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新たな敵
御徒町の樹里は都で並ぶ者のない美人で、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
その樹里が何者かに襲われました。
侍女のはるなこと茜達が樹里を守り、事なきを得ました。
「何者ですか?」
茜が同じ忍びの美咲に尋ねました。
「あれは平特盛の手の者だ」
美咲が言うと、
「そうなんですか」
樹里は笑顔全開で応じました。
「道草公が行方知れずと知り、動き出したのでありましょう」
美咲は跪いて言いました。
「樹里様はボクが守るにゃん。だから、美咲ちゃんも茜ちゃんもボクの側室になるにゃん」
樹里の衣の中からニュッと顔を出したのは元猫又の吏津玖でした。
「何処に入っているのだ、化け猫め!」
茜が吏津玖を引きずり出しました。
「怒らないで欲しいにゃん、茜ちゃん。今度は茜ちゃんの懐に入るにゃんから」
吏津玖が言うと、
「いらんわ」
茜に蹴飛ばされました。
「そうなんですか」
樹里はそれでも笑顔全開です。




