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色の無い夜に・Colorless Night~最凶妖魔王を倒すため最強呪刀を継承した俺は、魔王に反旗を翻した妖魔姫とじれ恋学園生活しながら妖魔を討つ!  作者: 兎森りんこ
第3章 秋風染まる心

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ふたり仲直り

 

 ショッピングモールの3階は、まだ人もまばらで

 麗音愛は見渡しながら椿を探していた。



 遠目からベンチに座っている1人の女の子が目に留まる。


「椿……! 椿……?」



 椿と思ったが、違う?と一瞬迷った。


 いつもと違う。


 髪がしっとりと巻かれて

 ふんわりした印象の桃色の短いワンピースで

 両足も斜めに揃えて座って……靴もキラキラしている。


 雑誌かテレビに出てくる女の子のようだ。


 足が止まってしまった。


 知らない女の子に思えた。


 しかし、椿が涙を拭う仕草をしたので

 ハッとして椿の元へ向かう。


「椿」


 海岸から何キロあるのか

 さすがに肩で息をして、名前を呼んだら声が全然出なかった。


 でも椿はキョロキョロと見回し

 麗音愛の方を見る。


 思いきり息を吸い込んで声を出す。


「椿!!」


「!!……麗音愛……?」


 椿の大きな瞳から、ぼろっと涙がこぼれ落ちる。


「え……っ? れ、麗音愛……?」


「椿……」


「え!? え!? えええ!?!!」


 突然現れた麗音愛にパニックになる椿


「どうした? 何があった!? 妖魔か!?

