑みを見て、琴音は頬を染める。


「あの、私もSNSでまたあの男……絡繰門雪春が接触してこないかって色々試しています」


「SNSで……ありがとう、でもあまり勝手な行動はしないようにね。危ないから」


「はぁい!」


 それ以上は琴音も何も言わず去っていった。

 プレゼントの中身は、リラックスミュージックのCDとハーブティーだった。


「へぇ~一応状況をわきまえてるんだね」


 いつもの白夜団高校生メンバーが集まる夕食。

 控えめだがいつもより豪華な梨里の料理が並ぶ。


「お互いにいい同僚って感じだよ」


「まったぁ~玲央ぴは相変わらず無防備だってぇ。ま、今日は誕生日をささやかにお祝いしよー」


「ご馳走ありがとう鹿義」


「美味しいもの食べたら少しは気分もあがるっしょ~ハピバー!」


「お誕生日おめでとう玲央」

「サラ、こんな時ですが、おめでとうございます」

「椿が戻ったら、盛大に祝おうぜ」


「みんな、ありがとう」


 静かな誕生日会。

 椿がいない、悲しい寂しい切ない思いで胸が張り裂けそうになる。

 皆の想いが少しの慰め。


 何も成果が出ない日々を責めるものは誰もいない。

 だが状況は日に日に悪くなっている事はよくわかっている。

 今日もまたネット上で拡散される化け物情報。

 

 ただ爽子が『カメリアは魔物が嫌がる術式が組み込まれた聖歌っす』と説明した動画の再生数は100から200と失敗と見なされたが少しずつ影で伸びていた。


 

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