護衛-3
10月13日 1331時 アル・ダフラ基地
空対空ミサイルを載せたウェポン・ローダーとタンクローリーがエプロンに並び始めた。滑走路では、次々と輸送機が着陸し、指定されたエプロンへ向かっている。その遙か南方の空では時折、戦闘機の轟音や爆発音が聞こえる。滑走路の向こうで最終アプローチに入ろうと旋回していたB777-200Fに空対空ミサイルが命中し、爆発した。
「クソッ、戦闘機は何をやっているんだ!貨物機がやられたぞ!」
地上クルーは毒づいた。消防車と救急車が滑走路を走りぬけ、貨物機の残骸へと向かう。その隣の滑走路では、C-130Tがフレアをばら撒きながら着陸した。
「1機着陸したぞ!」
「急いで滑走路から移動させろ!まだ降りてくる!」
C-130Tが誘導路に入ると、次はエンジン1基を炎上させたまま、Il-76が着陸し、停止した。すぐさま消防車とトーイングカーが走って行き、エンジンに消火剤をぶちまけ、移動させる準備をする。
「おい!一旦、あそこのヘリをどかしてくれ!」
CV-22BとCH-53E、UH-60Lは基地の敷地外でホバリングしながら待機していた。AH-64Dは敵の地上部隊からの攻撃を警戒している。
「なんてこった!このままだと、基地ごとやられちまう!」
ブライアン・ニールセンはシースタリオンの窓から既に戦場と化した基地を見下ろした。黒焦げになったIl-76が滑走路からトーイングされ、A-400Mがエンジンを1基、炎上させたまま着陸する。
「ストーク!トム!けが人を収容するかもしれないから準備して!」
キャシー・ゲイツは目の前の光景に戦慄した。戦闘機部隊はどうやら、敵が多すぎて対処しきれていないようだ。
『アル・ダフラタワーより、待機中の全ヘリへ。半径5マイル以上の距離をとって待機せよ。燃料がなくなってきた場合は"ホットピット"にて補給する。残りが少なくなってきた機は、タワーに許可を取ってから着陸、補給せよ』
「了解、タワー。こっちはまだ十分にある」
「よし、そのまま真っすぐだ。いいぞ・・・・着陸しろ・・・・」
シモン・ツァハレムとデイヴィッド・ベングリオンはアパッチのコックピットから、右翼を炎上させながら最終アプローチに入ったIl-78を見守っている。ベングリオンは、その様子を見ながら、一人で呟いていた。
「いい子だ・・・・そのまま、ゆっくり・・・・」
しかし、突如として右翼を覆っていた炎が機体全体に回り、Il-78は大爆発を起こし、粉々に飛び散った。
「クソッ!1機爆発!」
『こちらタワー。戦闘機が着陸する。指示があるまで輸送機は空域で待機せよ。繰り返す、戦闘機が着陸する。指示があるまで・・・・・』
10月13日 1345時 アル・ダフラ基地
2機のF-16Eが編隊で着陸し、高速タキシーでエプロンまで滑走していった。更に、6機のF-16が後ろから続く。戦闘機は優先してエプロンに誘導され、そこで燃料の補給と再武装が行われた。整備員が慌ただしく走り回り、ウェポン・ローダーとタンクローリーがせわしなく、エプロンと武器庫や燃料貯蔵庫を往復する。整備兵は記録的な早さでランチャー・レールにAMRAAMやサイドワインダーを搭載し、戦闘機を再び空へを送り出した。
F-16が離陸すると、入れ替わりでミラージュ2000が着陸する。一部の戦闘機は、機関砲による攻撃を受けており、再出撃はできない状態だった。それでも、出撃できる機体には再武装と燃料補給、パイロットの交代が行われ、再び発進していった。
10月13日 1407時 UAE上空
『おっと・・・・そろそろ"ビンゴ"だ。"ウォーバード2"より"ウォーバード1"へ。そろそろ燃料が限界に近い』
ヒラタは燃料計に注意を向けた。まだ警告は鳴っていないが、燃料メーターのゲージが、"BINGO"に近づいている。
「了解、"ウォーバード2"。一旦、帰還しろ。他に燃料の補給が必要な機体は?」
『こちら"ウォーバード5"。そろそろ帰らないとまずそうだ』
『"7"、右に同じ』
『こちら"ウォーバード4"、ミサイルがあと2発しかない』
「"ウォーバード・リーダー"よりウォーバード全機へ。一度帰還し、体制を整えて再出撃する」
それを聞いて、コルチャックは顔をしかめた。
『しかし、ユウ。ここを離れると、空域の確保が・・・・』
「全機帰還だ。このままだと、どうせ30分も持たない。武器も残り少ないから、戦える時間も少ない」
『仕方がない。"ピットヴァイパー"へ。こちら"ウォーバード"、一旦基地へ帰還し、再発進する』
『"ピットヴァイパー"了解。幸運を』
"ウォーバーズ"の戦闘機は編隊を組み、アクロチームのような一糸乱れぬ旋回で基地のある方向へ飛び去っていった。それと入れ替わるように、基地の方角から、ミサイルと燃料を満載したUAE空軍のF-16がやってきた。
『こちら"ホバーシャーク"、パーティーはもうお開きか?』
「"ピットヴァイパー"より"ホバーシャーク"へ。悪い知らせだ。まだまだ終わりそうに無い。輸送機や貨物機の、着陸待ちの列がどんどん伸びているからな」




