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148/296

148:ドバイにやって来ました

タイトルご指摘いただいて修正しました!

なんでトバイになっていたんでしょう・・・・・・

「うわぁ、やっぱりドバイって凄い! 綺麗! 世界有数の観光地なのも判る!」


 丁度大学も春休みとなり桜花は、ミナミベレディーの馬主である大南辺から招待という形で人生初の海外旅行に興奮し通しであった。農学部で実習が多い桜花ではあったが、友人達の協力もあってどうにかこうにか時間的余裕を作っての渡航ではあったが、本来のレースなど忘れそうになるほどにドバイの景観や雰囲気に呑みこまれかけていた。


「桜花ちゃん、ほら、はぐれちゃうよ」


 ドバイ国際空港に無事に到着したミナミベレディーの関係者一同は、多少は英語を話す事が出来る大南辺夫妻を除くと誰も英語を話す事が出来ない。その肝心の大南辺夫妻はレース当日の朝にしか到着しない。その為、現地通訳を依頼して団子になって移動していたのだった。


「あ、うん。でも未来ってやっぱりお嬢様だよね。うちなんかご招待されなかったらドバイなんて来れなかったよ」


 桜花と一緒に居るのは大学の同級生である能島未来だった。今回、桜花がドバイへ行く事を知った未来は、自分もどうにか時間を作り両親におねだりしてドバイへの旅行を許して貰ったのだった。


「え~~、でもさ、ドバイへ招待されるような人に言われたくないよ? それこそお嬢様じゃなかったらドバイにご招待何て無いから。普通は自費だよ自費」


「う~ん、それも何か違う気がする」


「滞在期間が長いから、ゆっくり観光できるね」


「う~~~、それで良いのかなあ」


「桜花ちゃんがいたら逆に邪魔かもよ?」


 そんな事を話しながら二人は駆け足でミナミベレディー遠征隊一行の集まっている場所へと走って行くのだった。


 そして、ミナミベレディー遠征隊とは別に、これまた自費でドバイへと降り立つ人物がいた。


「おおお~~、流石ドバイですね。この乾燥した空気も、漂って来る香りも日本とは違いますねぇ」


 今や競馬アイドルとして確固たる地位を築いた・・・・・・つもりでいる細川美佳は、自身の最大の推しであるミナミベレディー初の海外遠征、しかもドバイシーマクラシックという事で態々自費でこのドバイへとやってきていた。


「でもさあ、自費なのに何でこっちで中継しないとなのよ。こっちは休暇気分だったのに」


 美佳が準レギュラー的な位置付けである競馬番組は、美佳が休暇申請理由に堂々とドバイシーマクラシック観戦と書いたことで少ない出演料でドバイの中継を依頼して来た。準レギュラーとなっているだけに断り辛く、結局は此方で前日及び当日の実況を行う事となってしまったのだ。


「思いっきりバカンスを楽しむ予定だったのに~~~、こうなったら映像一杯撮影してお小遣いを稼ごう! 一応番組が通訳というかカメラマンも手配してくれたし」


 もっとも、そんな事を言いながらも英会話など出来るはずもない美佳だ、結局は競馬関係者の面々と一緒にいるか、誰かに引っ付いて街中に出るかぐらいしか出来る事はなかったのではないだろうか? 


 ただ、それでも気分的なものはあるので、半分仕事となった事はある意味悲劇かもしれないのだが。


 そして、そんな面々と共にこのドバイへと降り立った本来の主役であるミナミベレディーは、飛行機での移動という初の体験に思いっきり動揺していた。


「ブルルルン」(ジェットコースターも駄目なの~)


 飛行機が飛ぶ時の感覚や、着陸するときの感じ、飛んでいる時のふわふわした感じ、更には気圧の変化などに思いっきりメンタルにダメージを受けていた。


「ブフフフン」(大地が素晴らしいです。飛べない馬は空飛んじゃダメ)


 飛行機から降りた瞬間にミナミベレディーは思わず涙が流れそうだった。


 次に生まれ変わってもペガサスだけは絶対に嫌!


 何か思いっきり変な方向で決心するミナミベレディーだが、次に生まれる時にペガサスになるかどうかは神様次第であろう。


 そんなミナミベレディーと同じストールと呼ばれるコンテナのようなものに入れられていたプリンセスフラウは、長時間ミナミベレディーの横にいたのだが特に目立った影響が出ているようには見えない。どちらかと言うと至極ご機嫌な様子でベレディーの後ろを歩いている。


「う~ん、ベレディーは空輸は影響がありそうだな。今後は注意しないと駄目か」


「そうですね、馬運車での移動を苦にしないと聞いていましたから空輸も問題無いかと思っていましたよ」


 今回のミナミベレディーの空輸に際し同じ機内に1頭の馬に対し1名が同乗していた。プリンセスフラウの厩舎側では1名、それ以外の馬の厩舎でも1名の厩務員が同乗している。


 同乗していた蠣崎は、機内で親しくなったプリンセスフラウの調教助手とそんな話をしながら引綱を引く。


「ベレディー、他の馬も降りて来るからな」


「ブフフン」(飛行機嫌い)


「メイダン競馬場についたらすぐ食事にしてやるからな。ずっと水だけだったからな」


 空輸中は疝痛などを警戒して、ミナミベレディーに水しか与えていない。その為、蠣崎は空腹でのご機嫌斜めな可能性も非常に高いと思っていた。


「ほら、とりあえず氷砂糖だ」


「ブルルン」(氷砂糖だ~)


 出された氷砂糖を、何時もの様に口の中で転がしているうちにミナミベレディーの様子が良くなっていく。


「やっぱり空腹だったからっぽいな」


 厩舎を出発して14時間近く食事を貰えていないミナミベレディーだ。それこそ食事に対しての情熱が非常に高いこの馬が、空腹で調子を崩しても可笑しくないと思っていた。


「ブフフフン」(お腹が空きました)


「ブヒヒン」


 空港を移動しながらミナミベレディーが嘶くと、プリンセスフラウがその嘶きに答えるかのように返事を返した。


「この2頭も仲が良くなりましたね」


「ですねえ、後妻でしょうか?」


「ブルルルン」(5歳だよ?)


