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美子姫の決意
御徒町の樹里は都で一番の美人で、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
「左大臣、ご裁定を」
美子姫が迫ります。すると左大臣は、
「その前に一つ確かめたき義がある。其方達は平特盛を知っているか?」
蘭と美子姫はビクッとしました。樹里は笑顔全開です。
「そうなんですか」
左京は相変わらずのバカぶりを発揮し、誰の事かわからないようです。
「ううう……」
率直な意見を述べた地の文に項垂れる左京です。
「誰?」
無知を恥と思わない亜梨沙が蘭に尋ねます。
「近頃、勢いを増している武家の頭目よ。出世のためなら人の命すら奪うと言われているわ」
「そうなんですか」
亜梨沙は樹里の真似をしましたが、蘭に白い目で見られました。
「その特盛が樹里殿に関わりのある者の命を狙っているとしても、其方達は左京と添いたいか?」
亜梨沙はギクッとし、蘭はハッとしました。
「妾は構いませぬ」
美子姫が言いました。




