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ご本人登場
御徒町の樹里は都で並ぶ者のない美人で光源氏の血を引く由緒正しき家柄です。
帝の妃候補にも名を連ねている美子姫ですが、何を思ったか、貧乏で甲斐性なしの左京に惚れています。
「うう……」
地の文の直球な表現に項垂れる左京です。
「妾は姉上の人形ではありませぬ。自らの思いで生きていきます」
美子姫の強い眼差しに左大臣は溜息を吐きました。
(このような事をあの人が聞きつけたらと思うと身が縮む)
左大臣すらビビらせる弘徽殿の女御は物の怪でしょうか?
「生憎とすでに聞き及んでおりまする、左大臣」
そこへちょっと年をとったオバさんが現れました。蘭や亜梨沙よりもオバさんですから、相当なものです。
「その例えは納得ができないぞ!」
蘭と亜梨沙が地の文に抗議しました。
「姉上!」
先程まで強気一辺倒だった美子姫の顔が引きつりました。
左京はその迫力に意識が遠のきそうです。
「そうなんですか」
樹里はそれでも笑顔全開です。




