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色の無い夜に・Colorless Night~最凶妖魔王を倒すため最強呪刀を継承した俺は、魔王に反旗を翻した妖魔姫とじれ恋学園生活しながら妖魔を討つ!  作者: 兎森りんこ
第3章 秋風染まる心

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同化剥がし~沈む紅葉~

 


 秋の寒い風が2人の頬を撫でる。


「ちょっと待って」


 ボロボロの2人の制服に靴。


 椿が、舞意杖(まいづえ)で干渉を試みると

 2人の服が靴が綺麗になった。


「ありがとう」


「できてよかった! それにしてもどうして

 槍鏡翠湖(そうきょうすいこ)は、剣一さんを狙うの? どうして殺そうとするんだろう」


 心底不思議そうな顔をする椿。


「……それは」


「だって剣一さんが好きなんだよね」


「愛憎表裏一体って言うから……

 同化へのキッカケの兄さんへの想いが強く槍鏡翠湖に流れて

 それで剥がせないのかも」


「槍鏡翠湖も……苦しんでいるのかな

 でも言う通り殺させてしまったらダメな気がするよ

 私達の行動は間違ってないよね?」


「あぁ、兄さんを殺させてしまったら

 美子の精神になんらかの影響を与えそうだ」


 時間帯は夕暮れ。

 どんどん暗くなっていく。


 夕暮れから、暗闇へ――。

 街灯に照らさせた紅葉がひらひらと舞う。


 マンションから出てきた剣一は麗音愛と

 同じ水環(みなわ)学園の学ランを着ていた。


 いつの間にか

 もうマンションも建って

 隣だった美子の家もない。


 美子は少し遠い一軒家に移り住んだ。


 マンションの駐車場で

 ホットコーヒーを啜る剣一。


 誰かを待っているようだ。


 中学生の制服を着て薄手のコートの美子がやってくる。


 その手に槍鏡翠湖は握られていない。


 少し様子を見ようと、2人で車の影に隠れた。


「どうしたの?話って」


「えっとね……剣一君、彼女できた?」


「俺、彼女はつくらない主義だからって何度も言ってるっしょ

 んで?本題は?」


 軽く笑って流す剣一。


「……あの、私も白夜団に入ることにした」


「ぶっ」


 珈琲を吹き出す剣一。


「な、なんで、ゲホッ、やめなよ」


「だって、将来も安泰だしさ」


「た、戦うんだよ?」


「まぁ、なんとかなるよ」


 場違いに、明るい笑顔な美子。


「……槍鏡翠湖を使う気?」


「さっすが剣一君、うちの武器知ってるんだね」


「そらな~

 ルーキーだけど実力もうNo.1の高校生剣士

 剣一君だからな。もう管理職だよ」


「すごいね」


「ふふん……でもだからさ、もう少し考えなよ」


「考えたし」


「ん~」


「お手伝い、できるかもよ?」


「でもさ、人生に関わることだし

 俺は反対……」


 剣一が反対と言ったその時

 殺気で視界が歪む感覚を麗音愛と椿は覚える。


「兄さん!!」


 瞬時に麗音愛が飛び出し

 剣一を突き刺そうとした美子・槍鏡翠湖の切っ先を晒首千ノ刀で弾いた。


 カーンと缶コーヒーが汚く舞い散る。


「俺が相手だ!!」


 中学生の美子は、また麗音愛を睨む。


「タケル!! うらぎりもの!!」


「裏切る!? 俺は、美子を裏切ったことなんて、ない!!」


 浄化を越える量の呪怨で、美子に討って出る。


 駐車場を黒い怨霊が

 覆い尽くし

 紅葉の葉が沈み

 自動車が飲み込まれ、吐き出され 

 呪怨の槍が、槍鏡翠湖を襲う。


「うっとうしい!!」


 槍鏡翠湖は飛び上がり

 咲楽紫千家のマンションの壁を駆け上がっていく。


「待て!!」


 追う呪怨の槍は、マンションの壁を貫き、貫き、貫き

 壁が盛大に破壊され崩れ落ちる。


 振動で落ち葉も舞う。


「ぎゃー! 俺の家が!!」


 椿は剣一を抱き締め、帰兎で飛び上がり

 その場を離れ3階建ての屋根に降りたった。


 剣一以外の人間はいないようだ。

 どういった精神がこの世界の剣一にあるのか

 わからないが、今の状況を理解しているようだ。


 麗音愛も呪怨の羽を纏って

 美子を追いかけてマンション13階屋上へ登っていく。


 だが

 マンション屋上の避雷針に立った美子は、槍鏡翠湖を

 両手で持ち、暗い空に掲げる。


 金属が擦るような音のあと

 太陽が発したような輝きが槍鏡翠湖から放たれ

 美子の目下の麗音愛を照らす。



「!」



 ドン!! と上からの激しい浄化の光に落下しそうになるが

 また呪怨が麗音愛の周りに湧き上がり

 羽を溶かしながらも壁を駆け上がる、が。


 それを追いかけ、槍鏡翠湖の光が追いかけ、追撃する。



「麗音愛――!!」


「え!?」


 椿は帰兎(きと)を構える。


 この長距離、当たる確率など低い。

 だが打つのは自分の力の具現の矢。


 放つ力も、自分の力だ。


 どこまでできるか、やってみる――!!


 麗音愛を助ける!!


 またギリッと遠い遠い、槍鏡翠湖(そうきょうすいこ)に狙いを定める。


 早く、でも正確に

 気付かれれば、もう援護できない!!


 早く――!!


「落ち着いて」


「!」


 隣にいた剣一がポンと、椿の肩を叩いた。


「風向きと、ここから、あそこまでの距離」


 ふわりと手を上から支えてくれる。

 高校生だが、今の剣一と同じ背の高さ。


 心が包まれる感覚。


「いける力はある?」


「――はい!!」


「届く力があると思っての、計算

 でも君ならできると俺も思う」


「――はい!!」


「必ず出来る!!」


「はい!!」


 剣一の力が流れ込んでくるような気持ちだった。


 異空間の、幻なのに、

 それでも剣一は剣一だ。


 麗音愛が、晒首千ノ(さらしくびせんの)(かたな)の斬撃で壁から逆に距離を離し

 呪怨に隠れ、闇に紛れた。


 美子が一層、麗音愛への攻撃に集中した。


 それを見逃す事はしない!!


「――いきます!!」


「いけ!!」


 ゴオ!! と唸るような炎で激しい火矢となった

 椿の一撃は

 その攻撃に気付いた美子・槍鏡翠湖を射抜く。


 マンションの屋上が消滅の光に包まれた。


 キラキラと花火のように消えていく。


 それを見守る椿と剣一。

 麗音愛もくるりと向きをかえてこちらに向かってきた。


 ホッとした椿に笑顔が戻る。


「剣一さん、ありがとうございました」


「ん、俺こそありがとう

 頑張ったね」


 にっこり笑うと、剣一は椿の手をとり甲にキスをした。


「わっ」


「ご褒美だよ」


 そう言うと剣一も消えていく……。


「あ……」


 まだ、話していたかったのに、と手を伸ばしてしまう椿。


「椿」


 静かに、降り立った麗音愛。


 戦いながらも全部見ていた麗音愛だった。

 もちろん今の手の甲へのキスも。


「バカ兄貴……」


 そう言いながらも、麗音愛も少し微笑んだ。


 そして季節はまた変わっていく。

 桜の舞う儚い季節に――。





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― 新着の感想 ―
[一言] 何だかどこにいても剣一は剣一なんだと……意外なほどホッとする自分に気づいた。 剣一、恐るべし……
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