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異世界の旅路はトップ解決で  作者: ふきの精
旅路の始まり
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 「えっ? 昇格ができる?」


 「はい。もちろん昇格試験を受けてからになりますけど、

 お二人ともCランクへ上がれるだけの条件をこなされましたから」



 明日から王都に行くのでギルドにその旨を伝えに言ったら、

思わぬ言葉を聞くことになった。

受付のおにいさんが言うには、新人にしては早いと思いますけどねとのことだけど…。


 「それって王都でもうけることできるんでしょうか?」


 「はい。ですからもしあちらで受けられるのでしたら、

 こちらで発行証をだしておきます。いかがいたしますか?」



 うーん…どうしよう。王都にどれだけいるかわからないんだよね。

調べ物をするからすぐに帰ると言う事はないけど、ずっと居るともいえない。

この町にもやっと慣れてきたところだからね。


 「伊吹どうしよっか?」


 伊吹にも意見を聞いてみる。二人の事だから、私だけで決めることもないよね。


 「うーん…いちおう発行証を出してもらっておいた方が良いかも。

 図書館で調べる以外にも、情報を集められそうだし

 あっちで依頼とか受けるかもしれないし」


 そっか。人がたくさん集まるから別に図書館でだけ情報を集めることもないね。


 「そうだね。それじゃあ発行証お願いします!」



 「はい、かしこまりました。でもそんなに依頼はないかもしれないですよ?」



 おにいさんが言うには、王都周辺は騎士団の定期巡回も頻繁に行われていて

治安はこの町周辺よりもいいんだとか。たしかに王様がいるのなら

警備もしっかりしてるよね。

なので近場で魔物の討伐依頼というのはそんなに出てないだろうとのこと。

ただ魔災が近く起きる前兆なのか、

魔物が増えているからひょっとしたら普段よりは多いかもしれないとも言われた。


 でもそれなら王都にいる冒険者の人達って普段どんな依頼をこなしているんだろう…。



 「王都の冒険者たちですか? 