 それとも剣一に何かされたのか!?」


「え!?」


「泣くなんて……一体どうしたんだよ」


 オロオロする麗音愛にパニクる椿。


「えっと……えっと、えっとね……」


「怪我は?」


 ぶんぶんと首を振る椿。

 それだけでも安堵する。


「大丈夫?」


「う、うん……だ、大丈夫」


 麗音愛は座る椿の目線に合うように跪いて

 ハンカチを取り出すとソッと椿の頬の涙を拭った。


 指が頬に触れて、椿はパニックに拍車がかかりドキドキする。


 麗音愛はハンカチをそのまま椿に渡した。


「れ、麗音愛、ありがとう……」


「いや……で、なにがあった? 紅夜会?」


「う、ううん……剣一さんと……」


「うん、あのバカ兄貴と!?」


「ち、違うよ、剣一さんはとっても良い人だよ」


「……うん、そうだよな……」


 兄の周りにいる人は、皆が兄を好きになる。

 椿も兄に惹かれているんだろうか。

 落ち着かなければ、と深呼吸した。


「でも……じゃあどうして泣いてるの?」


 心配でじっと椿を見つめた。


 涙が滲んでいても、メイクをしていつも以上に可愛くて濡れた唇の椿。

 自分と目が合うと

 恥ずかしそうに下を向いたので、麗音愛の落ち着いてきた心臓が

 また違う意味でドキリとする。


「あ、あの……映画が……泣けたの」


「えい……え!?」


 予想外の言葉に声が大きくなってしまった。


「え、映画で……泣いたの……そ、それだけ」


「そ、そっか……え、映画……」


「うん……ごめんなさい……」


 みるみる麗音愛の顔が赤くなっていく。

 必死に駆けつけたのが勘違いで一気に恥ずかしさが込み上げる。


「ごめん、勝手に勘違いして」


「う、ううん。そんな……」


「いや、あのバカ兄貴が……椿が泣いてるっていうから……」


「えっ……? 私のために……ここに?」


「あ、あぁ……でも、うん……何も、なくて無事で良かった」


 椿と視線を合わせるために跪いていたが

 安堵でバランスがぐらっと崩れる。


「麗音愛!」


 椿が慌てて麗音愛に手を差し出す。


 大した事のない、手を着いて立ち上がれば良いだけの話だったのだが

 つい、椿の手を握ってしまった。


 温かい手に

 ジリっと、燃える心。


「……椿」


「れ、麗音愛、隣に座ったら」


「あ、ありがとう……」


 また手は離れたが

 横に座って

 麗音愛はしっかり椿を見つめた。

 やっと会う事ができた今、ずっと思ってきた事を言わなければ。


「椿」


「はい」


 数日なだけなのに、お互いこの距離が懐かしく感じる。

 真剣な瞳に椿もドキドキが治まらない。


「椿、あの、この前の夕飯の時ごめん。……ごめんなさい。

 守護しないといけない、なんて言ってしまったけど思ってない」


「麗音愛……」


「椿は強いから俺の守護が必要ないのもわかってるし

 俺が守りたいから守ってるし、俺が守られてるのもよくわかってる。

 傷つける事を言ってごめん。許してほしい

 また仲良く……したい」


「れ……」


 また椿の瞳からポロポロと涙がこぼれる。

 何度も想像してしまった『さよなら』ではなかった。


「つ、椿……ごめん」


「わ、私も沢山ごめんなさい……

 メールも無視したり、勝手に学校行ったりして……」


「いいんだよ、俺が悪かったんだ」


「違う、違うの……麗音愛ごめんなさい……私も、私も仲良くしたい」


「うん、俺もだよ」


 優しい麗音愛の笑みを見て、また椿の瞳から涙が溢れる。


 映画の上映が終わったのか、一気に周りが人に溢れ

 ただでさえ、目立つ椿が

 男の横で泣いているので皆が見て通り過ぎる。


 椿も気付いて、涙を拭った。


「……話せて良かったよ。

 兄さんは? また戻ってくるの?」


「ううん……」


「なんで1人になんてさせるんだ、あいつ」


 兄への苛立ちは止まらない。

 が、此処にこれた事への感謝は少しある。


「私が、此処で解散って言ったの

 剣一さんは合コンに行くって」


「合コン!? あいつ絶対殴る」


 感謝は撤回した。


「うん、川見先輩達と、女の子とご飯食べたりするだけって……

 あ!映画館から携帯電話切ったままだった!

 すごいメール……!?

 川見先輩からも着てる……」


 その時、椿の携帯電話が鳴った。


「あ……川見先輩……」


「行くな」


「え?」


「合コンなんて、行ったらダメだ」


 あ、心の声がと思ったが

 つい言ってしまった。


「うん!行かないよ」


「えーっと、そういうとこは

 鼻の下伸ばした男連中がいっぱい……え、行かない?」


「うん!! 行かないよ」


 椿はにっこり笑って携帯電話の通話ボタンを押す。


「はい……、あ川見先輩、すみません今日は遠慮します。

 2人で……?いえ、それでも……

 すみません」


 2人で抜け出そうと誘われているのか。

 ソワソワして見守ってしまう。


「はい、それで月曜日からは、私また麗音愛と

 あの従兄弟と学校に行くので……はい、えっ?

 あ、あのごめんなさい……じゃあ失礼します」


 椿が通話を切って、麗音愛を見た。


「あの、私勝手に言っちゃったけど

 また学校……」


「うん、もちろん一緒に行こう」


「うん!」


 パアッと花開くような椿の笑顔。


 また……ドクン

 と熱くなる。


 グサリと、呪怨の牙が首元に突き刺さった。


「つっ……!」


「麗音愛!」


 手で押さえたが血が溢れ出る。

 その上から椿がハンカチで抑える。

 不思議と、椿に触れられると統制が楽にできた。


「ごめん、移動しようか」


「うん」


 人目を避けて、2人はトイレへ向かう。


「だ、大丈夫? どうしたの急に……攻撃?」


「晒首千ノ刀だよ……大丈夫」


「で、でも」


「……強くなる、大丈夫」


 笑顔が不安そうな顔になってしまう。

 幸いにも、買ったばかりの服に血が流れ付くのは阻止できた。


「川見先輩は大丈夫?」


「うん、断ったよ」


「……じゃあ、これから一緒に遊ぼうか?」


「えっ」


「俺と、一緒に……」


 いつもの簡単な誘いが、今日は口に出すのにすごく緊張してしまう。


 呪怨も統制する、しないと殺される、生きていけない。

 それでも

 殺せない感情がある事に麗音愛も気づき始めていた。


「うん……!! 麗音愛と遊びたい!!」


 そう、椿が笑うと可愛くてドキドキする。

 可愛くて嬉しくて飛び上がりそうになる――。



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― 新着の感想 ―
[一言] キュンキュンした! もう本当にこの二人が好き過ぎて、心臓痛くて入院するかと思った!!! けど、持ち堪えた〜! はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜良かった〜〜〜(*´ー`*) 本当によかった〜( இ﹏இ…
[良い点] やっと仲直りしてくれた〜〜〜(;▽;) ふたりのすれ違いが悲しくて、タイトルに「仲直り」って出るまで続きが読めなかった…ようやく読めて嬉しい! 呪怨を使った戦いの描写、不気味という…
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