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第3話 お嬢様と夏休みと水着(2)


 まだ午前九時。

 もう結構暑いけど、ダレる前に目的地のコテージに到着した。



「わあ。本当にプライベートビーチっぽい!」

「すごおおお!」



 俺と暁星が驚く。

 周りは岩場に囲まれた砂浜の近くにコテージがポツンと建っていて、周りに建物がなく、プライベート感ましましの雰囲気。

 外を歩くのはちょっと暑く、疲れてきたところにこの風景。

 最高だった。



「じゃあ、早速水着に——」



 暁星が言う。

 うん、ここに来た目的を半分忘れてるね。



「じゃなくて楽器でしょ楽器」

「はいはい」

「ふふ。海は逃げませんから!」



 そんなわけで、練習を程々にする。

 曲は暁星が少し編曲してくれた「マイ・ラブ」。

 俺の想定通り、朝宮さんがメインソロ、俺と暁星はハモりや伴奏だ。

 当然、1st(トップ)サックスは朝宮さんが担当する。



「じゃあ、朝宮サンがトップで一番右、次にあたし、左はタクヤね」

「まあ、そうなるな。暁星フォロー頼む」

「うん。タクヤはあたしに合わせて」

「おっけー」



 まだ初あわせと言うことで、ほどほどにして練習は終わった。



「本番までにできるようになるでしょうか?」

「あと三ヶ月、まあ朝宮さんなら大丈夫でしょ。肩に力を入れずがんばろ」

「そうだな。俺もサポートするし大丈夫」

「竹居君、暁星さん、ありがとうございます!」



 練習も終わりそういえば昼河たち遅いな、と思っていたところに——。



「おー。ごめんごめん。遅くなった」

「ごめんねー」



 ようやく昼河と早希ちゃんが合流した。

 もうすぐお昼。

 お昼はバーベキューをする道具と食材——ヤキソバやキャベツなどの野菜と肉——が用意されているという。



「じゃあ、とりあえず水着に着替えてからお昼の準備をしましょう。日焼け止めを忘れずに塗ってくださいね」

「はーい!」



 朝宮さんの声にみんなが元気よく答えたのだった。





 俺たちは割り当てられた部屋に行き、昼河と一緒に着替える。

 男は着替えるのも早い。



「竹居、すげー楽しみだよな? 朝宮さんはスタイルいいし、暁星さんはもっといいし」

「あのさあ、そんなこと絶対二人の前で言うなよ。だいたいお前には早希ちゃんがいるだろう」

「はあ。真面目か? 竹居だって早希の水着姿見るんだろ?」

「え、見るわけ——」

「誓って言えるか?」

「……言えない」

「だよな」



 そう言うと、昼河は俺を言い負かしたのが嬉しかったようで、鼻歌を歌いながらあっと言う間に着替えた。



「じゃあ、竹居! 先に行っとくぞ」

「おい、日焼け止め!」

「いらんいらん」



 なんだアイツ——。

 人の忠告を無視して行ってしまいやがった。



 俺は一通り日焼け止めを塗って——とはいえ、背中とか一部は無理だったが——Tシャツを着て外に出た。



 砂浜は白くとても綺麗だ。

 海はテレビで見るような南国の淡い水色の海ではないものの、深い青色がすごく綺麗だった。


 ビーチパラソルを立て、鉄板や椅子などを並べた頃に女性陣が出てきた。



「うぉぉぉぉお」



 昼河が歓声を上げる。

 俺も、おおっ、と声が出そうになった。



 昼河の彼女、早希ちゃんはちょっと可愛らしい感じのビキニ。

 暁星はビキニだけど、それほど胸を強調するようなタイプではなかった。

 そしてここでも……朝宮さんはワンピース。

 徹底してるなぁ。


 みんな薄い生地のトップスを羽織っている。



「お……俺は……天国にいるのか?」



 昼河がいつにも増して変だが、前からおかしかったかも知れない。



「はぁ。朝宮さんはスタイルいいし……暁星さんはもうダイナマイトな感じだし……私はおこちゃま体型で悲しいわ」



 早希ちゃんがそういうものの、それほど肩を落とす必要はないと思った。

 うーん。

 というか、朝宮さんも暁星も正直、目のやり場に困る。


 どうやら二人は、一緒に水着を買いに行っていたようだ。

 その光景が目に浮かぶようだ。

 特に朝宮さんは頑張って水着を選んだのだろう。

 暁星は割と堂々としているが、朝宮さんは恥ずかしそうにしている。



「タクヤ……どうしたの?」

「い、いや、なんでも……」

「ははー。水着に見とれたな! うりうり」



