修旅~壮絶稽古終了!~
「麗音愛!!」
爆風に煽られながら、椿は必死に麗音愛と剣一の元へ走る。
「椿……! 兄さんを!」
「……っ! 麗音愛!」
煙が晴れる前に、麗音愛の声が聞こえすぐに駆け寄った。
戦闘の煙ではなく再生の煙が麗音愛を包んでいる。
顔半分は呪怨に覆われ
ビリビリに破れたウェアから溶けた身体が見えた。
「麗音愛!」
「椿、俺は大丈夫。
お願いだから、兄さんを……怪我をしている!」
剣一がいるだろう方向を指差した手を
ぐっと握った。
冷たい手を温めるように――。
「うん、わかった!!」
逆の方向へまた走る。
血の匂い――!
「剣一さぁん!!」
「……大丈夫……」
「剣一さん!」
煙の中で血の海に横たわる剣一。
状態を見るまでもなく、すぐに遠距離から紫の炎で包んだ。
そして、元へ辿りつく。
「あぁ……あんがと……」
「剣一さん!」
左手がほぼ切断されかけている。
椿は傷を両手で包む。
「へへ……玲央を煽りすぎたな……」
「大丈夫です、すぐ治ります」
同化している舞意杖に訴えかけるように
最大限の炎を燃やす。
濃い、濃い紫の炎が2人を包む。
左腕も晒首千ノ刀の斬撃を受けて
形が残っているだけでも奇跡だ。
その奇跡を起こしたのは他ならぬ剣一自身。
体中は傷だらけだが
百の妖魔でも1人で倒せる麗音愛相手に
生身の人間があそこまでの稽古ができるとは思わなかった。
「兄さん……」
麗音愛が身体を引きずりながら、剣一の元へ来た。
「麗音愛も、こっち来て」
言われるままに傍にいくと、手を掴まれ
剣一の隣に寝かされ一緒に炎に包まれた。
「……兄さん、ありがとう」
「……あぁ、お前に稽古できて良かったよ」
2人で寝たままだが
お互いの無事がわかり安堵した。
その想いもまた通じ合う。
「さっきのなんとなく、わかった」
「そりゃ、一回でわかられてたまるかよ……」
「ほどよく混ぜろっとか言って、全てを輝きにって
ずるいよなぁ……」
「仕方ねーだろ、詠唱なんだから」
ふん、と剣一が笑って、麗音愛も笑った。
「椿のおかげだよ」
「そうだな……椿ちゃんのおかげで
真剣に稽古できた、ありがとう」
「だから、ごめんね
泣かないで椿」
2人を癒やす炎のなかで、ポロポロと大粒の涙をこぼす椿。
「ありがとう、椿」
剣一の腕が治癒した事を確認して、椿の瞳からはまた涙があふれて
寝転んでいる麗音愛にそのまま抱きついた。
「ごめん、椿、心配させたね……」
少し驚いたが、胸元で何も言わず泣く椿の頭をそっと撫でる。
「剣一ぃ! 玲央ぉ!!」
まだ収まらない煙のなか
遅れて武十見達がやってくるのが見えた。
徐々に収まる紫の炎。
麗音愛も剣一も傷ひとつなくなり、力を使い切った椿は
泣き疲れたように頬に涙の痕をつけたまま
麗音愛の胸元で眠っていた。
「おい! 妖魔が発生している!
気をつけろ!」
「!」
武十見達が遅れたのは爆風の煙だけではなく
2人の闘いで乱れた邪流、聖流の影響で妖魔が大量に湧いて出たのであった。
麗音愛達3人の周りを全員が取り囲む。
「玲央先輩!」
「椿ちゃん、どうしたの!? 大丈夫!?」
「何があったんです、玲央君」
「俺達を治してくれて、疲れさせてしまった……」
麗音愛も剣一も服はボロボロにちぎれているが
その下はもう怪我はない。
椿の無事を聞いて雪春が安堵の息を漏らす。
眠った椿を、麗音愛が抱き上げ、
その寝顔を見つめる麗音愛の横顔から琴音が目を背けた。
剣一はまだ座ったまま
美子から渡された水を一気飲みする。
「剣兄は休んでろ」
「こんな雑魚らは俺らで十分
玲央、今日は稽古はつけてやれんかったが、この手朱丸の動き
目に焼き付けておけ!」
「手朱丸……」
手朱丸とは二刀流鎖鎌だった。
右手には鎖鎌、左手には鎌。
大男の武十見ならば、太刀や大斧でも扱うのかと思い
麗音愛は少し驚いた。
「あれ、刀殺しだからさ~~気を付けろよ」
「何を言うか!
これは妖魔を滅するための力……っ!!」
地を走り空を舞い集まってくる妖魔にむけて
武十見は鎖分銅を振り回し挑んだ。
その分銅は子供の握り拳ほどだが、武十見の術式によって
当てられた妖魔は飛び散るように粉砕されていく。
逆では、龍之介が何百もの針を出現させ
地面に縫い付けた妖魔を、 片手斧『折鬼』で
くの字に折るように叩き斬っていく。
「出番なしっかぁ」
梨里はメイスをくるくる回し
伊予奈と美子、琴音が張った結界の中で剣一の横に座った。
「上手よ、琴音さん」
「あ、ありがとうございます!
初めての結界……! う、嬉しいです」
チラリと麗音愛を見たが、言われたように
武十見と、龍之介の戦闘を見ている。
琴音は落胆のため息を漏らした。
その後も順調に妖魔退治は終わったが、その後の
浄化作業でまた時間がとられた。
ところどころ地形が変化しており、それも雪春と琴音がデータとして収集し
地盤が緩んだ場所はないかと調べると結構な時間がかかった。
「あ~ちくしょ~疲れた」
「佐伯ヶ原君は特に何もしていなかったでしょ」
「無駄な時間を過ごすのが1番疲れる」
椿を寝かせた後は、皆と作業をしていた麗音愛に雪春が声をかける。
「見事でしたね」
「いえ、兄に稽古してもらっただけで
実際コテンパンにやられただけですよ」
「君達兄弟の強さには恐れ入ります。
お疲れ様だったね。差入れに豪華なお弁当を持ってきたから
しっかり食べて休んで」
「わーい!どこのお弁当ですか?」
麗音愛が戻ったのを見て近寄ってきた琴音が話に入ってきた。
「中華の緑苑のオードブルや、女性向けにヘルシーなドナベジのお弁当も買ってきたよ」
緑苑は老舗の有名中華料理店。
ドナベジは最近話題の野菜料理メインの行列店だ。
「すっご~い、ドナベジ嬉しいです!」
「琴音さんには、もう1つ、差入れ……?
があるんだよ」
「えー!? なんですかぁ?」
ニコニコと琴音が微笑む。
デザートはなんだろう?というような顔。
「加正寺の分家から
明橙夜明集を預かってきたよ」
「え?」
先に驚きの声をあげたのは麗音愛だった。
いつもありがとうございます!!
兄弟稽古終了です!
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