2人の想い、気付く恋(2人想いmix)
夕飯も食べ終わり、お腹いっぱいのまま
また遊びだす。
まばらな人のなか、たまにすれ違うカップルは手を繋いでいた。
今まで、そんな事何も気にならなかったのに。
でもちらっと見ると、にこりと微笑んでくれて
隣にいるだけで胸は幸福感でいっぱいになる。
「さて、そろそろ閉園になるかな」
「え~~もう!?」
「今日は特別長くやってる日なんだよ、それでも
フィナーレとかも別にないんだけどね……」
「そっかー観覧車やってないの残念だったね」
暗い観覧車には工事中の札がかかっていた。
「きっと1番上から見たら綺麗だったろうね」
「そうだね、街の夜景が見えるかな」
「ざ~んねん~」
「ん」
「ん?」
観覧車の前で立ち止まる麗音愛。
「どうしたの?」
「ちょっと待って」
どこかに電話をかける麗音愛。
「すみません、ほんの少し
一瞬だけなんでお願いします! 少しです!
あ、はい。
どうも、ありがとうございます」
「? 大丈夫?」
「うん、お見張りさんに電話して……困らせてると思うけど
今日も色々使ったし……まぁ処罰されるならそれでいい」
「色々使った……? もしかして呪怨で飛んできてくれたの!?」
「あぁ、うん。でもその事はいいんだ。
椿、ちょっとこっち」
皆が入り口に向けて歩くなか
麗音愛は椿を連れて、ひと目のあまりない木の影に向かう。
「れ、麗音愛??」
麗音愛は自分の上着を脱ぎ始める。
「なっなにして」
「これ着て、鞄しっかり持ってて」
椿の肩に上着をかけてバッグを両手で握らせる。
「?」
「よし」
ひょいっと椿を抱き上げる。
「捕まってて!」
「わぁ!」
椿も慌てて麗音愛の首に手をまわし抱きついた。
麗音愛が地面を蹴り上げると飛び上がる身体。
身体が浮かぶ浮遊感。
ドンッと観覧車の真ん中の支柱に立って
そっと椿も降ろした。
後ろから肩を支える。
「わ、わぁー夜景が」
目の前には2人の住む街の夜景が広がっている。
星とは違う輝き。
「怖い?」
「全然大丈夫! とっても綺麗! 」
椿は喜びの声を挙げた。
後ろにいるから、どんな顔をしてるかわからない。
でもきっと笑ってくれている。
いつだって、笑顔で喜んで楽しんでくれて
自分も楽しくなって……。
椿の笑顔のためなら、なんだってできる気がする。
親友だから……?
違う、いい加減、認めろ自分
俺は男で、椿は女の子で
俺は……椿が好きなんだ。
「くしゅ」
椿が小さなクシャミをした。
「! ごめん寒かったね」
「ううん! もうちょっと…見ていたい」
「このまま飛んで家まで帰りたいところだね」
「あはは、無理だよー怒られちゃう
一緒にいられなくなっちゃうかもっ」
「……それは困る」
「……うん」
愛しい気持ちで胸がいっぱいになるが
この大切な友情が壊れるのは怖い。
椿は親友。
闘いを乗り越え、何でも話して笑って遊んで
そんな友達は初めてだった。
この綺麗な関係が終わってしまうのではないか――。
そして1番親しい存在の自分が
そんな恋心を椿に告げれば椿は拒否もできないと
悩ませて苦しませてしまうかもしれない。
誰よりも自分の存在を気にする女の子なのだから……。
優しい温もりを肩に感じていた椿。
とても綺麗な夜景で涙が滲んできた。
今すぐ振り返って、麗音愛を抱きしめたい。
抱きついて、抱きしめられたい。
どうして、こんな気持ちになるんだろう。
悲しくなったり、嬉しくなったり
新しい生活は、刺激的で毎日とても楽しい。
でも、それだけじゃない
麗音愛がいつも傍にいてくれるから――。
強くて、優しくて
誰にでも優しくて
麗音愛が他の女の子と一緒にいるのが悲しい…。
大好きなんだ……
麗音愛が……。
本当は彼の一番になりたい……。
抱きしめてもらいたい
大好き……。
これが、みんなが言う、恋なんだ……。
きっと……きっとそうなんだ。
こんなに好きな気持ちが大嫌いになるなんて絶対にないって誓える……。
でも私には恋をする資格などない。
罰姫の私が、いくら晒首千ノ刀と同化していても
幸せな未来を歩める男の子に、何を求めるのか……。
ハラリと一粒、椿の瞳から涙が溢れた。
「……椿?」
「うん……
ねぇ麗音愛」
「うん」
「私達は親友だよね」
2人の絆の言葉。
大切な言葉が
今日は2人の心に棘を刺す。
「うん、親友だよ」
「うん……」
「大事な親友だ……」
その言葉で、また椿の瞳からもう一粒
涙がこぼれ落ちる。
「うん……私も……そう思ってるよ」
「うん、ありがとう」
びゅうっと強い風が吹き、椿が震えたのがわかった。
「椿、もう行こうか」
「うん」
降りるだけなので、腕を支えて
サッと飛び降りる。
お互いが秘めた想いをぎゅっと腕に込めた。
降りると椿はまた笑って、くるくるぴょんぴょん飛び跳ねる。
「すっごく綺麗で
遊園地ぜーんぶ楽しかった!!
麗音愛ありがとう!!」
「うん!
良かった!」
「ラーメン食べて帰ろう!」
「いいね!」
きゃっきゃと友達の距離で、また歩いていく2人。
ラーメンを食べてから椿を部屋まで送って
門限までに帰ると、母の直美がリビングにいた。
「ただいま、母さん帰ってたんだね」
「加正寺さんとのデートどうだったの?」
帰りを待っていたかのように
直美はウキウキしたような顔で聞く。
「あ~……うん、任務も入れちゃったし
そんな盛り上がりもせず夕方には解散したよ」
「任務?! どうして……!」
「必要だったし、雪春さんに許可はもらったよ」
「なんですって……絡繰門さんが? 聞いてないわよ!
デートにそんな馬鹿な事する人がいる!?」
直美の剣幕に驚きながらも冷蔵庫からお茶をとりコップに注いだ。
「だから、デートじゃないんだよ」
「デートです!」
「母さん何言ってるの?」
「……でこの時間まで何をしていたの!」
「椿と遊んできたよ」
「椿ちゃん!?
どうして……剣一と遊びに行ったんでしょう!?」
「あーもう、楽しく遊んできたからそれでいいんだって
シャワー浴びて寝るよ」
一気にお茶を飲み干して、麗音愛はリビングを出ていく。
「玲央……!」
「なに」
「椿ちゃんは……」
「わかってる
椿は桃純家当主で、俺は二流の咲楽紫千家
でも友達に身分なんて関係ない」
「……そうね、わかっていればいいのよ」
「親友だよ、俺達は」
疲れ果てた身体をベッドに投げ込んだ。
今日の長い1日が色々と思い出される。
可愛い笑顔の椿が沢山思い出されていく。
一緒にいると呪怨の統制も楽にできるような気がするのに
今はもう独りでざわざわと呪怨の乱れが押し寄せる。
押し込める心。
だけど今日、認めた椿への想いは心の奥にある。
携帯電話が鳴って、椿からの御礼のメール。
まだいくらでも頑張れる――。