 そうですね…私も王都の事はそこまで詳しくないですけど、

 王都にはAランクの冒険者が多くいますね。

 Dランクの方はそこそこ多いですけどCやBの方たちは少なくて、

 そのような方達は周辺の町や魔物が多いとされている場所付近を

 拠点にされているようです」


 Aランクの冒険者の人というのは、騎士団や貴族の私兵の戦闘訓練や指導を行う事が多いみたい。

魔術系の人は学院で教師をしたり、貴族の子弟の家庭教師をしたり、

魔法研究のアドバイザーをしたり…

なんだか私の中の冒険者像とちょっとずれたけど、

Aランクまで上がった人は討伐よりも町で落ち着いて生活するようになるみたいだね。

もちろん討伐に生きがいを見つけている人もいるんだろうけど。


 あと土地喰らいの時みたいに、強力な魔物が現れたときなんかは招集がかかるみたい。

ひょっとしたら王都の守りの為という意味合いもあるのかもしれないね。


 「なにか情報が見つかると良いですね。少し寂しくなりますけど」


 「ありがとうございます。あっ、あとリベルさんに伝言をお願いしたいんですけど…」


 私達はリベルさんに王都にしばらく行きますという伝言を

伝えてもらうようにお願いすると、ギルドをあとにした。



 明日の出発を控えた夜。私と伊吹の居る部屋は賑わっていた。

部屋にはドリアードをはじめとした人型のユニットが集まっている。


 というのも、ドリアードにこのあいだの治療のお礼を言う為に呼びだした時の事


 「もっと気軽に呼んでいただいていいんですよ。

 きっと他の者もマスターに会いたいと思っているはずです」


 って話を聞かされたから。必要に迫られた時にしか呼び出してないから、

雑談とかしたことないんだよね。

だからユニット達との親睦を深めるために、

こういった場を設けようと思ったんだけど…


 いやぁ…これだけ居ると壮観だね。


 ちなみに呼びだしたのは、ドリアードの癒し手、ホビットの細工師、

リッチと化したエルモンド、天上の番人アルナの四体。

コストとマナの関係でこれ以上は呼べなかった。

なるべく時間差がないように呼び出したかったからね。


 ホビットの細工師は可愛らしい小人さんだ。

私の膝の上にちょこんと乗っていて可愛い。

ドリアードの癒し手は相変わらず羨ましいプロポーションをしている。

伊吹の顔が赤いね。まぁ目のやり場に困ってるのかもしれない。


 問題はエルモンドとアルナの二人だ。エルモンドは見た目骸骨がローブを着ているような姿。

伊吹がどうしても呼び出したかったみたいなんだけど…周囲に放つプレッシャーがすごい。

そのプレッシャーが向けられているのがアルナ。

そのアルナもプレッシャーを受けながら平然と受け流している。

アルナは見た目が天使のような羽根を持った女騎士といった姿。


 「ふっ、深淵の力を前に脆弱なる天の力が霞んでおるわ」


 「まぁ骨が何か言ってるわ。地獄の番犬にしゃぶられてればいいのに」


 「よかろう! 我が魔道の極致みせてくれる!」


 「はぁ!? 魔道の児戯がなんですって?」


 ……うん、二人ともすごい強そうなんだ。ゴールドだしね。

でも聖と魔という対局にある関係からかあんまり仲がよくなさそう…

なんだけど傍から見てると子供の口喧嘩だこれ。


 「あーお前らもっと仲良くできないの?」

 

 伊吹がなんとか仲裁しようとするけど…


 「我が主の命であれば、泥水を耳から注がれる苦難に耐えるがごとく耐えてみせよう」


 「マスターの命でしたら、頭から泥水をかぶったと思って耐えて見せますわ!」


 「ほぉ!?」 「はぁ!?」



 ……二人とも実は仲いいんじゃないの? なんて思わなくもない…。

 

 「ドリアード…ユニットってこんなに仲たがいすることあるの?」


 私は横で苦笑しながら成り行きを見ているドリアードに尋ねる。


 「どうでしょう…あまりそのようなことはないと思いますけど…

 極端に属性的な物が離れていると、仲が良くないのかもしれませんね…」


 「けっ、力はあっても頭はどうかわかんねぇな!」


 今の言葉は膝に乗ってるホビットの言葉だ。この子可愛いけど口が悪いんだ…。


 「まぁ二人はおいといて、何か食べる? いちおういくつか用意したんだけど」


 そう言ってドリアード達に用意していた軽食を勧める。

露店で売っていたのを幾つか買ってきたんだけど、食事ってできるのかな?


 「おっ、うまそうじゃねぇか! ネーちゃん気がきくな!」


 そう言ってホビットがガツガツと食べ始める。ああ、そんなに一気に食べたら喉に詰まるよ。

リスのように口いっぱいに頬張るホビット。


 「食事というのは特に必要ないですけど、食べることはできますから。

 ありがたく頂きますね。……あら、おいしい!」


 ドリアードは上品に露店にあった唐揚げのようなものをつまむ。

ユニットもほんと個性的だね。



 「なぁ姉ちゃん…俺もそっちにまぜてくれよ」


 伊吹が情けない声を出して近寄ってくる。背後に目をやると…


 エルモンドさんとアルナさんが仲良く食べ物をつまみながら口喧嘩を続けていた。

やっぱり仲いいんだと思うよ…うん。


 「主よ! どこへ行くのだ。我が魔道の極致…伝授してしんぜようぞ」


 「あら、マスターのお姉さんですね。

 私は天上の番人アルナ。お姉さまと呼んでもよくって?」


 なんというか、フリーダムな二人だ。というかお姉さんって何?

