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色の無い夜に・Colorless Night~最凶妖魔王を倒すため最強呪刀を継承した俺は、魔王に反旗を翻した妖魔姫とじれ恋学園生活しながら妖魔を討つ!  作者: 兎森りんこ
第3章 秋風染まる心

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すれ違い始発駅

 


 コロッケでご機嫌の椿と一旦別れ帰宅した麗音愛は、出した教科書の中に一枚の手紙を見た。


 加正寺琴音(かしょうじことね)からの手紙。


 勉強机の椅子に座って封を開いた。


 どうにも先日の同化剥がしの時の印象が悪すぎて苦手意識が先に出る。


 自分に好意があるというのも、イマイチわからない。

 からかわれているだけとしか思えないし

 通りすがりで見たガチャガチャを欲しがる子どもみたいに一過性の感情なのでは――?


 手紙の内容もきっと、キャーキャーしたような文面ではと、麗音愛は手紙を読み始めた。


 しかし、なんとも真面目に今度一緒に出掛けたい、デートがしたいと書いてある。


 うるさい雰囲気は全く無く、とても綺麗な字で控えめに、できれば電話やメールで

 誰にも邪魔される事がない空間で、話がしたいとも書いてある。


 そこに愛の告白の文面はないが

 一生懸命に想い人をデートに誘う女の子の想いが透けて見えた。


「……」


 思った以上に、真剣な手紙で

 麗音愛にとっては初の好意を持ってくれている女の子からの誘い。

 動揺しないわけがなかった。


 しかし断る以外、選択肢などない――。


 だが一応は白夜団関係者

 しかも七当主の親戚……。


 手紙を持ったまま

 麗音愛は頭を抱えた。



 ◇◇◇


 夕飯時『おじゃまします』と咲楽紫千家へお邪魔する椿。

 祖父の剣五郎も嬉しそうに出迎え

 珍しくエプロン姿の麗音愛の母、直美が台所に立っていた。


「椿ちゃん、いらっしゃいー!」


「おばさま、お手伝いいたします!」


「ありがとう~じゃあ今ハンバーグ焼けるから、ご飯よそってくれるかしら」


「おっす! 椿ちゃん、今日も可愛いなぁ」


 ソファに座っていた剣一は、携帯電話を投げ捨て椿に抱きつこうとする。


「剣一! おやめなさい! あら? 玲央君は? 

 剣ちゃん、玲央君呼んできてちょうだい」


「ちゃん付けやめいよ! 母さん! なにやってんだあいつ」


 麗音愛を呼びに行った剣一の横を通って

 ホカホカご飯に、ハンバーグにサラダにお味噌汁を椿が運ぶ。


「わぁああああ! 美味しそう~チーズが乗ってる!」


「さっと作れるもので、ごめんなさいね」


「あのお肉からこれが…魔法みたい…」


 幼子のように喜ぶ椿を見て、直美が目を細める。


「うふふ、ありがとう。さ、食べましょって……2人とも早く来なさいー?」



「ちょっとちょっと~~~!!玲央がさ」

「おい!!!」


 バタバタと剣一が、リビングに入ってくる

 その後をすぐ麗音愛が追いかけてきた。


「玲央がさ!! デート!!」

「兄さん!うるさいって!」

「デート誘われて、困ってんの!」

「言うなって言っただろ!」

「相談乗ってやったじゃん!いいじゃん!玲央!!」

「クソ兄貴!!」


 麗音愛の拳を、ササッと交わしながら剣一は笑う。


「えぇ!? 玲央、本当なの? お母さん嬉しいわー!! お相手は!?」


「加正寺琴音ちゃんだってよ!」


「兄さん!」


「あら!! 加正寺さん!? あらあらまぁまぁ

 とりあえず座っていただきますよ

 お父さんは今日遅いから、椿ちゃんそこに座ってね

 おじいちゃんはそこ」


「よっし!俺椿ちゃんの隣~~」

「じいちゃんも椿ちゃんの隣がいいぞぉ」


 椿に全く気付かなかった麗音愛は、椿を見て慌てた。


「つ、椿、来てたんだ」


「こんばんは、お邪魔してます」


 椿も椿で、今の衝撃的な話を聞いて

 冷静に挨拶をしすぎて逆に不自然になった。


 とりあえず、全員でいただきますをして夕食の始まり。


「玲央君、それでデートするのかい?」


「じいちゃん! やめろよ」


「どうして~~? お母さん気になるわ」


「手紙渡されて~真剣にデートしてほしいって書いてあったんだって!!」


「あとで殴るからな! 行かないよ!」


「え、なんでだよ。

 ちょろっとランチかカフェでも行ってブラつけばいーじゃん」


「そうよ、玲央君、そんな堅苦しく考えなくても!

