修旅~聖と邪の流れ~
武十見の運転するマイクロバスが一定の場所を通過した。
それは白夜団にとっては守護となる聖なる力が流れるポイントだった。
「うっ」
麗音愛が口を押さえる。
浄化結界ほど、作用は強くはないが
晒首千ノ刀と同化し、呪怨を纏う麗音愛にとっては聖流は毒になる。
「麗音愛大丈夫?!」
「大丈夫……少し気持ち悪いくらい……」
「玲央先輩……!」
琴音も立ち上がって麗音愛を覗き込むし
美子も佐伯ヶ原も同じだ。
「だ、大丈夫だよ、みんな、ありがと」
「サラ……一応、この袋……うっ!!」
次に麗音愛以外を不快感が襲う。
邪な流れ、邪流。
健やかに生きるものを死滅させ、妖魔や呪怨など穢れたものの力になる。
「おーい、玲央だけじゃなく
全員の修行だからなー。こういう場所なんだよ聖と邪の混沌」
「もうすぐ着くから、バスは汚すなよーー!!」
さすが部長格の2人はなんの変化もないようにケロっとしている。
「そんな、聞いてな……ううっふざけんなよぉ……」
「椿は大丈夫?」
美子も佐伯ヶ原も琴音も、ぐったりと座席に寝込んでしまう。
「私は、大丈夫」
「あと15分くらいだー!
邪流も突っぱねて逆らい過ぎるな! ある程度流れに沿って合わせろ!」
「そんなの急にできないわよ剣一君!」
叫んだ後、すぐに臥せってしまう美子。
「椿ちゃん、3人ともあんまり辛そうだったら浄化しながら……お願い~!
まぁよっちゃんと加正寺さんは非戦闘員だし!」
「はい!」
逆に麗音愛は、呪怨が邪流によって力を帯てきているのを感じる。
暴走まではいかないが自分の手から溢れそうな感覚。
ぐっと意識を集中し統制する。
「椿ちゃん……ありがとう」
後ろの2人を青い炎で包んだ椿は
琴音にも声をかけた。
「琴音さんも」
「わ、私はいいです」
「でも、すごく具合悪そうだよ?」
「全然です!」
「でも」
「大丈夫です! このくらいでへこたれてたら……」
「え?」
「いえ、大丈夫。少し船酔いした程度です」
炎に包まれ楽にはなったが山道の悪路に曲がりくねった道。
何やら聞こえてくる叫び声のような音。
白夜団の若者達は心で悲鳴をあげながら到着を待った。
そして、森の中でバスは停まる。
「みんな大丈夫?」
麗音愛が皆を気遣う。
「私と佐伯ヶ原君は椿ちゃんの結界で平気だったけど……」
琴音がぐったりとなってシートに横になっている。
「サラは?」
「俺は、平気だよ」
「琴音さん、動けない……かな」
剣一に降りるぞーと言われ、琴音の状況を伝えると
『玲央、連れてきてやって』と言われてしまう。
確かに此処で琴音を運べるのは麗音愛だけだろう。
「じゃ、私、麗音愛の荷物を運ぶね!」
「あ、うん。ありがとう」
とりあえず狭い通路から皆が出て
麗音愛が琴音に声を掛けた。
「す、すみません……玲央先輩」
「喋らなくていいよ」
「わ、私、頑張りたくて」
「うん、わかってる……でも無理はよくないよ」
「……私も団員ですから……」
バスの狭い通路を支えながら歩き、とりあえずバスから降ろす。
「大丈夫か! 加正寺!!
そこがすぐバンガローだから連れて行ってやろう!!」
「ひぇ!? け、結構です!! きゃー」
武十見がヒョイと琴音を持ち上げ、行ってしまった。
ふぅっと安心したのも束の間。
「れおれお―!!!」
キーンとする声。
もう暗くなってきているのに目立つ蛍光色のトレーニングウェアを着て
走ってくるのは
東支部の鹿義梨里だ。
抱きついてくるのを、さっと交わす。
また抱きついてこようとするのを手で停めた。
「鹿義さん、そういうの俺は迷惑だから」
「んーもう!! リリィだってば!
アタシ待ちたびれたってのに~」
「そんなに遅れはないはずだよ」
バスの横に、ちょこんと待っている椿に歩み寄る。
「待っててくれたの? ありがとう」
「う、うん!」
「ヤッホォ~姫じゃあ~ん」
梨里は椿を抱きしめた。
今日も厚底のスニーカーなので
モデル体型の梨里の豊満な胸が椿の顔に押し付けられる。
「く、苦しいー! それに、姫ってやめてください」
「可愛いじゃん~」
「嫌がってるだろ」
「せっかく合宿なんだから、仲良くしようね姫~」
また、ぐぎゅ~っと抱きしめられると
麗音愛にウインクして『あっちだよ~』と梨里は案内するように先に歩いて行ってしまう。
おどろおどろしい館を想像してしまったが
新しい会館と、周りに宿泊用だろうか綺麗で素敵なコテージが何棟かある。
「とりあえず、こっち来~い」
剣一が手を振っている。
会館前に、皆が待っていた。
龍之介もいるが、もう1人女性もいる。
「いや~、まさか伊予奈さんが来てるとはね」
剣一が隣で笑ってる。
「あぁ、これが噂の弟君ね。お疲れ様です玲央君」
「お疲れ様です、よろしくお願いします」
「剣一君と違ってしっかりしてるわね。
教育部の合波伊予奈です。東支部の引率も兼ねて来ました。
長旅お疲れ様、玲央君
今、夜十木さんが加正寺さんを救護室に寝かせてきたら
とりあえず皆さんの宿泊場に案内するわね」
龍之介が椿に近付いてきたので、椿は麗音愛の影に隠れる。
「龍之介、剣一君もセクシャルハラスメントは厳しく! 処罰しますよ」
「俺にまで言わないでくださいよ~」
「伊予姐の基準が古過ぎんだよぉ」
ドタバタと武十見が戻ってきたが、なんと琴音も一緒だ。
「寝ないと強情で聞かなんだ、根性があると見込んで
まぁ連れてきた」
「全然! 平気です」
「すげぇ……お嬢様だけど、さすが加正寺ってとこか」
ぴゅーっと龍之介が口笛を吹く。
美子や佐伯ヶ原も徐々に身体が慣れてきたのを感じ
ある程度は普段通りに動けるようになった。
「よし! それでは今日の宿場にまず案内しよう!」
案内も何も、すぐそこにコテージは見えている。
と、若手白夜団は思ったが
荷物を持って大人しく武十見に着いて行くと、
コテージは通り過ぎ、もう日は落ちて
どんどん暗くなるなか不気味な洞窟がそこに現れた。
「……なに、ここ……気持ち悪い……」
美子以外の全員も、もちろんそう思う。
洞窟の中は、真っ暗の闇、ひゅううう……と嫌な風が頬を撫でた。
「さぁ! 行くぞ!」
武十見が松明を皆に掲げる。
火の粉が舞った。
「え? ……宿場って……ここの中? 嘘でしょ」
美子以外の全員も、もちろんそう思った。
いつもありがとうございます!
ひとつ修正です。
梨里の名字を鹿野から鹿義に変更いたしました。
評価☆、ブクマ、感想、レビューが私の宝物です
大変励みになっております。
また読んで頂けますように頑張ります!!