 良く判らない会話の間にも、各馬は分担して馬運車へと乗せられていく。その後、馬運車に乗せられたミナミベレディー達は更に2時間ほどかけてメイダン競馬場へと到着したのだったがお腹を空かせたミナミベレディーのご機嫌は再度悪化していたのだった。


◆◆◆


 ドバイワールドカップに出走する日本馬達がメイダン競馬場に到着し、順調に調教が行われる。

 空輸にて体調を崩した馬もおり、各厩舎の面々は最終調整に追われ次第に殺気立っていく。そんな中で初の海外遠征という事で、馬見調教師も周りの雰囲気に感化されるのは致し方が無い事なのだろう。


「どうだ? ベレディーは持ち直したか?」


「到着当初にベレディーの御機嫌が悪かったのは空腹だからですよ。今は此方で用意して貰った飼料が今一つお気に召さないみたいですが。まあ日本から輸入されているリンゴを大南辺さんが事前に確保してくれていたのは大きいですね。あと、毎日北川牧場の御嬢さんが顔を出してくれますので、ご機嫌MAXといった所ですよ」


 植物の国外や国内への持ち込みも非常に検疫が煩い。その為、大南辺は仕事繋がりで事前にドバイへと輸出されていたリンゴをミナミベレディーの為に確保していたのだった。


「北川牧場の御嬢さんが来てくれているのは助かったな。大南辺さんとしてはゲン担ぎなんだろうが」


「大南辺さんと言えば、こちらで手配して貰ったリンゴ、値段は中々に凄いらしいですね」


「こちらでは輸入品だからな。それでもベレディーのおやつでリンゴは欠かせないだろうし、こちらのリンゴがどういったものかが判らないからな。それもだが、我々も国内と違って疲れが取れないしな。国内で毎週のように移動したとしても此処まで疲れる事は無いだろうが、まあ年も年か」


「そうですねえ、あとベレディーより鈴村騎手のほうが神経質になっていますよ」


 鈴村騎手も競馬場とホテルの往復をしているだけではあるのだが、やはり言葉が通じないという事で動きが制限されていた。その為、中々気が休まらないような事を言っている。


「そう考えると、細川嬢がこっちに来てくれていたのはありがたかったですね。しかもカメラマンという通訳付きでしたから」


「騎手としては食事にも気を使わなければな。ただ、気が立っていると言えば山下調教師達の気迫が凄いな」


 日本で幾度も最優秀調教師に選ばれたことのある山下調教師。その彼が調教するシニカルムールは昨年の国内レースでの不本意な結果を受けこのドバイターフで再起を狙っていた。


「シニカルムールも一昨年の宝塚記念を勝っていますから。昨年結局GⅠも未勝利、しかも思いっきりベレディーに阻まれてです。どちらかと言うとシーマクラシックへ出走させたかったんでしょうね」


「そうだな、弥生賞も勝っているからな、ただ芝1800mがどう出るか。もっとも、何と言っても山下調教師だ、合わせて来るだろう」


 馬見調教師はそう言いながら苦笑いを返すしか無かった。

 そんな立ち話をしている馬見調教師達に、突然声が掛けられる。


「あ、馬見調教師、蠣崎調教助手、宜しければお話を聞かせてもらいたいんです~」


 その声に振り返った二人は、まさに噂をすれば影ではないがカメラマンを帯同し録音機付きのマイクを手にした細川美佳を見て苦笑を浮かべる。


「いやあ、連日大変ですね。確かあまりギャラが貰えないと言って見えた割にはしっかり取材されているとか」


 その馬見調教師の言葉に細川はこれまた苦笑を浮かべる。


「鈴村騎手情報ですか? そこはもう、手を抜いて後々良い事なんてありませんから。それに一競馬ファンとして考えたらレース前のお馬さんを身近で見られるなんて贅沢物ですよ!」


 細川は自分で見たなりの馬の様子を連日写真や映像と共に日本に送っていた。最後の追い込みを行っている厩舎の邪魔にならない様にしながらの姿勢に、どの厩舎でも細川の評判は悪くない。


「それで、うちのベレディーの評価は如何ですかな?」


「思いっきり期待していますよ~、さっき調教している所を見て来たんですが、気合十分でした」


 そう言って笑う細川に、馬見調教師達も笑顔を返すのだった。

日本のお馬さん達の活躍が待ち遠しいですね~。

ただ、競馬素人の私は、今年出走するお馬さんをぜんぜん知らなかったりしますが(ぇ

実際に競馬場に行ってお馬さんを見たりしないと覚えない?


次回はついにトッコさんのレース・・・・・・のはず?


あと、書きかけのお話の副題を見ててですね、あれ? バイト? ただ単にドバイという文字を勝手に脳内変換してバイトに見えて、そこから何故かドバイがバイトに見える呪いにかかりました! 

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― 新着の感想 ―
[良い点] トバイ(笑) お嬢様な未来ちゃんはともかく自費でドバイまで追い掛ける美佳さん愛だ…(*´▽`*) トッコさん推しの彼女ですがサクラハキレイ血統全般推している感じかな? 前にヒヨリの表彰式に…
[一言] 飛ばねぇ馬はただの馬だ。。。
[良い点] 更新感謝です
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