92/1080
左京の過去
御徒町の樹里は都で一番の美人です。
そして帝のお姉さんでもあります。
その樹里に何故か惚れられている左京は左大臣に呼び止められました。
「帝をお助けした? そのような覚えはありませぬが」
左京は首を傾げて応じました。左大臣は呆れ顔で、
「其方の物忘れの酷さは病ではないか?」
「申し訳ありませぬ、全く覚えていないのです」
左京は土下座をしました。
「そうなんですか」
それでも樹里は笑顔全開です。
「樹里殿は覚えていらっしゃるのだな?」
左大臣が微笑んで尋ねます。
「よく覚えております。あの時から左京様と夫婦になると決めておりました」
樹里は笑顔全開で応じました。左京は仰天しました。
(いつからそんなに好かれていたのだろう?)
左大臣は真顔になり、
「さればこそ、平特盛には気をつけなされ」
「そうなんですか」
樹里は笑顔全開で応じました。
(俺は一体何をしたのだろう?)
まだ思い出せないバカ左京です。




