切なさ椿とカタログ未来
麗音愛が偶然にも琴音と一緒に昼食を食べている姿を
遠目に椿も見ていた。
もうすっかり元気だが色々な人に声をかけられ、ありがたいと思いながらも少し疲れてしまった。
甘いコーヒー牛乳を飲みながら麗音愛を見つめる。
「あ、玲央君じゃん……加正寺さんといる……
なんかさ~……かっこよく見えない?」
椿が少し苦手な
付き合う男の子がコロコロ変わる加代が言うと、みんなが麗音愛を見た。
「え??」
「あ~……確かに、なんでだろ
あの琴音って子と一緒だから?
あの子目立つし」
「いっつもそんな風に見えないもんね……あ、ごめん
でも……うん、今日はなんかイケてる」
「だからさ~玲央君たまにすごくかっこい……なんでもない」
海で麗音愛を誘った詩織が
言いかけてやめる。
「そういえば加正寺琴音と一緒にいるの見て
こんな人いた? って気付いた~って話聞いたわ~
ちょい注目かもね」
「えっ……えっ……」
皆が急に麗音愛について話をしだし椿は変に焦ってしまう。
「加正寺琴音といるの見て気付いても
遅いじゃ~ん、でも付き合ってないんだっけ?」
「う、うん……」
「みんな、やめなよ~
椿の前でさ、椿のイトコなんだよ」
みーちゃんが、戸惑う椿の横で呆れたように
しかし強く言った。
「褒めてるんだよ」
「だよだよ、やっぱ次さダンパ前に合コンを……」
麗音愛の話で盛り上がりそうになった時、また空気が切り裂かれたように変わる。
「……えっと……?
なんだっけ、そういえばさ~昨日の『アルパカは10日後も草をはむ』でさ」
「あ~やばかった! アルはむ!」
最近話題のドラマに話は変わった。
椿は、またモヤモヤ発作が起きているのを感じる。
麗音愛が気を遣って、お互いの学校生活では
距離をとっている事はわかっていて感謝もしていた。
でも、麗音愛と一緒にお昼御飯を食べたい。
そう思う気持ちもあった。
琴音が羨ましい……。
ズキリと痛む心、そして
琴音と一緒にいる麗音愛が皆に注目されている……。
やはり華やかな琴音の隣だからなのだろうか。
「椿ちゃん、良かったね。心配したよ」
「きゃー川見先輩だよ! 椿!」
思考は現実に引き戻される。
川見の笑顔に、椿は疲れながらも笑顔で応えた。
放課後、麗音愛が一緒に帰ろうとメールをくれて
椿はスキップで麗音愛の教室へ向かったが何やら騒がしい。
「おま、ふざけんなよぉおおおおおお!!!」
「騒ぐなってカッツー……」
「どうしたの? 麗音愛」
「あ、椿なんでもな……」
「裏切りモンなんだよ!!
ラブレターだとぉ!?」
「違うって!」
「ラブレター……」
「昼間にぃ? 俺がいない間にぃ?
女子に声かけられてPLIN交換だと!?」
「してないって!」
「私がちゃ~~んと先輩の代わりにお断りしてあげましたので大丈夫ですよ
椿先輩」
麗音愛の影から、琴音が顔を出した。
「琴音さん……」
「ちょっと早めに終わったんで、玲央先輩に会いに来ちゃいました。
でも帰りますよ、さよ~なら~」
まだ騒ぐカッツーの横を通り過ぎて琴音は教室から出ていく。
琴音がいた事で皆が集まってきただけなのか
人だかりはすぐになくなり、カッツーは泣きながら帰っていった。
「はぁ……椿、帰ろう。疲れたろ、家でゆっくり休もう」
「……うん」
帰り道、椿には学校中の皆が手を振る。
「はぁ……」
「疲れたね」
「ちょっとだけ……」
「また下駄箱にラブレター?」
「……ダンパの事でね。
麗音愛こそ、ラブレター」
「だから誤解。加正寺さんと仲良くなりたい人だったんじゃない?
俺は……いらないしそういうの」
「うん。私も」
家までの距離。
昨日、熱を出して学校を休んだ身だけど
椿は帰りたくなかった。
帰宅すれば、また自分の部屋に戻ってもう会えない。
どんどん、ワガママになっていく自分の心を感じる。
「ちょっとだけ……スーパー寄ってく?
疲れない程度にコロッケとか」
「う、うん!! コロッケ食べたい!」
結局、麗音愛は気遣ったが
コロッケを食べ終えベンチでゲームで盛り上がって帰宅したのは夕飯前だった。
「じゃあ、明日ね」
「うん……」
「龍之介に何かされたらすぐ電話して」
「うん、ありがとう。また明日ね」
多少の緊張はあったが、家は真っ暗で誰もいない。
机を見ると、カップラーメンが乗っていた。
いつも準備されていたのでは申し訳ないと、夕飯も当番制になって
今日は龍之介だったはずだ。
手紙も一緒に置いてある。
『急に本部に呼ばれたから、ごめん
梨里は外で食べるって、これ食って!』
「……なんだ」
カップラーメンは大好きなので、それに文句はなかった。
メールもしない約束なのはルールで決めたからだ。
でも早く聞いていれば、もう少し麗音愛と……。
「私、どんどん嫌な子になっちゃってる……」
そう呟いて、椿は手洗いをし自分の部屋へ戻る。
連日の迷惑を考えるともう、麗音愛に連絡はできなかった。
寒い部屋。
無意識に寒さを我慢して過ごしてしまう椿は、ドレスのカタログに手を伸ばす。
団長秘書の佐野さんから、ドレスを決めたか連絡が来たのだった。
佐野さんも優しさから
『1番安いのでいいなんて決め方をしたら、アドバイザーを派遣しますからね』
と言ってはくれたが
綺麗で華やかなドレス……どれがいいのかなどわからない。
カタログの中で笑う美しい少女達。
こんなドレスを着た女の子がいつか麗音愛の隣でダンスをする光景を
見る事になるんだろうか。
「……はぁ」
後ろのベッドに持たれた。
命を懸けて、成し遂げなければならない使命がある。
宿命があるのに、こんな事で揺らめいて心が痛んでいてどうするんだろうか。
御守りの麗音愛の第二ボタンを握りしめた。
宝物だが、麗音愛を巻き込んだあの死闘。
それから闘い続ける……運命。
ふいに闘真との会話を思い出す。
『姫様!』
『お前らはもう、いい加減にしろ!』
『姫様もいい加減に自分のお立場を考えてくださいよ!!』
『うるさい! 麗音愛を傷つけるな!!』
『だって、姫様があいつと一緒にいるからですよ!! 』
こんな呪われた罰姫は、自分だけだ……。
どんな女の子が麗音愛の隣に立ったとしてもきっと幸せになれる。
寒気がして、やっとエアコンをつけた。
そして椿は雪春が置いていったカタログが目に入り
それを手にとった。
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