 行って楽しいかもしれないじゃないの」


「母さんまで」


 椿は、無言でハンバーグを食べる。とても美味しいはずなのに何故か味がよくわからない。


「俺は、そんな浮ついた事できる立場じゃないだろ」


 麗音愛も、早く夕飯を終わらせたくてバクっとハンバーグを頬張った。


「玲央、いいじゃないか。いい若者がデートくらい」


「玲央君…そうよ気にせず行きなさい?」


「そうだよ、お前どうすんの? これが最後のチャンスかもしれないし」


 咲楽紫千家3人の、行け行け攻撃に苛立ちが隠せなくなってきた麗音愛。


「だから! 行かないよ!

 俺には咲楽紫千の継承者の使命があるし!

 それに椿の守護もしないといけないから!!」


「え……」


 椿の手が止まる。


「おい、玲央」


「……しないといけないって……」


 ポツリと、椿の口から溢れた言葉。

 それを聞いて麗音愛も言葉の間違いに気付く。


「あ、ち、違う椿……えっと……そうじゃなくて」


 2人の間を初めて重苦しい空気が流れる。


 それに気付かないのか、直美は味噌汁を啜った。

 

「……行くなら次の土曜日だろ? じゃあ椿ちゃん俺と遊び行こ?」


「剣一さんと?」


 うつむいていた椿が驚きの声をあげる。


「兄さん!?」


「いーだろ別に、

 俺だって椿ちゃんと出掛けたいしな!」


「でも……おばさんも心配すると思うし……家にいます」


「椿ちゃん、剣一となら大丈夫よ?」


「母さん!?」


「剣一が相手だけど、たまには楽しく遊んでらっしゃいよ」


 そう言って、剣五郎の湯呑にルイボスティーを注ぐ。


「やった!! 予算から出る? 遊び代」


「剣一、じいちゃんが小遣いやるから」


「可愛い服でも買いに行こう? 俺見立て得意だしぃ!」


「あら、いいわね。私もお洋服買ってあげたいと思っていたから。予算というか

 椿ちゃんの生活費として出しましょう。楽しみね、椿ちゃん」


 言葉に詰まる椿に、どこ行こう何しようと、剣一が次々に提案する。


「……は、はい。……じゃあよろしくお願いします」


「え……なんで………話がそんな進むわけ」


 スピードについていけない麗音愛。


「お前、どこ行くか教えておけよ~デート中に会いたくないからな」


「だから兄さんなんで」


 椿はパクパクと食べ終わり、おかわりもせず両手を合わせた。


「ごちそうさまでした! 私、宿題があるので後から洗い物しに来ます」


「いいのよ。今日は私がいるし食洗機に入れるから、お疲れ様」


 はい!と自分の食器を片付け始める椿。


「え、つ、椿」


「じゃあ、皆様おやすみなさい」


「おう! 椿ちゃん後でメールするね」


「兄さん!」


「なんだよ?

 お前はちゃんと加正寺さんへの対応考えろよな」


 麗音愛が追いかける間もなく、椿は麗音愛の家を出て行ってしまった。


 ◇◇◇


 椿は走って自分のマンションの部屋へ戻ると、ボスっとソファに座り込む。

 心臓がグサグサと痛む。


 守護しないといけない、なんて……。


 言葉のあや、なのか本心なのか

 あの時、紅夜の元から連れ出してくれて

 家族もいる白夜団にも歯向かってまで

 自分を受け入れさせ、普通の生活をさせる事を許可させてくれた。


 おかげで白夜団の仕事はあるが、表向きは普通の人間の暮らし――。


 普通――だなんて、


 浮かれ過ぎてたのは自分かもしれない。

 自分が幸せになる資格なんてないのだから。


 でも麗音愛は違う。

 別に、使命があったって今まで白夜団の人間は結婚して子をなして

 代々受け継いできたのだから。


 そういう自由が麗音愛にはある。


 デート……

 麗音愛が加正寺琴音と……

 デート……


 守護しないといけない


 しないといけなかった存在?


 それに比べて、自由で可愛くて当主の血族でお嬢様な加正寺琴音。


 麗音愛と琴音……


 ぐるぐると考える度に胸が張り裂けそうに痛む。


 携帯電話のメール着信音が鳴った。


 メールが苦手な椿は、もう携帯電話も見たくなく放おって

 そして、もふもふ君も手放して、

 ほったらかしにしていたボロボロ布にくるまって目を閉じた。


 椿はいつでも眠れるどこでも眠れる。

 自分を守る、優しい闇だ――。





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― 新着の感想 ―
[一言] そうだった……麗音愛のお母さんは椿と麗音愛をよく思っていないんだった。 そりゃポットでの子がいれば占めたと後押しするわな、気づかないふりをして…… 直美さんには直美さんなりの思う部分があるの…
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