どう見ても私よりも年上っぽいんですけど…。


 「おいおいおいおい、イブキのニーちゃん。被害がこっちにまでくるじゃねぇか」


 「マスター…私が余計なひと言を言ったばかりにごめんなさい。

 でも、まともな者のほうが多いですから。今回は犬に噛まれたと思って…」



 「あら、天上の番人である私が犬だなんて。

 犬に噛まれるのはそこの骨だけで結構よ」


 「まだ言うかこの高飛車女が。その羽根がなぜ黒くないのか不思議でたまらんな!」


 「はぁ!?」


 ……ん…。いままでユニットとしか漠然と捉えてなかったけど、

この子達も一人一人が個性があって生きた存在なんだ。

そう思ったらこれまで以上に親しみが湧いてくるね。

こういった場を設けてどうなるかと思ったけど

結果的にはよかったよ。



 「ネーちゃん上手くまとめたつもりだろうけど、

 このカオスから目をそらしちゃだめだぜ…」


 ホビットの言葉は、遠い目をして窓の外を見ている私の耳には届かなかった。





 騒乱の一夜が明けて、いよいよ私達は王都へと向かう事になった。

獣車がでるのが昼頃。それから二日かけて王都に到着する。

獣車の中で寝泊まりするわけじゃなく、要所要所で村や町によって休息したり泊ったりする。

といっても長旅にはかわらないね。


 昨日は中途半端な時間にシャッフルをしたので、夕方くらいまではそのままのデッキになる。

何事もなければいいんだけど…



 「マイさん気を付けてね。王都近辺は魔物の脅威がそれほどないけど、

 今は時期が時期だから」


 そう言って心配そうな顔をするリベルさん。

どうやら伝言が昨日の内に伝わったらしくて、獣車の見送りに来てくれました。


 「はい、調べ物をしたらまた町に戻ってきますね」


 「ええ。その時はまた一緒に買い物に行きましょう。マイさんに似合いそうな服…

 探しておくわ」


 そう言って柔らかく微笑むリベルさん。うん。絶対に戻ってくるよ。



 「王都で変な店に行くなよ。あとお姉さんをしっかり警護するんだぞ。 

 あと可愛い女の子がいたら詳細に記録しておいてくれ」


 「ああ、ラハンも元気でな。…って俺の心配一つもしてねぇのかよ!」


 ラハン君も伊吹の見送りにきていた。男の子同士仲がよくて羨ましいね。


 「姉ちゃん、どこにそんな要素があるんだよ…」



 さぁ、それじゃあまだ見ぬ王都に向けて出発しよう!




――グレムの町を見下ろす小高い丘の上――



 一体のゴブリンが街道を見ていた。茶色のゴブリン…アラバネンの配下のゴブリンだった。

その背後にはいくつもの生物を無理やり繋ぎ合わせた魔物が数体控えていた。

いずれも禍々しい見た目をしており、

生物として歪んだ存在…合成魔獣キメラと呼ばれる存在だった。


 「はぁ…さっさと任務を終わらせて帰って昼寝したい…」


 やる気がなさそうな顔のゴブリン。だがてぶらで帰れば主人に怒られるのは明白だった。


 「まぁ二、三人捕まえてあとはキメラに喰わせればいいか。

 でも勢い任せて全て喰ってしまわないようにしないと…」


 後ろに控えるキメラを見て、自分に襲いかかってこないよなぁ…と不安になるゴブリン。


 主人から聞いた情報によれば、どのキメラも能力だけなら銀-3から銀-5に匹敵するという。

ゴーレムなんかよりこのキメラを量産したほうがいいんじゃないかとゴブリンは思うが、

主人の中では変なこだわりがあるんだろうと無駄なことは言わないでおいた。



 「まぁこんだけいれば騎士団が出てきても蹴散らせられそうだなぁ。

 でも面倒だしある程度町から離れたところで襲うかな」



 グレムの町から出発した獣車を見ながら、

丁度いい場所はどのあたりかなぁとゴブリンは思案を始めた。





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