表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/71

護衛-3

 10月13日 1331時 アル・ダフラ基地


 空対空ミサイルを載せたウェポン・ローダーとタンクローリーがエプロンに並び始めた。滑走路では、次々と輸送機が着陸し、指定されたエプロンへ向かっている。その遙か南方の空では時折、戦闘機の轟音や爆発音が聞こえる。滑走路の向こうで最終アプローチに入ろうと旋回していたB777-200Fに空対空ミサイルが命中し、爆発した。

「クソッ、戦闘機は何をやっているんだ!貨物機がやられたぞ!」

 地上クルーは毒づいた。消防車と救急車が滑走路を走りぬけ、貨物機の残骸へと向かう。その隣の滑走路では、C-130Tがフレアをばら撒きながら着陸した。

「1機着陸したぞ!」

「急いで滑走路から移動させろ!まだ降りてくる!」

 C-130Tが誘導路に入ると、次はエンジン1基を炎上させたまま、Il-76が着陸し、停止した。すぐさま消防車とトーイングカーが走って行き、エンジンに消火剤をぶちまけ、移動させる準備をする。

「おい!一旦、あそこのヘリをどかしてくれ!」


 CV-22BとCH-53E、UH-60Lは基地の敷地外でホバリングしながら待機していた。AH-64Dは敵の地上部隊からの攻撃を警戒している。

「なんてこった!このままだと、基地ごとやられちまう!」

 ブライアン・ニールセンはシースタリオンの窓から既に戦場と化した基地を見下ろした。黒焦げになったIl-76が滑走路からトーイングされ、A-400Mがエンジンを1基、炎上させたまま着陸する。

「ストーク!トム!けが人を収容するかもしれないから準備して!」

 キャシー・ゲイツは目の前の光景に戦慄した。戦闘機部隊はどうやら、敵が多すぎて対処しきれていないようだ。

『アル・ダフラタワーより、待機中の全ヘリへ。半径5マイル以上の距離をとって待機せよ。燃料がなくなってきた場合は"ホットピット"にて補給する。残りが少なくなってきた機は、タワーに許可を取ってから着陸、補給せよ』

「了解、タワー。こっちはまだ十分にある」


「よし、そのまま真っすぐだ。いいぞ・・・・着陸しろ・・・・」

 シモン・ツァハレムとデイヴィッド・ベングリオンはアパッチのコックピットから、右翼を炎上させながら最終アプローチに入ったIl-78を見守っている。ベングリオンは、その様子を見ながら、一人で呟いていた。

「いい子だ・・・・そのまま、ゆっくり・・・・」

 しかし、突如として右翼を覆っていた炎が機体全体に回り、Il-78は大爆発を起こし、粉々に飛び散った。

「クソッ!1機爆発!」

『こちらタワー。戦闘機が着陸する。指示があるまで輸送機は空域で待機せよ。繰り返す、戦闘機が着陸する。指示があるまで・・・・・』


 10月13日 1345時 アル・ダフラ基地


 2機のF-16Eが編隊(セクション)で着陸し、高速タキシーでエプロンまで滑走していった。更に、6機のF-16が後ろから続く。戦闘機は優先してエプロンに誘導され、そこで燃料の補給と再武装が行われた。整備員が慌ただしく走り回り、ウェポン・ローダーとタンクローリーがせわしなく、エプロンと武器庫や燃料貯蔵庫を往復する。整備兵は記録的な早さでランチャー・レールにAMRAAMやサイドワインダーを搭載し、戦闘機を再び空へを送り出した。


 F-16が離陸すると、入れ替わりでミラージュ2000が着陸する。一部の戦闘機は、機関砲による攻撃を受けており、再出撃はできない状態だった。それでも、出撃できる機体には再武装と燃料補給、パイロットの交代が行われ、再び発進していった。


 10月13日 1407時 UAE上空


『おっと・・・・そろそろ"ビンゴ"だ。"ウォーバード2"より"ウォーバード1"へ。そろそろ燃料が限界に近い』

 ヒラタは燃料計に注意を向けた。まだ警告は鳴っていないが、燃料メーターのゲージが、"BINGO"に近づいている。

「了解、"ウォーバード2"。一旦、帰還しろ。他に燃料の補給が必要な機体は?」

『こちら"ウォーバード5"。そろそろ帰らないとまずそうだ』

『"7"、右に同じ』

『こちら"ウォーバード4"、ミサイルがあと2発しかない』

「"ウォーバード・リーダー"よりウォーバード全機へ。一度帰還し、体制を整えて再出撃する」

 それを聞いて、コルチャックは顔をしかめた。

『しかし、ユウ。ここを離れると、空域の確保が・・・・』

「全機帰還だ。このままだと、どうせ30分も持たない。武器も残り少ないから、戦える時間も少ない」

『仕方がない。"ピットヴァイパー"へ。こちら"ウォーバード"、一旦基地へ帰還し、再発進する』

『"ピットヴァイパー"了解。幸運を』


 "ウォーバーズ"の戦闘機は編隊を組み、アクロチームのような一糸乱れぬ旋回で基地のある方向へ飛び去っていった。それと入れ替わるように、基地の方角から、ミサイルと燃料を満載したUAE空軍のF-16がやってきた。

『こちら"ホバーシャーク"、パーティーはもうお開きか?』

「"ピットヴァイパー"より"ホバーシャーク"へ。悪い知らせだ。まだまだ終わりそうに無い。輸送機や貨物機の、着陸待ちの列がどんどん伸びているからな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