 暁星は、そう言って俺と腕を組むと胸を押しつけてきた。

 ボリューミーな柔らかい感触……。

 いやいや。ダメでしょ。



「もう……子供の頃と違うんだからやめいっ」

「えー」

「ほら、朝宮さんが怖い目で俺を見てるし」

「そ……そうね」



 そう言いつつも暁星は離れようとしない……。

 その様子に朝宮さんは、なにか決心をしたように頷くと、俺に向かって走ってくる。



「じゃあ……あの……(わたくしも)も……よろしいでしょうか」



 そういって空いている俺の片腕を組み、控えめにくっつけてきた。

 う……。

 彼女はかなり近づかないと接触しないので、かなり密着度が高くなる——。


 水着だけあって、二人の肌の感触まで分かるような気がした。



「……竹居。お前ってヤツは……うぉぉぉぉぉ羨ましすぎるだろ!」



 昼河の怨念の声がビーチに響いたのだった——。



 さて。

 ここで俺は一つ気付いてしまった。


 朝宮さん、水着パッドつけ忘れているのでは……?

 水着パッドというのは、女子が薄めの生地の水着を身につけるとき、胸やその先端の形が水着に現れないようにするものらしい。

 家にあったので何をするものかと姉さんに聞いたところ、そんな説明をしてくれた。


 近づいたため、朝宮さんの水着……胸の先端が少し尖っているのが見える。

 尖った()()()が、薄い生地によってくっきりと現れていて……。


 これを防ぐためのものなのだ。

 俺の心臓が破裂しそうになる。



「竹居君、顔赤くないですか?」



 朝宮さんが無邪気に言ってきた。

 いや、あの、朝宮さんのせいだからね?

 俺は最高にドキドキしていて、おかしくなりそうなので深呼吸して自分の気持ちを落ち着かせる。


 だいたい、他の女子二人が気付いてあげるべき。

 これじゃあ、まるで朝宮さんの胸を俺がジロジロ見ていたみたいじゃないか……。


 いやそうなんだけど。

 昼河には朝宮さんのこの姿を、絶対見られたくない。

 俺は朝宮さんを隠すように動く。



「あの、竹居君? どうされましたか……?」



 朝宮さんが挙動不審に見える動きを不審に思い始めている。

 さて、これは本人に直接伝えるべきか、女子経由で伝えて貰うべきか。

 やっぱ女子経由がいいか。



「ちょっと、暁星」



 俺は立ち位置を調整しながら、暁星に伝えた。



「え? 本当……? タクヤあんた……!」



 うっ。

 暁星が反射的にビンタを放つ予感がしたが、彼女は堪えてくれたようだ。



「まず教えるのが先だろう?」

「ま、そ、そうね」



 暁星が朝宮さんに耳打ちすると、彼女は慌てて胸を隠し慌ててコテージの方に走っていった。

 ふう。俺は一仕事追えたような気分になる。


 昼河に見つからなくて良かった。




 そして、しばらくして朝宮さんは戻ってきた。



「竹居君……竹居君が気付いて教えてくださったんですよね」



 あ、バレてた。



「……他にも男がいるし……見られたくなかったし……ごめんね」

「ううん、竹居君が謝る事なんて何もありません。ありがとうございました」

「そう言ってもらえると助かる」

「それで、どれくらい見てたんですか?」

「えっ」



 俺はほんの少しだけと答えておいた。



「そうですか。まあ竹居君だけだったら……別に——」

「えっ?」

「い、いえ、やっぱりだめです! でも……ありがとうございました」


 どういう意味だ?

 まあ、色々思い出してしまうので深く考えないようにしておこう——。




 さて、みんなが揃ったところで食事の準備だ。

 女性陣がてきぱきと食材を切っていき、俺たちは火をおこしてヤキソバを作っていっていく。



「なんで外で食べるヤキソバってこんなに美味しいんだ? 本当にこれはヤキソバなのか?」

「どう見てもやきそばでしょ。みんなと一緒ってのもあるのかもね」

「そうだね。なんか私たち、パリピって感じ」

「知らない人たちが見るとそうなるだろうな」



 しかし、こじょは知らない人が見てくる心配も無い。

 とても良い場所だった。



 一通り食べた俺たちは、海で遊んだり、ビーチパラソルの下で寝そべることができるリクライニングチェアでごろごろしたり……思い思いに過ごす。

 その結果俺は昇天するのだ。



お読みいただきありがとうございます。

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