19 新しい仲間!
ご飯を食べ終わり、落ち着いたので太一は今回の話を切り出した。
「実は、フラワーベアが山から下りて来て危険じゃないか……っていう話が街であってね。だから俺たちは、ここに来たんだ」
『街から……』
ことのあらましを説明すると、フラワーベアは『ごめんなさい』と謝罪の言葉を口にした。
『人を襲うつもりは、ありません』
「うん。俺も、フラワーベアに会ってそれはよくわかったよ。だから、ギルドにはそう伝えるつもりだ」
『ありがとうございます』
フラワーベアはほっと胸を撫でおろし、安堵する。
そして太一、ルーク、ケルベロスを見て……お願いを口にした。
『コログリスを、お兄ちゃんの従魔にしてもらうことはできますか?』
『きゅぅっ!?』
「え?」
フラワーベアの言葉に一番驚いたのは、コログリスだ。
『どうしてきゅぅ? わたしが、弱いから一緒にいちゃいけないのきゅぅ……?』
コログリスは目元に涙をたくさんためて、フラワーベアを見る。フラワーベアは慌てて、『違うよ!』と首を振った。
『ボクはまだ子どもだし、今年は大丈夫だったけど……冬は寝なきゃいけないし……守ってあげられないかもしれない。だから、安全なところにいてほしいんだ』
『きゅぅ……』
フラワーベアは、フェンリルやケルベロスを従魔にしている太一ならば、コログリスを預けても安心だと判断したのだろう。
くわえて、美味しいご飯に、回復魔法、太一は人柄も温和でよい。
しかし、コログリスは大きく首を振った。
『そんなの嫌きゅぅ! わたしのお友達は、フラワーベアだけだきゅぅ!』
だから絶対に離れたくないのだと、コログリスはフラワーベアに抱きついた。ぎゅうっと、しがみつくように。
(こんなに思いあってる二匹を、離れ離れにするなんて無理だ)
コログリスが従魔になってくれたら嬉しいが、優先すべき相手はフラワーベアだろう。
(でも、解決策というか……何かしらはほしいよな)
フラワーベアが心配しているように、このコログリスは体が小さい。大将が弱虫と呼んでいたことから、平均より戦闘能力も劣っているのだろう。
自分がいない間が心配という、フラワーベアの言い分にも頷ける。
(魔物がいる山なんて、心配だよな……)
かといって、太一たちがコログリ山まで来て守ることも難しい。
どちらかといえば、フラワーベアがコログリスと一緒にいられる環境を整える方が簡単かもしれない。
たとえば、食料を渡したり。
さて、どうしようか。
『なら、二人ともテイムしちゃえば?』
『それならなんの問題もないね!』
『仲間が増えるのは、いいこと~!』
「え……それは……いいのか?」
真剣に悩む太一だったが、ケルベロスからの提案であっという間に解決してしまった。
(って、マテマテマテ!)
もちろん、二匹をお持ち帰りできるならすぐにでも! ウェルカム!! しかし、フラワーベアにだって山での生活があるだろうし……。
そう思って太一がちらっとフラワーベアに目を向けると、お尻のお花が揺れている。どうやら、テイミングされることはとても嬉しいようだ。
「えっと……フラワーベアと、コログリス、うちに来る?」
まだギルドランクを上げていないから、かなり狭いけれど……二匹と一緒に過ごすことができたら、きっと楽しいだろう。
(それに、なんとなく放ってはおけない……っていうのは俺のエゴかもしれないけど)
太一が二匹に手をのばすと、ゆっくりと歩いてきた。
『ボクたち、お兄ちゃんについていっていいんですか?』
『一緒にいられるきゅぅ?』
「もちろん。よかったら、俺たちと一緒に行こう。家には、ほかにもたくさんの仲間がいるよ」
そう言って太一が微笑むと、二匹は嬉しさのあまり飛びついてきた。
『よろしくおねがいします!』
『フラワーベアと一緒にいられるの、嬉しいきゅぅ』
「それじゃあ、フラワーベアとコログリスを――【テイミング】!」
太一がスキルを使うと、二匹に光が降り注ぐ。無事にテイミングが成功したようだ。
「二人の名前は……フラワーベアが【スノウ】、コログリスが【ハルル】、どうかな?」
『スノウ! 名前をありがとう、お兄ちゃん!』
『ハルル、可愛いきゅぅ~!』
どうやら二匹とも名前を気に入ってくれたようだ。
名前をつけるときは、いつもドキドキする。
気に入ってもらえなかったり、変だと思われてしまったら……と、かなりプレッシャーがのしかかってくるのだ。
(会話ができるから、なおさら)
幸いなことに、誰からも不満は出てきていない。
『よし、それじゃあ帰るぞ』
『『『そうしよ~!』』』
ルークの声に、ケルベロスが元気に返事をする。
しかしその中で、大将だけしょんぼりしているのが目に入った。どうやら、何か気になることがあるようだ。
「どうしたんだ? 大将」
『タイチ……』
「うん?」
口ごもる大将を見て、太一はどうしたのだろうと首を傾げる。何か言いたいことがあるのに、言いにくいような……。
「あ、もしかしてハルルと仲が悪かったり……とか?」
『それは! まあ、違うとも言いきれないきゅ。でも、そうじゃなくて』
大将は深呼吸をしてから、真剣な瞳で太一を見つめた。
『オレ……このまま山に残って、みんなの面倒を見たいんだきゅ!』
「――! そうか、大将はこの山の大将だったもんな」
太一は、先ほど大将がほかのコログリスから頼りにされていたことを思い出す。きっと、コログリスたちの心の支えでもあるのだろう。
(安易にテイムするのもよくなかったな……)
大将の体はわずかに震えていて、勇気を出して話してくれたということがわかる。
「話してくれてありがとう、大将。俺は大将の意思を尊重するよ」
『タイチ……』
太一の言葉に、大将の目が潤む。
大将は太一のことが大好きだ。けれどそれと同じくらい、コログリ山のコログリスたちのことも大切な仲間なのだ。
どちらかを選ぶというのは、難しい。
『ありがとう、タイチ! 俺はこのままコログリ山に残って、仲間を守るきゅ!』
「格好いいな! 大将ならできるって、信じてる」
『もちろんきゅ!』
太一と大将は、拳を作ってこつんと合わせ健闘を祈った。
「さてと……帰る前に、一応確認。大将は俺にテイミングされたまま山に残る、っていうことでいいのかな?」
『オレのこと、従魔のままでいさせてくれるのきゅ?』
「もちろん。大将がよければ、だけど……」
太一としては、テイミングしたままでなんら不都合はない。
なんなら、テイミングしている仲間のみに使えるスキルもあるので、このままの方がいいくらいだ。
『嬉しいきゅ! ずっとずっと、タイチの従魔でいたいきゅ~~!』
大将、男泣きである。
太一の足にぎゅっとしがみついて、大将は何度も『大好ききゅ!』と愛を伝えてくれた。




